第9話 五歳になりました
あれから早二年たち、五歳になりました。
お兄様は学園に入学する為に王都にあるお屋敷へと行ってしまったので少しだけ寂しい。
今はお兄様からの手紙と、長期休暇の帰省が楽しみだったりする。王都の話を聞けるのはこの領内の事しか知らない私には新鮮で心待にしているものでもあった。
領内と言っても五歳の私の行動範囲は狭い。五歳になった最近ようやくある程度の自由が利くようになったぐらいで......特にお兄様が屋敷内に居ないと言うのが正直大きかった。それまでは一日中暇さえあれば私にベッタリだったので家族や使用人の目を盗んで外に出る事も出来なかったのだ。今ではコッソリ屋敷を抜け出しても短時間ならバレないのが嬉しい。勿論、外と言っても敷地内にある森なので他人からみたら微妙な言い回しかもしれないけどね。
朝食後の勉強を済ませてしまえば午後からは基本的に自由時間なので、今日も屋敷をこっそり抜け出してカリトと共に森へと来ていた。侍女には図書室でゆっくりと本を読みたいからと言っておけば夕方までは放置していてくれるので嬉しい限りだ。
『今日も魔術のコントロールの練習するんだろ?』
「うん。そろそろ魔力測定があるから......魔力を極力制御して普通ぐらいの魔力量にみせないと駄目だから」
『......そのまんまだとヤバイ想像しか浮かばねーな』
「だよねー」
流石に聖女と魔王と私を足した魔力量は駄目だろうと思う。下手したらまた聖女として祭り上げられた上に自由が無くなる人生になってしまう。それだけは何としても阻止しなくては......!今世は自由に生きるんだから!
それが前の世を思い出した今世のルナの目標でもあった。
『まぁ魔力を少なく見せるならやっぱり一時的に封印しちまう事だな』
「封印かぁ......」
『要は魔力測定の時だけ魔力を少なくすれば良いんだろ?封印してしまえば測定される事はないからな。一時的なら今のお前でも可能だろうし......つーか、実際今も無意識で魔力封印してるだろ?お前』
カリトは私の肩にぶらんとぶら下がりながら意外な事実を語る。
「え、そうなの!?」
『ああ......恐らく魔力が膨大過ぎて子供のお前の体だと不具合出そうって事だと思うけどな。デカイ魔法使おうとしても、魔力足りなくてうまく発動しなかったりしたろ?』
「......確かに......」
ここしばらく徐々に使う魔術のレベルを上げていっているが昔は息をするかのように使えた魔術が今はまだ使えなかったりする。
『せめて十歳ぐらいにならないと昔みたいなレベルの魔術は無理じゃねーかな。ああ、でも体力つければある程度の魔術は使える筈だぞ』
「......そっかぁ......体力......それ一番難しいかも」
何と言っても公爵令嬢。お兄様みたいに剣を習ったり体術を習ったり出来る訳でもなく、必然的に体力増強は難しいだろう。
「......ダンスや乗馬なら何とかなりそうかな?」
『やらないよかマシじゃねーか?』
「そうだよね!お父様達にお願いしてしてみる」
社交ダンスも乗馬もバランス感覚や体力ないと絶対無理だもんね!
ルナは急いで来た道を戻る。勿論抜け出した事に気付かれないようコッソリと......。
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