ボタンを押してジャンプする猿

八億児

ボタンを押してジャンプする猿

人類の進化の果てにいる我らボタンを押してジャンプする猿


公園に持ち運ばれし電子機器 子らの指紋と砂は勲章


右左みぎひだりright leftを知る前にRとLのボタンが押せた


動かなくなったゲームのハイスコアデータの中の小4のきみ


欲に負けかつて世界の半分の闇の世界を受け取った馬鹿


失くしてたことも忘れたレトロゲー指先にだけ記憶があった


平らかな我はいつしか立体になりて世界に次元が増した


生きていてよかった大人になれたから午前0時のゲームスタート


感情のこの瞬間のリプレイを三十一文字みそひともじでセーブする歌


わけなんてなくてもいいようちにあるゲームをやりに来たふりしなよ


目を閉じるリアルオープンワールドの解像度には耐えられなくて


突風で皮膚にはりつくデジタルの砂はらいのけここもエジプト


一度だけ見た本物の永遠はモニタの中の彼女との恋


手の中のコントローラー震わせたホラーゲームの電子霊障


積みゲーは己がやる気に追い付かぬ手の遅さゆえ罪を着せられ


手付かずの無料ゲームを積み重ね賽の河原で鬼と対戦


電源が入ることなく撫でられるゲームパッドはいつかの祈り


ユーザーはいつも気まぐれ消え去ったソシャゲを惜しむ残酷な人


異世界を救ったあとの帰り道 ボスの悪口 ループの噂


さようなら彼らの旅にもう僕は必要なくて電源を切る

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ボタンを押してジャンプする猿 八億児 @hco94

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ