第1回カクヨム短歌・俳句コンテスト短歌の部

水白 建人

老いさらばえ 舌が回せず 会議なう 返す刀よ 今しばらくは

 老いさらばえてすらすら話せなくなったり、うまい言い回しができなくなり、たとえば家族に、

「もう老人ホームのお世話になったほうがいいんじゃない?」

 などと言われて家族会議になったとか、あるいは会社で役員から、

「今回の議題だが、ずばり君のことだよ。すでに察しているかもしれんが――」

 などと言われて進退を問われるはめになり、

『昔のような切れのある弁舌を振るえたらなあ』

 と思いながら必死に反論する人物のさまを描いている。


 まだまだ現役でいたいという気持ちの若さが「会議なう」に表れているように見えなくもない。


 ――以下、補足――

 ・いさらばえ

 →老いさらばえる(年を取り、みすぼらしくなること)


 ・したまわせず

 →舌が回る(すらすらしゃべること)の打ち消し表現


 ・かいなう

 →会議+なう(今なにをしているか、どこにいるか、といった意味を示すインターネットスラングのこと)で「今、会議中」


 ・かえかたな

 →返す刀(一方を攻撃したあと、すばやく他方に攻撃すること)+よ(間投助詞)


 ・いましばらくは

 →「もうしばらくは」「あと少しの間だけは」などと同義

 

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