偉大な魔女になる予定の小さな魔女はみんなから溺愛されています!

かほのひなこ

小さな魔女のはじめてのおつかい1

 ゆさゆさと揺れる感覚がする。まだ重いまぶたを頑張って開くと、綺麗な金色の瞳が私を見つめていた。

「朝ですよ。ご主人様」

「……眠いけど、がまん。立派な魔女は眠気にも負けない。……起こしてくれてありがとう、ウル」

 銀髪の頭を撫でる。ウルはしっぽをブンブンと振っていた。こういう振り方は嬉しいという気持ちらしい。

 ムクリとベッドから起き上がり、ゆっくりと地面に足をつける。立ち上がってから、ワンピースの形のパジャマを脱ぐ。お兄ちゃんが用意してくれた、茶色のズボンと白い長袖の服に着替える。

 なにか忘れ物がないかと周りを見渡し、ベッドサイドに置いてある小瓶に気づく。

「あっ、忘れるところだった」

 お兄ちゃんに言われて準備しておいて良かった。小瓶を手に取り、ウルと一緒に外に出る。

 家の後ろ側にある、薬草畑のお世話。それはわたしの日課だ。立派な魔女たるものある程度は自分で材料を用意できなくては!

「ご主人様、お水準備しますか?」

「うん。でもまだあげちゃダメ」

 今日はもしかしたらあれが取れるかもしれないから。真ん中の方に生えているルーナ草に近づいて、そっと葉っぱを見る。やっぱりある!準備してあった小瓶のふたをあけてから、葉っぱを揺らして上にあった水を小瓶に移した。

「それは何ですか」

「ルーナ草の朝露!すっごく珍しいもので、なかなか取れないってお母さんから聞いたことあったの!お兄ちゃんが今日は取れるかもって言ってたから準備してよかった」

 小瓶のふたを閉めて無くさないように、ポケットに入れておく。

「じゃあお水まくよ、ウル!」

「はい。準備万端です!」

 ウルからお水の入ったジョウロを受け取って、薬草畑にまいていく。お水をいっぱいあげた方がいいものから、あげすぎてしまうとだめになってしまうもの。そもそもお水をあげない方がいいものまでいろいろあって。立派な魔女はしっかり覚えてお世話をするものです。

 ひと通り水をあげて、雑草も抜いて、使えるようになっている薬草を収穫したら、最後にやることはひとつ。目を瞑り、手をぎゅっと組んで魔力を込めて祈る。

 健やかに、強く、育ってほしい。そして誰かを救う力に、未熟なわたしに力を貸してほしい。 わがままだけど、ひとりじゃ無理だから。

 目を開けばわたしの祈りに答えてくれるかのように、薬草たちはキラキラと輝いていました。

「何度見ても綺麗ですね」

「うん。人にも物にも心があるから。真摯に祈れば答えてくれるんだよね、お母さん」

 空を見ればいつの間にか日が昇っていた。お家からはいい匂いがしていて、きっともうすぐ朝ごはんだ。

「戻ろうウル。ご飯の前に着替えなきゃ」

「はい!」

 急いで家に戻って、自分の部屋に入る。服を脱いでクローゼットから白色のブラウスと、ピンク色のスカートを出して着る。ボタンの閉め忘れがないか、しっかり確認してから部屋を出た。

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