第46話:鞍馬天狗

「やっぱりこのパターンかぁ……」


響く金属音、場所は魔王殿から少し山奥に入った所だ、そこに俺と天狗さんが相対して剣で打ち合っている。


「いやぁ! 楽しみになって来おった!」


攻撃をいなしながら剣戟の応酬をする。


「俺は、そこまで楽しみじゃ無いけどね……」


この手のバトルジャンキーは屈服させるまで絡んで来るから凄く面倒なのだ。


ティアさんなんて本気で戦おうとするのを何度止めた事か……。


「何を言うか! 強き者と死合う! これこそ武人の本能でであり幸福だろう!!」


うわぁ……ティアさんと気が合いそう……。


「言わんとする事はわかるけど、俺はそこまで戦狂いじゃないからね?」


何度目かの打ち合いで、鍔迫り合いに持ち込む。


「そこまで強き力を得て、振るわないと? もったいないのぅ……」


剣を振るい、翼で舞いながら様々な方向からの攻撃が飛ぶ。


「俺は出来れば守るために力を使いたいからね!」


攻撃の当たる瞬間飛び上がり、剣を大楯に変え下に叩き付ける。


「ぐぬぅ! だがまだまだぁ!!」


空中じゃ足場が無いせいで踏ん張りが効かない、それに比べ相手は腐っても羽根がある、その分では自分が不利だ。


「ふはは!! 牛若ならば木々の間を飛び跳ねるぞ!」


そう言って自分はすいすいと木々の間をその羽根で自由に縫っている。


「へぇ! 義経の事も知ってるのか!」


「ふはは! 興味があるか!? 我に勝てたら教えてやろう!!」


いやらしい動きで詰めて来る天狗さん、よく見ると足の鉤爪を引っ掛けて飛行時の動きに変化をつけている。


「それじゃあ少し本気を出すかな!」


木々を蹴り、天狗さんと同じ高さまで跳び上がる、身体強化と爪を生やした魔力籠手で緩急や方向転換をつける。


「んなぁ!? そんな面妖な!?」


「おいついっ……たぁ!!」


「ぐはぁ!」


追い付き、下に殴り飛ばす。


錐もみ状になって地面へと墜落していく、気付くと山間の中少し開けた場所に出ていた。


「はぁ……はぁ……まさか……追い付かれ、叩き落されるとは……牛若でもそこまでやらんぞ」


「生憎、この後も予定があるんでね。さっさと終わらせたいんだ」


「はっ! 我の事は些事か!」


叩き落したからなのか、片翼が折れていて変な方向を向いている。


「いやいや、些事だったらまともに相手しないって」


「ほう? では、どうしてだ?」


「うーん、話が分かるし、ある程度理性もあるからね。放置も出来ないし、だからといって討伐するには惜しい」


「惜しい?」


「うん、もし良かったら俺のやりたい事を手伝って貰えないかなぁと思ってね」


「ほう、それは強き者と戦えるのか?」


「うーん……どうだろう、戦えるかもしれないし戦えないかもしれない。でも義経を歴史に残る名武将として育てたその手腕は大いに興味があるんだ」


「ふむ、それは我に子を育てろと申すのか?」


飛び込んで来る天狗さん、打ち払い打撃を加え吹き飛ばす。


「まぁ、弟子というか教師と言うか……」


今回受けた依頼でわかったのは、俺は教える立場にはほど遠いという事だ。


「そうか……お主は陰陽術は使えるのか?」


「えっと……陰陽術、というか陰陽術を用いたオリジナルな魔法とか、式神との契約くらいなら」


俺の言葉を聞くと仰向けに倒れ込んだ天狗さんは、懐から一枚のお札を取りだす。


「えっと、これは?」


「恐らく我の力の根源だろう。これがあれば調伏出来よう」


お札を差し出してくる、天狗さん。


「えっと……良いの?」


「うむ、ここまで傷一つ付けれずに負けたのは、むしろ清々しい」


今にも死にそうな安らかな顔をしてる、大丈夫なのかな?


「わかった。それなら一旦、一条さんの所に戻るか『——復元ヒール』」


傷を癒して立ち上がらせる、まずデカすぎて担げないし……。


「便利な神通力じゃのう……」


「あはは……『——魔装・ホルス』」


「なんじゃそりゃぁ!?」


「隠し玉の一つ、鳥みたいに空も飛べるんだよね」


「はぁ……本気では無いと思ったが、主は底知れぬわ……」


ため息をつきながら、飛び上がる天狗さんを追って飛び立つ。道順……もとい地形を完全に把握している天狗さんはそそくさと一条さんの元へ降りた。


「おまたせしました! 話は付きましたよ!」


「お、おぅ! 遅かったな!」


式神の狼と共に待っていた一条さん、少し震えてるけど寒かったのかな?


「それで一条さん、いきなりですみませんが、強い相手の式神契約ってどうやるんですか?」


「ん? 式神契約は皆同じだ、調伏になると少し変わるがな……」


「そうなんですか? じゃあ調伏の方法は?」


「んむ、相手を屈服させる事や、試練に打ち勝つ事は知ってるな?」


「はい、それは四条さんから聞きました」


「では唱えるまじない言葉は『ほにゃららの名において、お主を今ここに調伏せんとする。天地・八卦・五行・龍脈・その力の全てをもって魂を縛り、汝の全てを我が力としたまえ!』だね、ほにゃららは自分の名前を入れてね」


「契約とは少し違うんですね」


「あぁ、普通の契約って基本的に好意的な相手の場合が多いからね。でも調伏は相手が好意的な場合じゃないからね」


そう言って遠い目をする一条さん、そういえばあの大百足って契約なのかな? 調伏なのかな?


「まぁ、やってみると良いよ、上凪殿なら相手も無理矢理でも断らないだろうさ」


「えぇ、無理矢理はちょっと……」


「あはは、上凪殿の強さなら調伏される側も、納得という事だ」


「そうだな、主ならば断わるような輩はおらんよ」


顎を擦りながらうんうんと頷く天狗さん。


「わかりました、『上凪 優希の名において、お主を今ここに調伏せんとする。天地・八卦・五行・龍脈・その力の全てをもって魂を縛り、汝の全てを我が力としたまえ!』」


天狗さんが光に包まれた。



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作者です。

遅くなり申したぁ!!


【ファンタジー長編コンテスト】中間選考突破してました!!

読者の皆様ありがとうございます!!


236万9000PV超えました!!ありがとうございます!

毎日、そしてここまで読んでいただける方、ありがとうございます!

読んでいただける方には感謝しかありませんが!!


♡も4万5700超えました!!

毎日ありがとうございます!!

☆も1331になりました、1330超えました!ありがとうございます!

感想も新規ブクマもありがとうございます!!

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