第14話:水城 耀の長い1日②【改稿版】
それから、あれよあれよ言う間に様々な手続きが終わり、飛行機に乗せられ私は空の上にいた。
「うぅ……優希に電話できなかった……」
現在は明かりが落とされたプライベートジェットのシートで、ブランケットに包まりながらスマホを抱いている。
機内のWi-Fiに繋ぎメッセージアプリの一番上に居る優希へメッセージを打つ。
『色々あって両親の元へ行くことになっちゃった、お土産何がいい?』
と少しおどけてメッセージを打つと即既読が着いた。
『いつも買ってくる〝あれ〟がいい』
と返してくる〝あれ〟とはヌガーの事だ、砂糖と飴、それとナッツやドライフルーツが使って作られたハイ〇ュウみたいなものだ、子供のときから甘いものが好きな優希らしい。
『了解、味は?』
『オススメで』
『じゃあいつもの奴でいい?』
『最高、待ってるぞ』
『待ってるのはお菓子だけ?』
『そんな訳無いだろ。朝、凄く心配したんだぞ……』
と不意打ちな言葉に顔が真っ赤になる。
つい返信の手が止まると優希が心配したのか『おーいどしたー?』と来た。
(やばい……凄く嬉しい……)
私は少しは恥ずかしくなりながら返信を返す。
『大丈夫、そろそろ寝るね』
『おう、風邪引いたりするなよ』
『大丈夫、日本とそんなに温度は変わらないし、優希みたいにお腹出して寝たりしないから。それより、優希も風邪引かないようにね』
『あぁ、ありがとうな。おやすみ』
「おやすみ……」
呟きながら返事を書く、やり取りが終わりスマホをサイドテーブルに置く。
後数時間はあるだろう、日本から出るまで不安な気持ちはすっかり消えていた。
そうして私は、ブランケットを深く被ると緩く眠りに落ちていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「水城様……水城様……」
「あ、あれ? ここは……」
揺さぶられ、まどろみから開放されると布良さんが覗き込んでいた。
「おはようございます。そろそろ着陸に入りますのでシートベルトをお願いします」
「あ、おはようございます。わかりました」
「おはようございます、すっかり眠れたようで何よりです」
「あ、はい……」
「ずっと不安そうでしたので、心配だったんです」
申し訳なさそうに言う鳳さん。
「すみません、いきなりこんな事になってしまい……」
「あ、大丈夫です。でもどうして?」
「詳しい事は後で話しますが、水城さんが厄介事に巻き込まれそうでしたので。先に手を打たせていただきました」
「厄介事ですか……?」
「はい……。おっと……そろそろ着陸ですね」
飛行機が着陸態勢に入り高度を下げていく、それからすぐに着陸すると私は両親の居るバルセロナに降り立っていた。
「鳳さん、先程言っていたことは……」
「ご両親も交えてご説明させていただきますね、それと私の事は〝
「はい、それなら私は
「はい、よろしくお願いいたしますね」
そこからやって来た車で市内へ進むとバルセロナで有名なホテルへ到着した。
用意されていたイブニングドレスへ着替えレストランへ通されると、半年ぶりに会う両親が居た。
驚く両親を傍らに里菜さんは「先にお食事をいただきましょうと」私達へ促した、それから食べ慣れないコース料理を食べ終え私達はホテルの1室へ通された。
「先ほどご挨拶させていただきましたが、再度自己紹介をさせていただきます。私は内閣府のダンジョン庁、ダンジョン対策委員会、所属探索者の鳳里菜と申します、こちらは秘書の布良
里菜さんの説明に一礼をする布良さん、名前……美魚って言うんだ。
「ダンジョン庁……政府の方だったんですね。私は水城
「ワタシハ、水城エリナと申します」
四人がお互い頭を下げている。
「それでこの度お二方は知っておいて欲しい事があります」
「知って欲しい」
「コトデスカ?」
「はい。私達、日本政府は水城さんを探索者にしたいと思っております、探索者やダンジョンについては?」
「はい、私達も昨日ですがこの国のニュースと日本のニュースで知りました」
「デモ、何で耀ちゃんが?」
眉を顰める父さんと、コテンと首を傾げる母さん。
「実は、耀さんが世界初の〝ジョブ〟である【魔法使い】というのが判明いたしました。しかも現状、世界で唯一耀さんのみ発現しているのです」
その言葉に複雑な顔を見せる父さんと母さん、世界で唯一と言われても正直ピンと来ていないのだろう、私もそうだし。
「そして、ここからが本題なのですが。こういった状況になってしまい、耀さんを保護している状態なのです」
「え?」
「保護……何故なのでしょうか?」
保護って……どうして……。
すると里菜さんは悲痛な顔をして口を開いた。
「端的に申しますと。アメリカ・ロシア・中国といった主要大国から、隣国から中東の小国まで複数の国の方が水城さんの身柄を要求しております」
「「「え?」」」
正直、訳が分からない、こんな未知の力でしかも魔法なんて使った事のない私がどうして世界中の国から……。
私達は訳がわからないのと驚きが混じった表情になった。
「世界で唯一という最も〝希少なジョブ〟。しかも現在発見されてる中では、未知ではあるが故に、万能……いえ、〝無限〟の可能性がある【魔法】というものが非常に注目を集めております」
「で、ですがそれが探索者になる事と、どう関係あるんですか?」
苦々しく言う里菜さんにお父さんが疑問を投げかける、確かに探索者である必要は無いんじゃないかと思う。
「そうですね、一部の過激派は耀さんが協力しないのであれば幽閉してでも、その能力を確保したいと思ってる方々が世界中に居ます。ですのでその方々を黙らせるために耀さんを探索者にして、その能力をダンジョン内とはいえ公表することでその溜飲を下げようと思っております」
「デ、デモ……耀ちゃんの身の安全は!?」
「無論保障します、それにダンジョン内外に関わらず行動の制限等は無くす事も出来ます、私達やその他の人の監視は付きますが……というか私が直々に付いて彼女をお守りします」
守ってくれるとは言っているが、里菜さんは凄くばつが悪そうな顔をする。
その顔を見た父さんが立ち上がる。
「鳳さん、少し家族内で話してもいいだろうか?」
「ええ。本日は時間も遅いのでこの続きは明日にしましょう。それと、こちらの部屋は水城さん達でご利用して下さい、それとこちらを」
里菜さんは布良さんより小型バッテリーの様な機械を受け取ると、私に渡してきた。
「そちらはポータブルWi-Fiです、連絡をしたい人がいるんでしょう?」とニヤッとされた。
「それでは失礼します、おやすみなさいませ皆様」
「失礼いたします皆様」
と言い残して里菜さんと布良さんは部屋を出る。
時計を見ると、既に現地時間で0時を回っていた。
父さんと母さんは並んでソファーに座る、対面に空いたソファーに私も座る。
「そうだな、先ずは耀の気持ちを聞いておこうか」
「トハ言っても、耀ちゃんの気持ちは大体わかってますけどね」
「まぁ、彼の事だしアイツの息子だからな」
「ソレデ、耀ちゃんはちゃんと話したの?」
と、二人共、私の目を見て言って来る。
「私は……」
昨日、検査会場で優希が言っていた『置いて行ったりしないって』という言葉。
でも、優希は絶対に探索者になると確信出来る、困ってたら誰でも助けちゃうそんな彼の横に居たい……。
「ヒカリちゃん、まず気持ちを固めるなら、私達より相談する相手が居るんじゃなくて?」
母は見透かした様な顔で言って来る。
「私……話してくる!」
そう言って私はバルコニーへ出る。
(まだ優希は出発してないはず……)
スマホを待ち受けからトーク履歴を呼び出す、その一番上に居る彼へと……。
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