第44話:地下書庫へ
「ご主人様、なんですかこれ、超便利じゃないですか……」
本当に驚いてるのか、シアは点けたり消したりしている。
「あはは、これは俺の世界で普及してるアイテムで、魔力も魔石もいらない懐中電灯ってやつだよ」
「おにーさん、私も私もっ」
クロコが気になったのかせがんでくる、まだ10歳ちょいだもんなそりゃ初めてこんなの見たら気になるよな。
「いいよ、はいっ。でも自分に向けて点けないようにな」
「はいっ、わかりました」
そして楽しそうにクロコは点けたり消したりしていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
さてさて、それから数分で地下牢まで来た。
「よしっ、ここから地下書庫まで行こう」
石レンガの壁から器用にレンガを抜いて行く。
「流石……器用だねぇ……」
「僕はこれでも長生きだからね、色んな技術を身に着けたよっと……はい、空いたよ」
「ありがとう、シアはどうする?」
「勿論行くよ、一人にされても困るしね」
「わかった、じゃあ行こう」
シアの作ってくれた抜け穴を通り地下書庫に向かう。
「そう言えば、ここって地下書庫以外に何があるの?」
「そうだね、僕が知ってる限りは書庫と処刑部屋だね」
「処刑部屋って……」
なんか恐ろしい部屋だな……。
「あー、うん。政治的に邪魔な人物や、身分的に投獄したは良いけど処刑できなかった相手を長期間幽閉して衰弱死させる場所だよ」
「それって……かなりひどいな……」
「仕方ないよ、政治犯だったり、王族の犯罪者は幽閉という名目を与えないと下手したら暴動が起きるもん」
「うへぇ……めんどっ!」
「ご主人様みたいな、絶対の力があればねぇ~」
やれやれと溜息をつくシア。俺だってそこまで狂暴じゃないぞ?
「そうでなくても、僕みたいな暗殺者を真っ向から潰したり、戦場に大穴を開ける存在を絶対の強者って言うんだよ?」
呆れたようにジト目で言う。というか戦場の事なんで知ってるのさ?。
「いやいや、そんな顔されても……市政で話題になってたよ魔王様が人間領のとの争いを一時的にとはいえ鎮める為に、戦場に大穴開けたって」
「俺、何も言って無いんだけど!?」
「えー? 今の絶対。何で知ってるんだよみたいなこと言いたげだったじゃん」
「いや、まぁそうなんだけど……」
「だてに長生きを舐めないでね♪」
可愛げなポーズを取りながら言うシア。
「おっ、ご主人様はこういったポーズが好きと……」
「好きか、嫌いかで言えば好きだ」
「あはっ、ありがと~」
そう言って再度ポーズを取るシアだった。
「おにーさん? わたしもやるべき?」
「いや、クロコは変な事覚えなくて良いぞ」
「わかった」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「さて、ここが地下書庫の入り口だよ。今鍵を開けるから待ってて」
そう言ってシアが細い棒二本で鍵穴を弄る、しばらくガチャガチャやっていると鍵の開いた音がした。
「おっ、開いた開いた」
――――ギギギギギギギー……
鈍い音を響かせて扉が開き独特な紙の香りが鼻を突く。
「それで、何を探しに来たか知らないんだけど……何をお探しで?」
「えっと、この国の歴史書だね。 それと聖剣の伝説や伝承を扱った文献や本が欲しいね」
「聖剣? 何でまた?」
「シアは【聖剣の聖女】って知ってる?」
「そりゃ知ってるさ、私が子供の頃から聞かされたおとぎ話じゃん」
「私もっ、知ってますっ」
「それでね、その【聖剣の聖女】ってアミリアなんだ」
「は?」「えっ!?」
シアは何いってるのこの人みたいな顔で、クロコは驚いた顔をしている。
「実はね――」
過去に行って、邪神の力を封印した事。その時に語られる魔王を俺がやった事。そして事の顛末を伝える。
「え、じゃあご主人様が連れて来たロップルって、本当に過去の人なの!?」
「うん、そうだよ」
「マジか……」
「(コクコクコク)!!」
クロコはともかくシアは信じて無かったのかぁ……。
「まぁ、そういう訳で聖剣の所在を探してるんだ」
「邪神ねぇ……僕はそんなおとぎ話が、現実で起きてたなんて知らなかったよ」
「(コクコクコク)!!」
「それじゃあ僕も頑張って探さないとね」
「がんばるっ!」
それから片っ端から聖剣について書いてある資料を見つけ
「これで、最後だね」
「ありがとう二人共」
二人の頭を撫でるとシアは恥ずかしそうに、クロコは嬉しそうにする。
と、その時扉がガチャガチャと鳴り開く。
「あれ? 鍵が開いてる? でも中には誰も居ない……閉め忘れか?」
鎧を着た兵士がランプ片手に入って来る、巡回の様だ。
「全く……後でまた来ないと……。ここ、怖いんだよなぁ……」
扉が閉じられ帰って行った。
「っつ、ぷはぁ……」
「いやーびっくりしたぁ……」
「助かったよクロコ」
兵士が入って来た瞬間、クロコによって影に引きずり込まれ回避できたのだ。
「凄いな、クロコの力……」
「だね、やっぱり連れてきて正解だったね」
「あぁ、そうだね」
クロコの頭を撫でたのち、地下書庫を後にするのだった。
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