第31話:手は出さないよ!?
朝食を食べ終え兵士の皆に、
「優希様、そこ右です」
御者台にニコニコしながら座るリリアーナ、なるべく顔が見えない様に日傘を差している。
「なぁ、リリアーナ? この道王城への道じゃないよな?」
「えぇ、そうですわ。それに王城に行くにしても、一度正装に着替えていただかないと。後、彼女達にも会っていただきませんと」
「彼女達?」
思い当たる節が無く首を傾げていると貴族街と呼ばれる大きな屋敷が存在するエリアに入っている。
「あ、優希様。あそこです」
指差した先はとてつもない大きさのお屋敷があった。
「リリアーナさん、まさかここって……」
「はい! 私たちのこちらの世界での住まいですわ」
マジか……いつの間に……。
「元々こちらのお屋敷は
「でも、その割には綺麗だよね?」
放置されていたという割にはお屋敷自体に劣化があまり見られない。年月での風化という面はあるものの、つい最近まで使われていた様に見える。
「はい♪ つい最近目覚めてからこちらのお屋敷を綺麗にして使える様にしようと思っておりましたので♪」
楽しそうに語るリリアーナ。
「そっか、でもこの世界に帰ってくることはあまり無さそうだけど大丈夫?」
「大丈夫です、2~3カ月に一度帰ってくれば良いので。それに領地持ちの大貴族なんてこの王都で過ごすのは年にひと月という方もいらっしゃいますから」
確かリーベルンシュタインにも、そんな貴族居た様な……。
「それってどうなんだろう……無駄じゃない?」
「いえ、確かに一見無駄に見えますでしょうが、貴族の家に奉公に出る事や大きな貴族の家で働くことは雇用を生み出す形になります。それに仕事の出来が良ければお城での奉公も出来ますし結婚も容易になりますので」
「つまり、婚活会場も含んでるのか……」
「コンカツ? というのはわかりませんが、その言葉が出会いの場を意味するのであれば大いにいありますね。ただ制約も多いですが……」
そして貴族特有の面倒事を聞かされる、まぁそうだよね。
(将来俺も関わるんだろうなぁ……めんどくさ!)
そうこうしてる内に門扉の前に到着すると兵士二人が出て来た。
「すまないが君達、ここに停められるとこの後来る方が困ってしまう。それに本日は誰も通すなと言われている。すまないが後日来ては貰えないだろうか?」
貴族の門兵に似つかわしくない、非常に丁寧な物言いにリリアーナはくすくすと笑いだす、いやいや顔隠してたらわかんないでしょ……。
「リリアーナ……いじわるは、やめてあげなよ」
「ふふっそうですわね、すみませんお二人共。仕事の出来があまりに良いので少し
「「!!!!」」
日傘を上げてリリアーナが顔を見せると門兵が目玉が飛び出しそうなくらいに驚いた顔をした。
「すみません、入ってもよろしくて?」
「は、はいぃ! 大丈夫です!」
「お待ちしておりました!」
走って行き門扉を空けると、中には美しい庭園が広がっていた。
「凄い……」
「きれー」
「これは……素晴らしい腕の職人さんが居らっしゃいますね……」
いつの間にか荷台から顔を出していたセレーネ、アミリア、ロップルさんが感嘆の声を上げる。
「えぇ、花も、庭師も一流の方々がやっておりますわ。まぁ庭園の奥は新人の庭師の教育の場ですが……」
そう言うとリリアーナは庭園を見て懐かしそうな顔をした。
「それで、リリアーナ。どうしてここに?」
王城に一直線だと思っていた俺は、リリアーナへ問いかける。
「それはですね……恐らくもうすぐ……あ、いらっしゃいましたわ」
アミリアが指差すと屋敷の入り口には十数人のメイドさん達が並んでいた。
「リリアーナ様! 旦那様! お帰りなさいませ!」
「「「「「おかえりなさいませ!!」」」」」
「えっと……その声ミミルか?」
別れた時とはだいぶ印象の違うが、鈴を転がすような声わかった。だが紅梅色の髪色だったっけ?
ミミルの髪を見ていたら気付いたのか少し撫でつけながら喋りだした。
「あぁ、この髪色ですね、これは私が魔力を吸収する性質の種族なので。魔力のとても多い地域のだと髪色がこの様な色になるんです、逆に魔力の少ない地域や魔法を使うと色が落ちたりします。前回会った際は歩く為に常時身体強化を使っていましたので……」
「そうだったんだ、それにしても綺麗に変わってて驚いたよ」
そういうと顔を赤らめ恥ずかしそうにするミミル。
「ねぇユウキ、天然で
呆れた様に言って来るアミリア。
「しないよ!? ちょっと待って!」
「え? しないんですか?」
「しないんですか? ご主人様?」
「するんですの?」
「なら私に手を出してくださいよ!!」
なんで皆そんな顔で見て来るの!? あと、後ろのメイドの子達、少数だけど溜息をつくの止めて!!
「いやね、流石に子供は……居るには居るけど。駄目だよ!?」
「はぁ……この時代に帰って来たし、後で耀さんに報告しとくわね」
「優希様! 手を出すなら私からですよ!」
「私は最後でも……」
「わたしわたし!! 聖騎士様も!!」
帰還した王都で早々に疲れるのだった……。
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作者です!
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