第55話:住民の避難と追走の準備中

里の住民たちが避難中、俺とセレーネは追走の準備をしていた。


「さて……セレーネこれを」


空間収納アイテムボックスから取り出した腕輪型の空間収納の魔道具を取り出す。


「これは?」


「空間収納の魔道具、これがあれば俺みたいにいろんなものを出し入れできるよウになるよ」


「ふおおおおおお!! 凄いです!!」


セレーネの腕に魔道具を通しながら、使い方を教える。


「生きてる物は入れられないからね、人間とか生きてる魚とかは入れられないんだけど持ってる物とかはしまえるから武器を入れておくのに丁度良いかな」


空間収納から抜き身の剣を取り出してそのまま振る。


「おー凄いです!!」


「それじゃあやってみよう、まずはあそこの石で良いか。とりあえずあの石が水の中に沈む感じでイメージしてみて」


「はい!」


両手を前に突き出したセレーネが「沈む沈む沈む……」と連呼する。


すると次第に沈んでいく、上手だな……。


「やった! 出来ました!!」


セレーネに大きな尻尾があったらぶんぶんと音を立てそうなくらい振っている、可愛いな……。


「それじゃあ出してみよう、この円の中に落とす感じで良いよ」


円を書いて落とす場所を指定すると「むむむむむ……」と唸り始める。


すると大体2メートル位の位置からボトンと落ちて来る。


「出来ました!!」


寄って来るセレーネの頭を撫でると、少し恥ずかしそうにしている。


「それじゃあ少しの間あの石を出し入れする練習をしよう、できればスムーズにしたいから」


「わかりました!!」


「それじゃあ俺は皆の避難状況を見てくるね」


「わかりました! 行ってらっしゃいませ!」



◇◆◇◆◇◆◇◆

里の中を見て回りながら保存食などの運搬を手伝いながら回っていると族長さんと出会った。


「あ、族長さん。渡した設備どうでした?」


「はい、カミナギ様のお陰で祠の中はとても明るいです」


「そうですか、それは良かった。そうだ、あの祠の中って風の通りはどうなんですか?」


「風の通りですか? そうですね、考えた事も無かったですな」


「それだと大人数が入ると酸欠になっちゃいそうですね……」


「酸欠ですか?」


「はい、風の通りが無いとこで長く過ごすと気分が悪くなったり最悪死んでしまうものですね」


「そ、それは大変な事なのでは!?」


「そうですね、少し様子を見に行きましょうか……」


練習中のセレーネに声を掛けてから祠へ向かう、中に入り確認すると洞窟の奥に風穴が出来ていて天井には穴が開いていた。


「どうでしたか?」


「そうですね、風が出入りしているので大丈夫ですね、もし体調不良の方が居たら外に出て下さい、まぁ念の為、出来れば外で過ごしていた方が良さそうですね」


「わかりました、それでは基本は外で過ごしております、それでもし敵が来たら中に逃げ込みます」


「そうですね、それでお願いします。それとこれを……」


空間収納アイテムボックスから防御魔法がかかったテントと防御魔法の魔道具を取り出す。


「魔力を込めて貰えばこれで少しの間は攻撃が防げます、大体半日程度ですが……もし緊急事態が起きたらこれを割って下さい」


ユフィが作った防犯ベルをモチーフにした壊すと俺に警告が飛んでくる魔道具だ、無論ポートの代わりになるので転移魔法で行ける。すずめちゃんや優羽の為に幾つか作ってくれた代物だ。


「わかりました、何から何まですみませんのぅ……」


「いえいえ、セレーネの故郷ですから、頑張りますよ」


「セレーネは本当に良い人を見つけられた様じゃのぅ」



◇◆◇◆◇◆◇◆

それから戻ると石を自由に出し入れしてるセレーネに、大太刀を手元に出す練習をさせる。慣れるまで時間はかからないだろうし今の内に炊き出しでも作っちゃうか……。


「ご飯は足りないからパンで我慢してもらうとして……ならシチューで良いかな?」


セーレさん達女性陣に牛かヤギのミルクが欲しいというと、里で飼っている牛から牛乳をとって来てくれた。


「それじゃあ野菜は一口大でお願いします」


「はいはい~」「任せてよ!」「一体何を作るんだろうね?」「王都の料理とかかな?」


女性陣が不思議そうにしつつ野菜を切ってくれている、170人分くらいか、うーん……ルーの量足りるかな?。


「まぁ、足りない分は小麦粉とか削ったチーズを入れれば良いか」


5キロ分のルーを取り出しながら考える。


「ユウキさん、その白いチーズみたいなものは?」


これを野菜や肉と一緒に煮るんです。すると美味しいスープになるんですよ。


「そうなんですね、じゃあ肉も切って煮込んじゃいましょう」


そう言ってセーレさんは男性達にお肉を持ってきてもらう様に指示を出しに行った。


◇◆◇◆◇◆◇◆

そうして作られたシチューは皆が驚きつつも満足してくれた。


「さて、少し遅くなったけど出発しようか」


外套を着て、子供達の分のシチュー鍋をしまいながらセレーネに声を掛ける。


「はい! それじゃあお父さん、お母さん行ってきます!」


「いってらっしゃいセレーネ」


「皆を任せたよセレーネ」


「はい!」


「カミナギ様、娘をよろしくお願いします!」


「任せて下さい」


そうして里の皆に送られて襲撃犯が向かった方向に走り出した。


「セレーネ、こっちに」


「はいっ、ととっ」


走りながらセレーネを抱え丘をひと跳びで登りきる。すると樹の陰から男達が出て来た。


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