第47話:虹の子
「「セレーネ!」」
「お父さん! お母さん!!」
気絶していたお爺さんたちを起こして治療していると、セレーネのご両親がやって来た。
「良かった……知らせが届いては居たとはいえ心配したんだよ!」
「そうだぞ!、どれぐらい心配したのかわかってるのか!?」
そういっておんおんと大声で泣き始めてしまった。
「あのーお父さん、お母さん? あぁ、これは駄目だ……ご主人様助けてぇ~」
抱き付かれて困惑しているセレーネが、こちらへ助けを求める。
「まぁまぁ、もう少しそのままでいてあげなよ」
「でも……」
「ご両親も心配してただろうし、もう少しだけね」
「うぅ……そうですね。後少しだけ……」
そう言いながらセレーネは両親を抱きしめる手に力を込めていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「という事でこの方は私のご主人様、私を助けて買い戻してくれた人だよ」
「ごしゅっ!? 奴隷なのか!?」
「うーん私は奴隷が良いんだけど、ご主人様が駄目って言うんだよね……」
「そうなのね……良かったわ……」
そう言ってご両親がこちらへ向き直る。
「あの……」
「あぁ、俺……私の名前は上凪 優希です、一応異世界から召喚されて勇者だったり聖騎士だったりやってます」
「カミナギ様ですね……お金は必ず返します、娘をどうか解放していただきたいのです……」
「お母さん!?」
「私達の里は今現在人間と一部の心無い魔族に狙われていて。移住を考えているのです」
セレーネのお父さんが悔しそうに呟く。
「お父さん……でも私、白金貨50枚以上だよ?」
「ごじゅっ!?」
「ですよねご主人様?」
「どうだったっけ? 憶えてない……」
「そうですね、【虹の子】であるセレーネさんならその位の金額が付けられていてもおかしくはないですね……」
リリアーナが顎に手を当てながら答える。すると周りの住人たちがざわざわとし始める。
「そんな!」
「セレーネが【虹の子】なんて!?」
「あれだけ家に引きこもって、誰とも接点を持とうとしなかった娘が!?」
「出かけると言えば同年代の男の子とじゃなく一人で、しかも森に行くだけのセレーネが!?」
ちゃっかりディスられているんだけど……。
「お父さん!? お母さん!?」
「皆様にお聞きしたいのですが、
リリアーナが大人達へ問いかけると一様に黙ってしまう。
「【虹の子】は宝石獣を導く者、つまり長になる存在なんだ」
「えぇ!?」「やはりですか……」
セレーネは目を見開いて驚き、リリアーナは予見できていたかの様に答えた。
「でも私、里の運営とかわからないよ!?」
「それは、我々が協力したりおいおい覚えていってもらうんだが……」
「何より長になるにはねぇ……」
「皆を守れるほどの実力が無ければならないからのう……」
「それに婚約者も用意せねば……」
「婚約者!? 私はそんなのいらないよ!?」
「何、すぐでなくとも良い、長になる頃に居れば良いからの」
「里長、一つ相談が……姫様も来られているこの機会ですし、セレーネの婚約者は早めに決めるのが良いかと。その方が里の不安の解消にもなりますし」
「そうじゃのう……すまないが姫様方、里長の伴侶が決まるこの数日、ここに留まって頂いてもよろしいでしょうか?」
「はい、
「俺も大丈夫ですね」
「ありがとうございます、それではカミナギ様、姫様よろしくお願いします」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「という訳で、カミナギ様出番ですよ!」
「え?」
夜、まさかのリリアーナと同じ部屋に通され寝る準備をしていると、リリアーナが両手の拳を握って言う。
「だから、カミナギ様がセレーネさんの婚約者に立候補して。颯爽と勝ち上がるのです!」
「えぇ……」
「まさか、セレーネの気持ちに気付いて無いとか言うんですか?」
ずいっと顔を近づけてこちらを見つめるリリアーナ、顔近い……。
「どうなんですか?」
どうといわれてもなぁ……流石にスルーも限界だろうしなぁ……。
「流石に気付いてるよ」
「では、何故?」
「そりゃ出来れば普通に生活してほしいからだよ」
「無理ですわね」
「だよなぁ……」
「『そのままにしておけば』なんて時間が解決する様な事はありません。既に王族と知り合いで王城に勤める。たとえそれが無くても【虹の子】なんて存在、面倒事を起こす人達が放っておく訳ないじゃないですか」
「やっぱり?」
「えぇ、里を動かすにも時間はかかります。セレーネさんだけじゃ手が足りません、ですのでカミナギ様が動かないとどうにもなりませんから」
「うぐぐ……」
「それに、彼女が他の男に汚されて嫌な気分にならないのですか?」
「汚されるって……他に言い方無いの!?」
「事実じゃないですか、正直私はどこぞの知らない男に手籠めにされるより。カミナギ様に娶って貰う方が万倍幸せだと思います」
「そう言って貰えるなら、少し頑張ってみるか」
「えぇ、それにカミナギ様なら起こってる問題、全部どうにかできますよね?」
「んな、無茶な……やれることはやるけどさ……」
そう言って、立ち上がり背伸びをする。
「いってらっしゃいませ」
「え?」
「行くのですよね? セレーネさんの元に」
「ばれてたか……」
「行かなきゃ怒るとこでしたよ」
そう言ってリリアーナは俺を、くすくす笑いながら部屋から追い出すのであった。
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作者です!
低気圧にメタメタにされてます……。
148万4000PV超えました!!ありがとうございます!
毎日、そしてここまで読んでいただける方、ありがとうございます!
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