第6話:神子と使者
転移で三人をマリアンの空間に飛ばしてから正面に立つ、三人の勇者は狼狽しながらもこちらを見ている。
「一体俺達になにをした!」
「ここはどこですか?」
「転移……どうして貴方みたいな雑魚が!?」
「さて、どうしてでしょう?」
おちょくる様にはぐらかすと一人の勇者が突然斬りかかって来た。
「この! 死ねぇ!!」
「——ふっ」
振り下ろされた剣を弾き飛ばし、蹴り飛ばす、肋骨が砕けた感触が足に伝わる。
「これだからタケルは駄目なんだよ」
暗殺者の様な、身の軽さで近寄って来た勇者の攻撃を受け止め、肘打ちで顎を砕く。
「死ね」
身の丈程の石の槍に、即死の呪いを刻んだ攻撃が飛んでくる。
「——はっ! とぅ! そりゃ!」
鷲司さん直伝の格闘術で片っ端から砕いて落とす。
「クソッ、死ね!」
そこに風魔法を組み合わせた竜巻を発生させ俺を取り込む。
『小鳥遊流無手蹴術改——
魔力を込めた震脚で空間ごと揺らし竜巻を裂く、そのまま当て身で吹き飛ばす。
「ぐがぁ!」
ゴロゴロと十数メートル転がり、ピクピクと痙攣し始めた。
「弱いなぁ……」
これを鍛えるのか……攻撃も軽いし魔法も力任せ過ぎる、骨が折れそうだ。
「さて、生きてるか~?」
三人にそれぞれ回復魔法をかけた後、水をぶっかける。
――――ジャーー。
「ゴゴゴゴゴ」
「ガボガボガボ」
「………………ゴボボ」
「「「殺す気(です)か!!」」」
「やっと起きたよ」
◇◆◇◆◇◆◇◆
起きてから三人を座らせ俺は椅子に座る。
「それで、雑魚と呼んだ俺に負けた君達、何か言う事は?」
「くっ……」
「むぅ……」
「フンッ……」
むすっとして三人とも黙ったままだ。
「はぁ……それじゃあ自己紹介をしよう。俺は上凪 優希、お前達は?」
「……杉山 猛」
黒髪、碧眼の男が答える。
「……デヴィッド・サンチェス」
金髪の少年の様な容姿の男の子が答える。
「カレブ・フィッシェルド」
銀髪でさっきまで眼鏡をかけていた長身の男が答える。
「ともかく、三人共。教皇からなんて聞いてここに来たの?」
「魔王の手先が居ると」
「国家転覆を狙うテロリストが居ると」
「私も同じだな。ただできれば生かして連れてこいとも言われた」
「はぁ……」
やっぱり私利私欲のために動かしたのか……あの教皇。
「こりゃ説明しないと駄目か……」
それから三人に召喚の目的と、果たさないと帰れない旨を伝えると唖然としていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「という訳でお前達の使命は教皇の言いなりじゃない、邪神を倒す事だ」
「だったら余裕じゃねーか!」
「そうだね、僕達にかかれば勝ったも当然だ!」
「さっさと終らせて帰るか……」
意気揚々という三人、鑑定で見たけどこのままじゃ無理だ。
「今のお前達じゃ無理でしょ……」
「はぁ?」
「は?」
「フンッ」
「だって俺、手加減してるんだぞ?」
「「「え?」」」
「だから手加減してその程度なんだって」
「そんな……俺の世界じゃ最強なんだぞ……」
「僕に勝てない敵なんて居ないのに……」
「世界最高峰の魔術師だぞ私は!」
「うん、でも束なって俺にやられたじゃん」
正直、年末の里菜といい勝負が出来るかどうかの強さだ。
「とりあえず元の世界での事は忘れてくれ、この世界じゃ最強じゃないんだから」
「クソッ!」
「フンッ」
「……チッ」
(コ・イ・ツ・ら! 反省してないんだけど!)
「はぁ……早く帰りたい……」
◇◆◇◆◇◆◇◆
それから三人の勇者と共に戻るとマリアン様が隣の部屋で説教をし始めた。
「さて……それじゃあアミリアちゃん、どうするか決めた?」
なるべく優しく聞くとアミリアちゃんが顔を上げる。
「決めました……私は強くなりたい、レナを守れるように」
レナちゃんを抱き寄せ、俺の目を見て宣言する。
「わかった、じゃあ少し待っててね」
アミリアちゃんの顔を撫でるとお説教が続く部屋へ入る。
「マリアン、とりあえずアミリアちゃんは覚悟を決めたよ」
そう言うと一つ大きなため息をついて勇者三人を転送する。
「ありがとうございます優希さん、あの三人はもう少しお説教するので説教部屋に飛ばしました」
「正直あの三人の鼻っ面を叩き折らなきゃダメっぽいんだよなぁ……」
「わかります、私が説明してるのに舐めた目をしてましたからね♪ 丁度良く最適なダンジョンがありますので♪ 一時的に不死の加護でもつけて叩き込みます♪」
「スパルタだねぇ……」
「舐めて来るのも優希さんくらいの超越者なら良いんですけどね、あんな弱い人達は駄目です」
二人で部屋に戻り依然話していた作戦を実行に移す。
「アミリア、レナ、あなた方を
「「は、はい!」」
「それでは、優希さん。神の代行者としてこの二人を頼みます」
「わかりました、後は好きにやっちゃって良いですか?」
「はい♪ 好きにやっちゃって下さい♪」
そう言ってマリアンは帰って行った。
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作者です!
次回お説教タイム。
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