第42話:風雲急を告げてた件

ダンジョンから戻り、綴さんに結果報告だけしてシャワーを浴びる。


「優希ー着替え、置いとくから―」


「あれ? もってきたんだけどな」


「いやいや、お客さん来てて相手が相手だからスーツ持ってきたのよ」


「え? 誰が来たの?」


宮田みやだ総理と海上幕僚長」


「は? なんで?」


「なんか不測の事態が起きたみたい」


「わかった、そうしたらすぐに出るよ」


「はいはーい。伝えとくね」


その後、急いで髪を乾かし、スーツ一式に袖を通す。


(一体なんだろうな……)


この間の預けた子の進捗かな? でもそれなら海上幕僚長が来ることは無いよね……


乾かした髪を軽く整え、リビングへ向かうと、宮田総理と白い制服の人が居た、他に人は居ないしあの人が海上幕僚長なんだろう。


「お待たせしました」


二人に頭を軽く下げて挨拶をする。


「いえいえ、こちらも急ぎの用でね夕食時なのにお邪魔してすまない、こちらは古河ふるかわ海上幕僚長、海上自衛隊のトップだよ」


そう言って、宮田総理と古河さんが会釈をしてくる。


「そういえば、急ぎの用事って何があったんですか?」


単刀直入に問いかけると二人共、気不味そうな顔をする。


「昨日のテログループ所有の改造タンカーを、奪取してくれた事があっただろ?」


「はい、あの時のですね」


「あぁ、その後なのだがね。特別警備隊1小隊と捕らえられていた子供達、約12名と輸送ヘリ2台が姿を消した」


「え? どういう事ですか!?」


思わず立ち上がってしまった。


「すまない、それだけじゃないんだ、落ち着いてくれ」


古河さんの真剣な顔で少し落ち着きを取り戻す。


「そしてもう一つの内容なのだが、特別警備隊の苅田1等海曹以下1小隊員が宿舎内で殺害……いやこの場合は暗殺か、ともかく遺体となっているのが見つかった、それと同時に20名程の隊員が姿を消してるのもな」


「それじゃあまさか……」


「あぁ、組織内に工作員が紛れ、隊員たちを暗殺、身分を成り代わり、君たちの手から子供達を奪取した」


「どうして……」


俺の問いに二人は首を振った、目的は分からない様だ。


「我々も、どうしてそのような事をしたのかわからない、それにもう一つ報告があってね」


「はい」


「君が壊した戦車……あれは陸自の90式でね、同様に陸自からも離反者が出ている」


「そこまで大規模な計画だったんですか……」


「あぁ、我々としても見抜けなかったのは本当にすまない……」


「それで、子供達の連れ去られた先は、わかるんですか?」


「それなのだが、中国国内の山間部までは足取りが掴めたのだが……」


「向こうの政府も探してるらしいのだが、我々と同じ様に離反者が出る始末でな」


「えぇ……」


「なので向こうも酷く混乱してるんだ、すまない」


悔しそうな顔で頭を下げる二人、流石に今回の事は人の手に余る内容の様だ。


「わかりました、何かわかったら連絡を下さい、一度関わったのでお手伝いはします」


「ありがとう、こちらでも内部の洗い出しや。身元の再チェックをさせてもらうよ」


「それじゃあまた」


「わかりました、ご丁寧にありがとうございます」


そう言って二人は帰って行った。


この件は……いったん保留かな……神様にも手伝ってもらいたいし。


とゆうかこのままアジトを調べてもらって潰せるけど、やるにしてもまだ政府内部に敵が居るとも限らないからね……あまり手の内を晒したくないし。


「なぁ、メアリー」


背後でずっと聞いていた、メアリーに振り返り声を掛ける。


「…………はイ」


「そんなに手を握るな。ほら、血が出てる……」


青白くなった手から、血が滴り落ちている。


その手を包み、固く握られた指を解いてく、綺麗な掌に痛々しい傷が見える。


「あの時の事は俺にも非がある、ちゃんと確認していれば良かったんだ」


「ですガ……うぅ……」


傷を癒しながらメアリーの背中をさする、すると耐えられなくなったのかメアリーが顔を押し付けて来る。


「それよりも、攫われた子供達は、すぐに危害が加えられる訳じゃ無いんだよね」


「ぐズッ……はイ、最初は薬物投与と洗脳教育。それが済んだ子は戦闘技能の習熟でス。少なくと半年から数年ハ、そういった教育が行われまス」


「わかった、じゃあ政府の洗い出しが済んだ時点で、助けに行こう」


「はイ、必ズ!!」



◇◆◇◆◇◆◇◆

それから、夕食用の部屋へ向かい、食事後に皆に話があると伝え、食事を開始する。


「そうだ、エアリスとユフィ、今日はどうだった? とは言ってもテストだけだったけどね」


「ん、楽しかった」


「そうですね、こちらの世界の学力の高さが分かりましたわ」


「そうだね。向うと違って、大体学生は20歳前後までは学校に行ってるから」


「わが国でも導入したいですが……難しいですね……」


「やっぱり、子供でも働かないといけないの?」


「えぇ……どうしても農耕するにあたっては、人手が必要になりますから」


「向こうは、機械なんてないもんね」


「えぇ、どうがんばっても鉄の採掘と農耕用の魔道具の生成。考えても両立をさせ続けるのは難しいですね」


「そうだねぇ……まぁ長い目で、やって行こうよ」


「ん、私も頑張る」


「ユフィ……」


「だからユウキ、いろんな機械買って」


「それが目的か……いいけど」


目をキラキラさせながら、俺に問いかけるユフィであった。


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あとがき

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