第39話:そんなのどうでもいいですわ!

神様から貰った聖刀を空間収納アイテムボックスにしまうと、寝ていたメアリーが起き上がった。


「良かった、メアリー、目が覚めたんだね」


「私…思い出しましタ」


「神様から聞いたよ、あれメアリーの世界の邪神教の奴等が生み出したんだってね」


「そうでス、私が昔成り果てたモノでス」


そう、しょぼくれながら言うメアリー。


「って事は、まーた人が酷い目にあわされたんだな…さっさと救ってやらないと…」


「エッ?」


「だって元は人なんだろ?だったら倒して。メアリー同様、解放してやらないと…」


何でそんな驚いた顔してるの…


「そウ…ですネ…」


「さて、そろそろ戻らないとな…皆にどやされる…」


「そうですネ…早くしないと日も暮れてしまいますからネ」


二人で笑い合ってると、狙った様にエアリスとメイド長がやって来た。


「メアリーさん、目が覚めたんですね」


「メアリー様、ご無事で何よりです」


「エアリス様、メイド長さんありがとうございまス」


「ユウキ様の奥さんの一人ですから! それに私の友人ですからね!」


「姫様のご友人であり勇者様の奥方様、そして優秀なメイドなら心配して当然です」


「メイド長…」


「普段そういった事を、言わないから滑ってますね」


「はハ…ありがとうございまス」


段々と笑顔が戻るメアリー、そして何か決めた様な顔をしている。


「それト、私はこの世界の皆さんニ、謝らなければ行けないことがありまス」


居住まいを正して二人に向き合うメアリー、その神妙な顔に二人も向き直る。


「私の前世ハ、つい数か月前に、この世界で暴れまわった邪神でス。こことモ、優希さんとも違ウ、別の世界で生まレ。この世界の神様に戦争を仕掛けル為、悪神に利用され送り込まレ、この世界の人に沢山の迷惑をかけましタ、謝って住む事では無いですガ…すみませんでしタ」


そして頭を下げるメアリー、それを唖然とした顔で見る二人。


「まず、メアリーさん頭をあげて下さい。それとユウキ様、メアリーさん、いくつか確認をしたい事がありますがよろしいでしょうか?」


珍しく厳しい声で俺とメアリーに問いかける。


「はイ…」


「う、うん」


「まず、年齢が合わないと思うのですがそれはどうしてでしょうか?」


「それは、神様が邪神とメアリーの魂を分けた後。メアリーを転生させる時に向こうの世界で使ってた依り代にメアリーの魂を入れて過去に飛ばしたんだ、それでメアリーは子供に転生して、俺達と同じ様に成長したんだ」


「そうだったのですね、神様が関わってるなら時間程度は操作余裕ですものね…」


「それでメアリーさんはどうしてユウキ様と出会ったんですか?」


「それハ…」


それからメアリーはそれからの半生を話し終えた。


「そうだったんですね…酷い人生をユウキ様に救われて……ふぅ…」


聞き終えたエアリスが息を吐く。


「ず~る~い~ですぅ~!!!!」


「「!?」」


突如エアリスが駄々っ娘のように騒ぎ出し、俺とメアリーが驚く。


「はぁ……姫様…」


「だって!ユウキ様に前世で救ってもらって!今生はユウキ様に人生を救ってもらってですよ!ずるいじゃないですか!私でも何回かしか救ってもらってないのに!!!」


「それならいいじゃないですか…」


「えっと今結構な深刻な話をしてたような…」


「そんなのどうでもいいですわ!」


「「「えぇ…」」」


呆れた声しか出ない俺達


「メアリーさん!そもそも勘違いしています。邪神と勇者の関係は過去何万年も前から発生しています、その過程で邪神に負けたこともあります、勇者様はその際元の世界に強制的に帰還させられてますし邪神自体の力が弱まって倒すまで数百年かけてます」


ビシッとメアリーを指さすエアリス。


「貴女なんてたまたま邪神にされただけの人間、悪いのは貴女を邪神にした奴等、それを命じた悪神!貴女は寝てる時に踏んづけた友達に謝りますか!?」


「いえ、姫様それは流石に謝りましょう」


「エアリス、流石にそれは謝った方が良いよ…」


「うぐっ……ともかく貴女が自分の意思でこの世界を滅ぼそうとしたわけじゃないですよね!」


「それハ、そうですガ…」


「貴女は被害者なんですから!もっとふてぶてしくしてなさい!」


「そうですね、私は今の話を聞いてもメアリーさんのどこが悪いのか全く分かりません」


「ほら!メイド長もそう言ってるんです!気にしないで下さい!それでも気になるなら、貴女の生まれた世界で、その邪神教とやらを私達の、この世界の人達の代わりにぶっ潰して下さい!」


エアリスの発言にメアリーは目をしばたたかせる。


「そうですね、私もそっちのが気が済みます、それに邪神との戦いで死んでしまった人は沢山居ますが、勇者様がご家族一人一人にお会いしてますし…」


「そんな事、優希さんは…」


「あーうん…何でばらすんですか…」


実はあの戦いの後少ないながらも、戦いの帰り道、道中の村や町だが、戦没者の元へ向かっていたのだ。


「まぁその話は皆の前で…俺の居ない時にでもしてくれ…恥ずかしくて仕方ない」


そっぽ向いて言うと三人がくすくすと笑う。


「だから、メアリーもう気にしなくて良いの、今の貴女が気に病む必要は無いしこの話は終わり、もし何か言われるようなら私が代わりに受けてやるわ」


「エアリス」


「エアリスさン」


「姫様…」


「とりあえずユウキ様の寝顔シャシンで手を打ちますね!」


「わかりましタ…ありがとうございまス」


苦笑いをしながらエアリスの手を取るメアリーだった。



それはそうとして、俺の寝顔写真って…いつ撮ったんだ?



---------------------------------

次回予告:お説教

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る