第30話:依頼と交渉

「まぁ、そうだな。お前さんへの感謝が4割、依頼が3割、それに付随した交渉が3割て感じだな」


「交渉ってどうゆう事です?」


「お前さん、その娘っ子のバックに居た組織の事を探してるんだろ?」


「っつ…何の事ですか?」


「隠さなくてもわかるぞ、そいつヒットマンだろ?」


リッカルド周りに控えている厳つい顔の人たちざわつく。


「お前ら落ち着け、この二人と戦っても勝てないぞ」


リッカルドさんは周りの人達を宥め止めてくれる。


「そんな事はしないですよ、それでメアリーの事を調べてくれるんですか?」


「おう、良いぜ。ただ、交渉と言ったようにこの依頼を受けてもらいたいんだ」


そう言って部下の人がタブレットを持ってくる。


渡してくるおっさんの手が震えてる…そんな怖がらなくてもいいじゃん。


「そいつは昨日サルデーニャ島のダンジョン【巨人の墓】付近で撮影された映像だ」


映像を再生してみるとそこには。家の2階はありそうな大きさの、巨人が現れた動画があった。


「えっと…つまりこれを倒して欲しいと?」


「そうだな、倒せるだろ?日本であんな化け物を倒した…【神閃】だっけな?上凪優希君」


「それは恥ずかしいのでやめて下さい」


「じゃあ【サルデーニャの英雄】で」


「どっちも滅茶苦茶恥ずかしいんですが…」


「ハハハハ、それでお前さんそいつは倒せそうか?」


「どうでしょう…やってみないとわからないですね…」


「倒せないとは言わないんだな」


「それで倒したら、メアリーの組織の事は探してくれるんですか?」


「そうだな、そう思ってもらっても大丈夫だ」


「優希さん、無理しなくて大丈夫ですよ。私の事よりも貴方の命に係わる事ですから」


「わかりました、引き受けましょう」


「優希さん!?どうして!?」


「まぁ、メアリーの事が無くても引き受けるよ?だってモンスター次第じゃ、甚大な被害が出るし。こいつを倒すことになるとしたら、それこそミサイルやら戦車やらが大量に必要になっちゃうからね。下手したら島の地形が変わってもおかしくない事だし。それに、メアリーの事調べてもらえるなら安いものさ」


「優希さん…」


「お前、良くお人よしとか言われないか?」


額に汗かきまくってた人とは思えない切り替えの早さで釘寺さんが言ってくる。


「釘寺さんいつ復活したんですか?」


「いやー俺のやり方が悪くて、目つけられてるのかと思ったんだけどな違ったみたいで良かったわー」


「いや、お前の動きが雑過ぎて。目を付けてたんだけどな?」


リッカルドさんが釘寺さんを一言でぶった切る。あ、膝から崩れた…ほっとこ。


「そう言えば何でリッカルドさんは、サルデーニャ島の事を俺に依頼したんですか?」


「あー、あそこは俺の故郷で最初の嫁さん見つけたのもあの島でな。単純に故郷を守りたいからってのは駄目か?」


「最高の理由ですね、任せてください!」


異世界では何度も故郷を追われ取り戻せずに亡くなって行った人を知ってるのでよくわかる。


「まぁ、必要な物資等はこちらで手配するからな」


「でしたらこの人を置いて行きます」


メアリーは隣で真っ白になっている釘寺さんを指さす。


「良いですね、ついでに鍛えて下さい」


「おい【神閃】ボーイふざけたこと言うな!」


「手加減してくださいとか言おうと思いましたが、全力でしごきあげて下さい!」


「オイお前!滅茶苦茶いい笑顔でいう事か!鬼・悪魔・緑の悪魔!」


緑の悪魔ってどれの事だよ…


「じゃあ、後はお願いします」


「私も、失礼します」


「おう、とりあえず代わりの運転手は手配しとくから。調査から頼む」


「おい、マジで置いてくのか!?おい!おいいぃぃぃぃ」



◇◆◇◆◇◆◇◆

リッカルドさん部下の方に車で送られる途中、不安そうな顔をしたメアリーが再度、先程の質問をしてきた。


「優希さん」


「ん?どした?」


「先程の事なんですが…」


「あぁ…釘寺さんの事?」


「違います!何で私の為に危険な依頼を…」


「さっきも言ったじゃん、依頼のメインはリッカルドさんの故郷を守ること。メアリーの事はついでだって、それに、どの道依頼が来るだろうから」


「それならそちらの方が優希さんに莫大なお金が入ります!」


「いや、お金より友達でしょ」


「とも……だち?」


「え?だって耀や春華に冬華、巴ちゃんとも仲がいいんだよね?」


「それは、そうですが………いちばん大事な人が抜けてるじゃないですか…」


「ごめん、後半聞き取れなかった…」


「なんでもないです!」


「それに、その友達の為にできる限りの事をしてあげるのも良いでしょ?それにお嫁さんへのポイント稼ぎになるし!」


「なんですかそれ……そんな理由ですか…」


「いや、大事でしょ?それに男子は皆、女の子には格好良く見られたいと思ってるし!」


「全く、だから私も絆されてしまうんですね…」


「ん?また何か言った?」


「な・ん・で・も・な・い・で・す!」


そう言うとメアリーはぷりぷりと怒ってしまった…



運転手の兄ちゃん(やべぇ…コイツラ、ジャポーネの漫画で見たアオハルってのシてやがるぜ…)


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