第27話:回復魔法?はて?
10m位飛んだな!そして伸びている男の手を踏みつけウィッグを取り返す。
「メアリー」
そう呼ぶと彼女は半ベソを書いた顔でこちらに向く。
「ユ゛ウ゛キ゛さ゛ん゛……わ゛た゛し゛…わ゛た゛し゛…」
「大丈夫、あいつらはぶん殴ったよ、それにメアリーのその髪の色綺麗だね」
「あ゛り゛が゛と゛う゛こ゛さ゛い゛ま゛す゛」
「泣くな泣くな。そうだ、メアリーは長い髪が好きなの?」
「す゛き゛で゛す゛う゛ぅ゛ぅ゛」
「わかった、じゃあ……」
頭の中で髪が伸びていく様子を思い描く、腰位の長さで良いかな?メアリーのウィッグはそこまで長くなかったけど…
「エクストラヒール」
するとメアリーが光に包まれの髪の毛がみるみる伸びていく、伸びていく、伸びていく。
「あっ…やらかしたかも…」
メアリーを泣き止ませたい一心で魔力を込め過ぎたせいで気付いたらメアリーのアッシュグレ―の髪が彼女を中心に花のように広がっていた。
「ふぇ!?わ、私の髪ががが!?」
「ごめん、伸ばしすぎちゃったかも…多分これじゃあ歩くの大変だよね?」
「え?え?え?」
周りの人もめちゃくちゃ驚いたをしている、しかも何かコソコソ話してるし。
うわ、あっちの髪が絶望的な人が凄い形相でこっち見てる…こわっ。
「と、とりあえず目立っちゃったし。そうだ、この後乗る飛行機は?」
「えっと…40分後です…」
「手続き始まってるじゃん!ほら荷物持つから!立って!」
「は、はい!」
俺はメアリーの荷物を、メアリーは自分の髪を纏めて立ち上がる。
それからアホ共に簡単に回復魔法を掛け、走って搭乗ロビーへ向かう、荷物は預ける程では無いので保安検査場へ走る。
検査場に到着してもぽーっとしているメアリー順番が来た、んだけど動かない。
「メアリー?メアリー?おーい?」
前に出て手を振るとメアリーが気付いた。
「は、はいっ!?って優希さん!?」
「いやいや、隣に居たじゃん順番来たよ?」
「え?あぁ!すみません!」
そう言って滅茶苦茶に暗器を出し始める。
(何ですかあの量は…つか、どこに仕込んでるんだよ…)
そうして案の定引っかかる、そりゃそうだろうなぁ。
「日本の出国時はどうして大丈夫だったんだろう…」
それから裏に連れてかれたメアリーは5分程で帰ってきた。
「無事全部返してもらえましタ」
「返してもらえたんだ…」
「でハ、行きましょウ」
口調が元に戻り調子も取り戻したメアリーと飛行機に乗り出発するのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
約一時間半のフライトを終えシチリア島へ到着すると明らかに周囲から浮いたトレンチコートを羽織ったおじさんが居た。
「優希さン、あの人ガ」
「うん、なんとなく…とゆうか、一目見て良くわかった」
「でしょう?」
「オイお前ら!コソコソ人の悪口言うな!」
「そう言われたくないならちゃんとして下さい」
「相変わらず厳爺の所の人は厳しいなぁ…」
「ははは…」
「まぁ、そこのがきんちょが厳爺の言ってた件の英雄様ですか」
「そんな事言われてたんですか俺…」
「そりゃそうだろ、お前あのダンジョン災害のボスを倒し、昨日は島の住人を救い回ったらそりゃ英雄と呼ばれるのもなぁww」
「昨日の事まで知ってるんですか…」
「情報屋なめるなよ……お前の女性遍歴も明かしてやろうか?」
「無駄ですよ、優希さんは妻が4人居ますので」
「は?」
「ちょ…メアリー!?」
「良いご身分だな…クソガキが…」
「えぇ…」
「まぁ良い、乗れ」
そう促され車に乗る、ゆっくりと走り出す。
車内では、再度自己紹介をして話を進める。
「まぁ、今の所得た情報はエオリア諸島っていう場所がきな臭いと感じるんだよ、嬢ちゃんは何か憶えてないのか?」
「いえ、特には覚えていないですね」
「ねぇ、メアリー気になったんだけど」」
「何ですか?優希さん」
「その口調いつもと違うけど何で?」
「それは…気にしないで下さい、カモフラージュです」
最後、顔を近づけて耳打ちしてきたのでふわっとメアリーから女性特有の香りがして顔が熱くなる。
「お前ら、盛るなよ?一応これレンタカーなんだから」
「盛らないです!」
「殺しますよ?」
「あ、はい。すみません」
メアリーがとてつもない殺気出してるんだけど…釘寺さん…南無
「おいおい上凪!祈るな!止めろ」
気付いたら手にしたハンドガンで釘寺さんに銃口をぐりぐりと押しつけてる。
「まぁまぁ…メアリー落ち着いて」
「チッ……」
「オイ上凪この傭兵みたいな暗殺者はやめとけ、俺の経験上刺すのはこうゆう女だ」
「そろそろ黙らないと、本気で頭に穴開けますよ?」
「はい…すみませんでした」
メアリーの目が座ってる…そっとしておこう、こうゆう時下手に係わると巻き添えをくらうからね。
ばれない様に噓寝をしてやり過ごす。
「おい、上凪!!くっそこいつ寝てやがる!!」
「言い残すことは無いですね?無いよな?」
「ぎゃああああああああ」
そうして車内に響く釘寺さんの悲鳴。
頼むから事故らないでくれ、そう思いながら狸寝入りを敢行するのであった。
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