第30話:救出作戦決行④
それから綴さんに一人の子供が道案内として同行したいという旨を伝えると、返答は色好い返事では無かった。
「流石にそれは許容出来ないかな…」
「ですよね…でも何とかなりませんか?」
「優希君、その判断は私だけでは決められないし、君達全員の命を預かっている立場なんだ、あくまで付いて行きたいだけの不確かな、でまかせかもしれない、わかって欲しいの」
「そうですよね…」
やはり断ろうと思いこちらを不安そうに見ている勇輝君へ伝えようとすると通信が入ってきた。
「優希君、その子のご両親から君に話があるそうだよ」
「えっと、上凪さんですか?」
「はい、上凪です」
「私は勇輝の父です、うちの息子が我儘を言ってすみません」
「いえ、俺も彼の気持ちはわかるところがありますから」
「出来れば、一度息子と話をさせてもらえませんか?」
「わかりました、彼と代わりますね」
ヘッドセットを外し勇輝君につけてあげると二人は話し始めた、勇輝君は顔を赤くしたり、怒ったりところころと表情が変化する。
それからすぐに勇輝君がヘッドセットを返してきた。
「もういいのかい?」
「はい!大丈夫です!」
「代わりました」
「ありがとう上凪君、それで息子の言葉を聞いたよ。それで君達には負担になってしまうがどうか息子を連れて行ってくれ」
「でも、ここは未知のダンジョンで、かなり危険性があるのですが……」
「いいんだ、息子が幼馴染を大切にしている事は知っているし。その幼馴染のご家族とも私達は兄弟の様に育ってきたんだ、故に無理を承知でお願いしたい」
「わかりました。息子さんも他の子達も救出したいと思います」
その後綴さんより再度気を付けるよう注意され通信は切れた。
◇◆◇◆
それから話し合いとルート詳細擦り合わせが行われ、最短で突破するため自衛隊の方々はのこり4人の子供を保護して地上へ向かい、俺達と神楽坂さん達それと勇輝君を入れた10人での電撃救出作戦となった。
勇輝君は走っても他メンバーとの差が出てしまう為、夏風さんに背負われる事となった、本人は恥ずかしそうにしていたが。
「じゃあ自衛隊員の皆さんよろしくお願します!」
「了解!」「おう、任せてな」「優希!絶対かえって来いよ」等々、次々言葉に掛けて出口へ向かって行った。
「よし、皆ここからは短期決戦だ!いくぞー」
「「「「おー!」」」」
それから、勇輝君の指示で道を辿ると大きな扉の前に到達した。
「とりあえず探知魔法っと」
探知魔法を使うと30人くらいの人の魔力とボスであろう大きさの魔力、それからその取り巻きのモンスターが40体位いる。
「ここが最深部で間違い無いね…ただこの中モンスターは40体位居るね、無論ボスの【ハーメルンの笛吹男】も…」
皆が息を吞む、今迄対応したこと無い様な数の敵だ。
「よし、作戦を立てよう、突入直後、俺と耀は前に練習した魔法で初手の攻撃を」
「わかったわ、あれをやるのね!」
「次に冬華は、全力で敵が集まってる部分へ攻撃」
「全力でかましちゃうよ!」
「春華は、神楽坂さん達と一緒に子供達の所へ」
「わかりました」「わかったわ、春華ちゃん私達の事任せるわ」
「おねがいねー」「任せた!」「……んっ(サムズアップ)」「任せたよー」
「はっ、はいい~」
「よし、じゃあ配置に着いたら作戦開始しようか」
◇◆◇◆
ほどなくして全員が配置に着いた、じりじりとみんなの緊張が伝わってくる
「よし、皆!とっとと敵を倒して帰ろう!作戦開始!」
扉が開かれ俺達は中に侵入する、部屋の中は海外の映画で見るような石組みの暖炉とベルベットの絨毯、大きな革張りのソファと、自分達が小さくなったと勘違いする様な大きさの家具が立ち並ぶ、その中に数多のスケルトン・レイス・マーダードールが群れ、中心にひときわ大きな仮面の男が居た、子供達は壁に掛けられた虫かごや鳥籠の中に居る。
「よし、耀いくよ!」「えぇ!」
『風よ、我が敵を切り裂く大いなる渦よ、その力を持って我が前の敵を喰らい尽くせろ』
『氷よ、我が敵を凍て尽す大いなる息吹きよ、その力を持って我が前の敵を絶命させろ』
各々詠唱を終える、そこから二人の魔法を合わせさらに大きくしていく。
『『そしてその力を合わせ、立ちはだかる者達へ静寂を!我々には歓喜を!』』
「「————コキュートスハリケーン!!」」
そして放たれた絶対零度の暴風はモンスター達を襲う。
集団で固まっていた敵は悲鳴すら上げることの許されない魔法で、体も魔石も砕かれていく、例え回避をしても凍てつく空気によって体の自由は奪われる。
そこに冬華の全力の射撃が入り敵は残さず破壊し尽くされた。
濛々と冷気がと砂埃が立ち込める、視界が悪いので探知魔法をかける。
敵は探知には引っかからなかった。
「皆、敵は見当たらない、俺達の勝ちだ!」
子供達を安心させるように大きく、聞こえる様な声で言うと全員に歓喜の声が響いた。
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あとがき
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