第2章【覚醒する者達】
プロローグ:異世界のその後
◇エアリス side◇
ユウキ様が元の世界に帰られてから数日、私はやっと部屋から出ることができた。
(何日泣いていたんだろう…城に戻ってから1度も顔を合わせられなかった、会ってしまったら、帰って欲しくない、このままずっとここに居て欲しいと、無理なお願いを言葉が尽きるまで言ってしまうと思ったから)
今回の召喚は制約付き、邪神の討伐が終わったら帰ってしまう制約だ。
神様も決め事だからと申し訳無さそうにしていたくらいだ。
ゆっくり歩きながら城に備えられた鐘楼へ登る、夕日に照らされたこの城で一番の見晴らしの良い所だ。世界の全部とは言わないが地平線と言うユウキ様が教えてくれた目に見える地の果てまでが見えるところだ。
(ここは風が気持ちいいな…ここでユウキ様と何度もユウキ様の世界の話をしたな…)
そう思っていると、こちらの世界に来てから1年経つ間にユウキ様はとても強くなられた、最初はゴブリンすらまともに倒せなかったのに、いつの間にか騎士団長のしごきを受け肉体・精神共に成長した、ユキの村を襲った魔物の群れを倒し、それから邪神の幹部が賢者の森を襲ったときは死にかけながらも打ち勝っていた。
(あの時は同時に呪いも受けて、世界樹の泉で三日三晩看病したっけ…)
それからユウキ様は激化する邪神の軍勢との戦いの中何度も救えぬ命にユウキ様は血を流し涙を流された、自分もつらかっただろうに皆を奮い立たせ折れぬ心で何度も立ち向かっていった、最後には魔王様も味方に付け人魔連合軍を率いてたっけ…
そんな成長していく姿を見てたら、いつからだっけな…ユウキ様の事が大好きになったの…
ユウキ様も褒めてくれたこの世界の素晴らしい景色だが段々と滲んでくる。
◇◆◇◆
どのくらい泣いただろうか、いつの間にか日は暮れ星が瞬く時間になっていた。
(涙は枯れたと思ったんだけどね…)
そんな自嘲を浮かべているといつの間にかバルコニーの入り口にユキが立っていた。
ユキはユウキ様のお付きから私の付き人になっていた、父がユウキ様と交わした約束の中であったユキの今後の事で、私の付き人にすることで立場と地位を確立させた訳だ。
私がユキに気づいた事をユキも気付いたらしく、近付き持っていたブランケットを私に掛ける。
「姫様、部屋を出られたら国王様よりお話があるそうです」
「父様が?わかったわ、湯浴みしてから向かいましょう」
「かしこまりました、ではお部屋に戻りましょう」
そうして部屋に戻り数日振りに風呂に入ると体が解される、ユキが髪を丁寧にほぐし洗ってくれる。数日振りに人間に戻ったような感覚になる。
それから風呂から上がりユウキ様の発明したドライヤーの魔道具で髪を乾かす、こちらの世界もユウキ様に知恵をいただいたお陰で5年で凄く進歩した。
そんな事に思いを馳せながら髪を乾かすのに身を任せていた。
◇◆◇◆
「さあ、ユキ行きましょう」
ユキを連れてお父様の書斎へ赴く、ノックをし扉をユキに開けてもらうと数日振りの父の顔が見えた。
父は私の顔を見ると立ち上がり抱きしめてくる、父の温もりを感じると心配をかけてしまったなと感じる。
「お待たせしました、お父様」
「エアリス、元気になってくれて良かった…」
「それで、お父様お話と言うのは?」
「ちょっと性急過ぎないか?もう少し再会の喜びを…」
「ああ、それはもう大丈夫です」
そうきっぱり言うとお父様は肩を落とす。気を取り直してこちらに向き合うと真剣な顔になった。
「エアリスよ取り乱さず聞いてくれ、城の宝物庫にあったお前がユウキ殿に贈った剣が昨日無くなっていた」
その瞬間私の中で何かが切れた感覚がしてその場に倒れた、二人が駆け寄ってくる姿が見えたが私の意識はそこで途切れてしまった。
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あとがき
作者です。2章開幕しましたー。
PVも3500を越えました!嬉しい!
★も毎話つけてくれる♥も嬉しいです!泣きます!
また日常回が進みます!
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