第5話:長くて長い一日①
目が覚めると枕元で耀が顔を覗き込んでいた、やたら顔が近いな。
「おはよ、昨日ぶりだな」
「うん…おはよ」
耀の元気が無い、落ち込んだ様子なのはわかるが、そこまで女心を察する力は俺に無い…ちらっと時計を見ると3時を回ったところだった
「耀…いつからそこにいた?」
「1時間前…」
「起こしてくれて良かったのに…」
「声掛けたんだけど、起きなくて…」
「あーそうか…寝入ってたのかな?…ははは」
うん!めっっっっちゃ気まずい!
とりあえずごまかす様に耀の頭を抱きかかえる、いつも耀が落ち込んだ時にやってる方法だ。
「どうしたんだ耀?元気ないじゃん」
あくまで穏やかにそしてやさしく頭を撫でながら問いかける。
「優希はやっぱり探索者になるの?」
(あーその話か、一昨日あんな光景見たばかりだもんな)
「まだ考え中、でもこの力で人が守れるならと思うと、やりたい方向に心は向かってる」
「そっか…優希は昔からそうだよね、人が困ってたら助けちゃうし自分の身なんか省みずに助けちゃう…」
「まあ昔から父さんに言われてたからね『人を助けるのには勇気がいるし大変なこともある、助けた人に心無い言葉を言われることもある。でも誰かを助けることが出来るのは優しい人だけなんだ、だからお前は優しくそして、たくさんの人を助けれる人になれ』って」
「出た…優希のお父さんの人助け理論w」
「まあ、その後に続く『もし人を助けてればそれが巡り巡って自分に帰ってくるからな!』ってのが無ければ最高なんだけどねw」
「でも優希はそこまで考えてないでしょw」
「考えれないほど頭も良くないけどねw」
そう笑い合うと耀は思いっきり胸に顔を埋めて深呼吸する、恥ずかしいからやめてほしいんだよなそれ。
「うん!元気になった!」
たっぷり5分ほど深呼吸した耀の顔はすっきりした顔をしていた。
――――ぐううううううううう
それと共にお腹が鳴る、昼前から寝てたのでいい音だ
互いに顔を見合わせ笑うと耀は立ち上がり引き上げようと手を差し出してくる。
「まったく、いつから寝てたのよw」
「最後に時計見たのが11時前くらいだから3時間かな?」
「仕方ないわね、優佳さんは仕事で夜勤だから私何か作るわ」
「おっ金曜日に続きの耀の飯だ嬉しいな」
5年も向こうに居たから久々感がすごく強い
「久しぶりって…一昨日も食べたじゃないそれに私のお弁当のおかずも食べた癖に」
「良いじゃないか耀の味好きなんだから、それになんだかんだ毎日食べてるんだから」
それから耀の作る遅めの昼食(パラパラなチャーハンと卵スープ)を食べ終える、リビングのソファで御互いに寛ぎながらなんとなくテレビを眺めていると、丁度今日より始まった能力検査会場が映し出されていた。
「ねえ、優希あれ行ってみない?」
耀はテレビの中に映る能力検査会場を指差す
「あれって、能力検査?耀も探索者になるの?」
「うーん、なるかどうか優希次第なんだけど、受けといて損はないかなと思ってるの、ほら探索許可証自体の発行は自由らしいし」
「でもめっちゃ混んでるよ?」
「まああれは東京だし、うちのところはそんなに混んでないでしょ、それにそのまま夜ご飯も食べてこようかなって思ってるのよ」
「あーそうか今日母さん夜勤だったの忘れてた」
「人の話くらい聞きなさいよ」そういって耀は膨れっ面になる。
「あーごめん、耀のご飯しか頭になかった…」
「まったく……もう少ししたら出ましょう、私デートの支度してくる」
びっくりして耀を送る為浮きかけた腰がソファに落ちた、その様子を見て耀は悪戯が成功した子供の顔をしてリビングから出て行った廊下から「早く準備しなさいよー」と声がする。
「了解、じゃあ俺も支度してくるか」
腰を上げてシャワーを浴びるため俺も部屋から出る。
それから30分後耀の家に迎えに行く、チャイムを鳴らすと耀はすぐ出てきた。
出てきた耀は髪をハーフアップにし決して大きくないフリルをあしらったブラウス、ロングスカート風パンツにアンクルストラップのローヒールサンダルを履いていた。
今まで見ることなかった死ぬほどかわいい耀の姿を凝視する、うん死ぬほどかわいい。
「ちょっと…優希そんなにじろじろ見ないでよ」
少し恥ずかしいのか少し身をよじる耀。うん死ぬほどかわいい。
「いやぁ耀が死ぬほどかわいいから意識が飛んでた」
「なっ―――――」
あ、耀が瞬間湯沸かし器並に赤くなった。うん死ぬほどかわいい。
「いや、マジで『死ぬほどかわいい』以外の語彙なくなるよ」
そう褒めると耀は「あうあうあうあうあうあう」しか発さなくなってしまった。なんか目もぐるぐるしてね?
「おい耀大丈夫か?」
耀の顔を覗き込むことになる
「あうあうあうあうあう」
駄目っぽいな…どうしよう…
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