第1話:帰ってきた日常
その日は長い長い夢を見ていた、異世界に召喚されて世界を救った夢だ。
(やたら現実感ある夢だったなぁ…)
目覚ましの音で目が覚め、洗面所で顔を洗い制服に着替える。
母が作っていてくれた朝食を食べ玄関へ向かう、靴を履き外に出ると対面の家から幼馴染の
(この顔見るのも久しぶりだなぁ…ってあれ?何で今久しぶりとか思ったんだ?)
「おはよー優希」「おはよー耀」互いに挨拶を交わし通学路を歩き出す、保育園で初めて出会って以降ずっと一緒だ、今ではすっかり美人に育っていて月に2~3人から告白されている位人気者だ。告白を断り続けてるからか俺と付き合ってると思われて入学当時はやっかみを受けた、まあ半年も過ぎた頃には夫婦とか言われてたが、特にお互い気にしていなかった。
「そうそう今日の授業なんだっけ?」
「体育と国語と数学お昼挟んで音楽と家庭科よ」
「うへぇ朝から体育かよ…」
「今日は暑いみたいだし水分忘れないようにしないとね」
(このやり取りも5年振りか…あれ?5年って)
「どうしたのそんなニコニコしたり考え込む様な顔して」
「あっ…いや、なんでもない」
「ふーん、なんか変な優希」
まるで自分が何年もこの通学路を歩いておらずとても久々に歩いている、そんな違和感を覚えつつ今日も学校へ向う。
午前の授業を終え昼休み時間となった、座席に寄ってきた耀と一緒に弁当を広げる。
「優希、今日はお弁当?」
「うん、母さんが新作試したから耀にも食べてもらえって」
「やった」
「じゃあ飲み物買ってくるよ、何にする?」
「いいの?じゃあ私はお茶で」
「了解、いってくる~」
「いってら~」
食堂前の自販機コーナーまで行き俺と耀、二人分のお茶を買い戻る途中顔を合わせたくない奴が待っていた。
(面倒だな…人通りの少ない道選んだのが裏面出たか…)
無言で久墨の横を通り抜けようとすると「おい、ちょっと待てよ」と声をかけてきた。
「あーはい何でしょうか?弁当食う時間無くなるんで後にしてください」
面倒くさそうに返すと久墨は舌打ちするとゴミを見るような目でこちらを見つつ声を発した
「調子に乗るんじゃねーよこのクソ陰キャ!!」
開口一番罵って来た、誰こいつの事成績優秀とか言ってるの?
「調子に乗ってる?何のことですか?」
「耀の事だよあれは俺にふさわしい女だ」
ホント誰こいつの事成績優秀と言ってるの?
「ほんと毎回面倒な人ですね、耀と恋人にでもなったんですか貴方?」
「うっさいな、自分の女(予定)の周りに羽虫が飛んでたら追っ払うのは当然だろ」
なんだろう…超理論に呆れて声も出ない
「あーそれ長くなります?もう俺行くんで」
面倒なんでさっさと階段を上がる
「ちょ!待てよ!」
いきなり肩を引っ張られ振り向かされると胸倉を掴まれる…ほんと掴んでるの?凄みも無いんだけど…
「何ですか?いくら取り繕ってても、こんなとこ見られたら終わりますよ先輩」
丁度上の階から女子の声がしてくる。
久墨にも聞こえたのか舌打ちして手を離す、声を荒げるわけにもいけないので久墨は怨めがましい目をして去って行った。
(なんかアイツ、いつもより迫力が無かったな)
それから教室に戻り待ちわびたであろう耀と共に、お弁当を開けると色とりどりのおかずと下段には白いご飯が入っていた。
今日のおかずは野菜の肉巻き、うなぎに卵が巻かれたう巻き、ほうれん草とアスパラの胡麻和え、豆腐ミートボールに新作のきのこと海老のテリーヌだ。
「おっ、それが優佳さんの新作かおいしそうだな~」
「何ナチュラルに人のもの全部食べようとしてるんだ一つだ一つ」
「え~いいじゃんケチ~」
「全部は駄目だ、俺も食べたい」
「じゃあ私の自信作のから揚げを進呈しよう」
「よっしゃ、久しぶりの耀のから揚げだ」
(このやり取りも耀の弁当の味も懐かしいな)
「うっわこのテリーヌおいし…ちょっ優希どうしたの!?」
「えっ?」
唐突に耀に驚かれると耀はハンカチを出して顔を拭いてくる
「あぁ、ごめん…耀のから揚げが本当においしくてな」
懐かしすぎる感覚から涙が出てしまっていたみたいなのですぐに取り繕う
「なっ、しょっちゅう食べてるじゃん…そんなにおいしかったの?」
「まあ俺にとっては母さんの味より慣れ親しんだ、いわゆるお袋の味って奴だ」
母さんは揚げ物をあまりしたがらないのでから揚げなどの揚げ物に関しては耀の方が得意である。
「仕方ないわね、コレ今日の晩御飯に仕込んだやつだから作って持ってくわ」
「まじか、神かよ。じゃあ夕飯ウチで食うか?」
「いいの?また優佳さんに料理教えてもらおうっと」
「いいんじゃね?母さんも耀と一緒なら揚げ物もやるだろうし」
それから耀と夕食の約束をして残りの弁当を食べきった。
周りの心の声((((((早く結婚しろよコイツラ))))))
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