第12話 都市伝説のメリーさん、ギガが死ぬ。
「あたしメリーさん。今あなたのうしゴボゴボゴボ」
「ごめんなんか逆に普通に後ろに出てくると思ってなかった」
また何か変化球な出方をすると思って、普通に湯船に浸かったままメリーさんの電話に出た。
結果、普通に後ろに出てきたメリーさんは普通に沈んだ。
「いまだこうやって遊びに来てあげてる、あたしの寛大さに感謝するがいいの」
「ごめんなさい先日は調子乗りました」
無表情のままほっぺを気持ちぷくーっとふくらませたメリーさんと、湯船に二人並んで、浸かる。
こないだはイジりすぎたね。反省します。
けどなんか……怒ってるとか照れてるとは別に、なんというか。
「なんかメリーさん、どんよりしてるというか、へこんでない?」
「コックリにギガをまるっと使われて、ずっと通信速度制限がかかってるの」
「あー、それは普通にへこむね……」
こないだコックリさんが来たとき、実体化にギガを食われたんだった。
それがまだ尾を引いてるのか。
「コックリさん、データ容量大きいんだね」
「文章より画像の方がデータ容量が大きいし、画像より動画の方が大きいの。なら動画より実体化の方がデータ容量が大きくても当然なの」
「当然……まあ……そうなのかな? そうなのかも……」
実体化のデータ容量なんて、日常生活で考えたこともないから分からないけど。
「おわびって言ってデータ容量を追加購入するお金はくれたけど、それで追加したらお金さえ払えばどんどん出てきてオッケーって思われそうでシャクだから追加してないの」
「まあ、うん、そうねえ」
「おかげで旅行先の写真もろくに送れなかったの」
「あー、しばらく写真が来なかったのはそのせいなんだ」
メリーさんは出会ってからずっと、各地の温泉をめぐっては、その写真をちょくちょく僕に送ってくれる。
僕のスマホより新しいやつで画質がいい分、データ容量も大きそうだよね。
「メリーさんからの写真がなくて、ちょっとさみしく感じちゃったよ」
「さみし……んんっ、ん、あたしのありがたみを感じるがいいの。
都市伝説をエッチな目で見れちゃうような救いようのないド変態と、いまだ友達でいてあげるあたしの富士樹海なみの心の広さに感謝するがいいの」
「おどろおどろしそうでイヤな心だなあ」
「なんなら今度樹海で写真撮ってくるの。温泉の」
「そういえばあのへんも温泉あったっけ」
「あ……でも通信速度制限がなくなるまでは、写真を送れないの」
「あー」
めんどくさいね、通信速度制限。
「それなら直接うちに来てさ、写真見せてよ。こまめに来てさ。
その方がメリーさんとたくさん会えるし、うれしいな」
なんだかんだ、一人でいるよりメリーさんいた方が楽しいんだよね。
そんな素直な気持ちで言うと、メリーさんはうつむいて、ぷるぷるふるえた。
「ヌクト……そんなにあたしと、直接会いたいって思ってるの……?」
あ、これは照れの反応かな?
このくらいの言葉でも照れちゃうなんて、かわいいなー。
と思ってたら、ばばっと両腕で自分の体を隠して、無表情のまま怒鳴ってきた。
「そんなにあたしの体を何度もナマでじろじろ見てたいなんて、やっぱりヌクトはエッチなの、変態なの、サルヤローなの」
うわーい誤解だー。
「違うんだよメリーさん、僕はメリーさんのことかわいいとは思ってるけどエッチだとはこれっぽっちも思ってないんだ」
「それはそれでムカつくからおしおきなの」
「理不尽!! 目にシャンプーがーッ!?」
目の泡を洗い流している間に、メリーさんはいなくなっていた。
結局このオチなのね。
そこでピロンと、音が鳴った。僕のスマホ。
見るとメッセージが届いていた。メリーさんから。
『ヌクトがそこまで言うなら』
『仕方ないからもっとこまめに来てやってもいいの』
「……ふふっ」
かわいいな、メリーさん。
メリーさんのかわいさと、これからもっとこまめに来てくれるといううれしさで、一人風呂場で残されたまま、僕はにやにやが止まらなかった。
「その人をバカにしたようなにやつきが気に食わないの」
「被害妄想!! 目にシャンプーがーッ!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます