第5話 ようこそ!我がeスポーツ部へ!

「…ここか」


目の前の教室にはeスポーツ部と書いてあった。


eスポーツとは「エレクトロニック・スポーツ」の略で、広義には、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称。 


簡単な言葉で言えば、ゲームを競技として扱ってるのである。


「すみません。チラシをみて来たんですが…」


部屋には誰も居なかったが、たくさんのモニターにPC、本棚にはゲームの攻略本や

ゲーム雑誌がたくさんあった。 


流石の僕でもすこしテンションが上がった。




「あれー!もしかして入部希望者かな!?」  


いきなり大声で言われ、思わずびっくりしながら振り返ると、ニコニコしている

女の人が立っていた。


「あっ、いやチラシを見て見学しに来ました。」


「そうかいそうかい!ゆっくり見学したまえ新入生!ここは我が校の

eスポーツ部よ!」


無駄にテンションの高い人だなと思いつつ、色々聞きたいことがあったので

聞いてみることにした。


「ここには格闘ゲームもありますか?」 


「もちろんあるよ!格ゲーや、FPS、要は

eスポーツに関連するゲームはほとんど置いてあるかな。君は格ゲーが好きなの?」


「まぁ…はい。格ゲーしかやりませんが。」


「いいじゃん!いやー中々部員集まらなくて困ってたのよー!」 


「まだ入るとは言ってないですが… 

でもここの学校にこんな部活あったんですね。」  


「この学校は昔からスポーツ部が有名でね!去年になってeスポーツにも力を入れようってなったのよ!」 


「そうだったんですか。なんとなくでここの学校選んだので知らなかったです。」 


「いや、ここの学校意外と偏差値高いし、倍率凄い学校なんだけどね。

まぁいいや。ゆっくりしていきな!もうすぐ

うちの部員も来るし!」 


あらためて考えれば、入試試験は難しかった印象だった。とりあえず行きたい高校は

なかったのでじょうたろうの志望校にした

だけの理由だ。 


部室を色々見て回ていたら、ドアが開いた。

 

「ただいま戻りました、ぶちょ… ってあれあ、あなたは…」


僕と目が合ったその子はあの時の美少女だった。やはりこの部活に居たのか。  



「あ、どーもです。すみませんチラシを1枚

拾い忘れてて、それで見学しに来ました。」



「そ、そうですか。ゆっくりみていってください…」


凄くもじもじしてて、この人は人見知りなんだと思った。



「みくちゃんお疲れ様ー!今日もありがとね♡」


部長さんが彼女に抱きつきお礼を言っている。 彼女は凄く恥ずかしそうな顔をしていた。 なんだか少し気まずい。



「紹介するねー! ここの唯一の部員!

みくちゃん!こうみえて結構ゲーム上手いんだよ!」



「初めまして… 橘 未来です。先程はありがとうございました。」



「いや、チラシ拾っただけですし、そもそも

僕がぶつかっちゃったから全然いいですよ」



「みくちゃん!この子格ゲーをやってるんだって!」



それを聞いた彼女は少し驚いた表情をして、

あるモニターの画面を指さした。



「あの… もしかしてこの格闘ゲームですか?」


そこには僕がずっとやり込んでる格ゲーの

画面が映っていた。


「やっぱりこれもあるんですね。これですよ。って言うよりこれしか出来ないですけど。」



「…そうなんですね。」



少し彼女の表情が緩んだ気がした。彼女も

この格ゲーのプレイヤーなのかな。



「ふふっ!この格ゲーは今日本だけじゃなくて、世界中でも人気だからね! プロゲーマーもいるくらいだし!」



「ちなみに、私達もこの格ゲー出来るよ!

特にみくちゃんは結構強いよ!」



「…そんな事ないですよ。」



ほほう。そう言われると興味が出る。最近は負け越したりしてるが、基本的に負けることの方が少ない。 少し対戦してみたくなった。



「いい事思いついちゃった♪みくちゃんと

新入生で対戦しなよ!」


「そんな…急に… 新入生くん何も持ってないだろうし…」


「私のアケコン貸してあげるから大丈夫だよ! ねぇやってみない?」



「僕は全然いいですけど…」



「じゃあ2人で対戦して先に2回勝った方の勝ちね! ちなみに条件があります!」



「なんですか?」



「みくちゃんが勝ったらあなたはここの部員になる事!♡ 新入生くんが勝ったら保留でいいよ♪」



正直負ける気はしない。まぁこんな子が

格ゲーをやるイメージが湧かないから対戦してみたいと思った。


「いいですよ。対戦しますか?」


彼女に聞いたら、顔を赤めながら頷いた。



「じゃあキャラクターは、好きなの使ってね! ステージはランダムにしよう!」


「2人とも頑張ってね♡」



彼女が選んだキャラクターは一般的に人気のあるキャラを選んでいた。そして最近負け越した人と同じキャラだった。



(まぁ人気あるキャラだし被る事もあるか…)



「じゃあ新入生くん、よろしくね」


彼女は、少し微笑んだ。この人笑う事あるんだと思った。



(にゃはは、新入生くん勝てるかな♡)



対戦が始まった。


(結構やり込んでる感じはあるな。落ち着いて対戦しよう。)



部長が言う事は半信半疑だったが確かに

この子上手い。でも負けるほどじゃな…




一瞬の隙を突かれて、一気に負けた。




「あはは!新入生くん油断したね笑

まだまだあるよ!♡」



「もう負けません。」



「頑張って♡」




部長の言葉が少し煽りに聞こえて、ちょっと動揺した。 静かに観てくれないかな。




結局、僅差ではあったが1本目は負けた。



「新入生くんあと1回負けたら入部だよー♡」




「次は勝ちます。後少し静かにしてください。気が散ります。」



「はいはい♡ 少し静かにするね♡」



気が散ったとは言え、確かに彼女は強い。

そしてこの感じは前も感じた事があった。

でもまさかな…



「2試合目行くよー!♡」







結局2本とも負けてしまった。この悔しい

気持ちは最近もあった。




「新入生くん。対戦ありがとう。」


彼女は笑顔でお礼を言った。対戦中は凄く

楽しそうに格ゲーをしていた。


「あららー 新入生くん負けちゃったね!

でも私より強いね!」


「いえ、まだまだです。対戦ありがとうございました。」



負けてしまったのでここに入部するしかない。 まぁ興味無い部活に入るよりかは全然

いいと思った。



「僕が負けたので、ここに入部しま…」


「まぁまぁ!新入生くん負けちゃったけど

私も無理やり入部してもらうつもりは無いよ! またほんとに入部したくなったらおいで♪」



「…そうですか。」



僕はそれよりも彼女に聞きたいことが

あった。 大人しく座っている彼女に僕は聞いてみた。



「橘さん」 「…はい、なんですか?」


















「橘さんって、TMっていうプレイヤー

ですか」





彼女はとても驚いた表情をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る