僕はスライムマスター

べっ紅飴

第1話 Eランク召喚士はA級召喚士の夢を見るか1

「うう、う、うああ、ああああああ…」


8月14日、超真夏日。俺はダラダラと汗を書きながら噴水の前で項垂れていた。

熱中症もかくやといった表情で項垂れているのを見た唯一のパーティーメンバーであり超絶世話焼き娘の吉野善子がよしよしと俺の頭を撫でながら水筒の水を無理やり俺に飲ませた。


いつもなら俺は熱中症じゃないとかなんとか彼女の世話焼きに苦言を呈する所だったが、それどころではなかった。


なぜならたった今3ヶ月間コツコツと貯めた金で買った上級魔石10個が最下級魔石以下のゴミクズになったからだ。


「もうおしまいだ……。」


呆然としながら呟いた。まるでこの世に終わりが訪れたかのように陰鬱とした気分だ。


フルフルと視界で緑色の粘液の塊が幾つも揺れているのが見えた。


俺はそのうちの一体を掴み空に向かって投げ飛ばした。


「あああああああああああああああああああ!!」


怒りの雄叫びを上げながら俺はその場にある塊をすべて投げ飛ばした。


「ああ!そんなことしちゃ可愛そうだよ!」


よしこがなにか言っているが俺は無視をした。


「フゥ…フゥ、フウッ……。」


興奮気味になったことで乱れた息を俺はゆっくりと整えると一つの事実を思い出して、おもむろにポケットに手を突っ込んだ。


そこから一つの硬い物体を握りしめそのまま取り出した。


手のひらを開いてソレを見ると虹色に輝く宝石があった。


「まだだ…。そうだ、まだなんだよ…。」


先程潰えたかに思えた命運は、しかし、未だ石の輝きによって煌々と未来を照りつけられていた。


「ククク、フフハハ、クァーハッハッハッ!!!」


「大丈夫?病院行く?」


本気で心配そうな目をしてよしこは言った


「ええい、やかましいわ!このド天然めがッッ!!俺は病気ではないわ!」


「ええっ!?違うの!?頭の病気じゃないの!?」


よしこは目を丸くして驚きの表情だ。


無自覚の口撃に俺は少しだけたじろいだが、すぐに立ち直り腕を広げながら胸を張った。


「残されているんだよ、俺にはな。」


そこには無限の可能性が秘められているような気がした。


「この最後の上級魔石が!!!!!」


声高高に俺は魔石を握りしめて右腕を空に掲げる。


「それ、私があげた誕プレだ!」


ぱたんと両手を合わせたよしこはなんだか嬉しそうだ。


「よく分かったな。魔石なんてみんな同じ形をしてるのに。」


「形は同じだけど、これは私が選んだやつだから分かるんだ」


天然の言うことはよくわからないなと俺は首を傾げた。


「次はどんなスライムかなぁ…」


「やかましいわっ!!」







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