1話:放課後の校庭

「はぁ〜、、、」

雲1つない青空の下。爽やかな景色には似つかわしくない大きなため息が響いた。


俺、薬袋颯人みないはやとはだだっ広い校庭の片隅で、今日何度目かわからないため息をついた。中学2年生にあがってからため息をつくことが増えた気がする。


ちらりと視線を向けると、すぐ右側では、サッカー部・野球部・陸上部が元気よく部活動にはげんでいた。

立派なトラックの左側にはテニスコートが4面揃っていて、少し離れた先には大きな体育館もあって、そこかしこから学生の掛け声が聞こえてくる。


授業もとっくに終わった16時。いろんな部活のいろんな掛け声が混ざって、つい苦虫を噛んだような顔になってしまう。俺も、少し前までは彼らと同じように部活にはげむ学生の1人だったからだ。

陸上部の短距離走のエースとして、中学1年生の頃から全国大会に出場したり、そりゃもう大活躍。モテにモテまくったし、高校からの推薦の話だってきていた。

もう昔の話だけどな。


あの事件が起こってから、急に走れなくなってしまった。別に足を怪我してるわけでもないし、病気になったとかでもない。なんらな365日健康だし、風邪だってここ数年ひいたことない。とかそんなことはどうでもよくて、走れなくなった元エースなんて、周りが許してくれたって自分が許せなかった。


逃げるようにして陸上部を去り、こうやってふらふらと校庭を彷徨うゾンビと化しているのだ。

、、、ってんなわきゃない。走れなくなったのも、部活に行けていないのも本当のことだが、普段から校庭をふらついているわけじゃあない。


今日はたまたま、用事があってここにいるのだ。

そしてその用事のせいで、ため息を連発しているのだ。

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