井上陽水とマコチ
平野 レオ
第1話
「なんちゃーない話し」
最近YouTubeで昔のアーティストのアルバムを聴いているんだけど、凄いよね動画というよりレコードアルバムの音源をアップしているだけだけど僕みたいな歳の人が再生して聴いているから再生回数がめちゃくちゃ多い。動画じゃなくアルバム音源だよ。
それでさ最近は「井上陽水」の「もどり道」「センチメンタル」「断絶」とかのアルバムを聴いて感動している。その頃のレコードは大人になってかなり集めたし、他のアーティストも沢山、持っていたけど、家で聴こうと思ってもレコードプレーヤーが無くて、知り合いの喫茶のマスターの所へドサって持っていってよくかけてもらっていた。
ところが店にもマスターにも少しずつ疎遠になってしまって、もう何十年も経ってしまった。一昨年に常連客の知り合いからマスターが亡くなったと連絡が入りお葬式に出掛けた。僕のことを気にかけてくれていた人だったのでショックは大きかった。
しばらくしてマスターの親族が継いでいる店にも時々、顔を出したりしているが昔にたくさん持っていった僕のレコードの話しはしない。マスターが好きだった曲を天国で聴いてくれているといいなぁ
僕が中学一年の頃は世間ではアイドルのはしりの時で、周りの友達とかは「山口百恵」「森晶子」「桜田淳子」誰がいいなんてよく言っていたが、無理して僕はもっと大人やからそんなアイドルは趣味じゃないよなんて斜に構えていた。四つ違いの兄の影響もあって音楽はフォークなんて格好つけていた時にフォークギターを持って友達の家に集まったことがあった。
その中に「井上陽水」の楽曲を完コピーしていたのが「マコチ」彼の名前は確か「山本 誠」という名前であだ名が「マコチ」と記憶しているが、もう50年位前なので曖昧かも知れない。
その「マコチ」は井上陽水の曲はほとんでギターで弾けていた。ギターイントロの陽水独特な「ゼンマイじかけのカブトムシ」や「桜三月散歩道」とかのイントロは凄かった。その時代はまだレコードプレーヤーを持っている家は少なく(自分ちを基準にしたらダメかも) 一握りの友達が自宅に「てんとう虫プレイヤー」でレコードを聴いていた時代に楽譜もないのに「マコチ」はどうやってあのイントロを覚えたのだろう。彼は別のクラスだったので詳しいことは分からないが、家に兄貴がいて教えてもらったとか音楽一家であったなんてことはないと思う。その当時の男の子はみんな冬でも半ズボンでいつも鼻水垂らして手で拭いていた時代だった。
僕はというと人生のうちに何度もギターを買っては練習するが毎回、挫折して上達は望めなかった。きっと「マコチ」みたいな奴がアーティストになるんだろうと考えていた。
十年位まえに地元の街を車で通っていたら偶然、「マコチ」にあった。細い一方通行の道を彼は逆走していた。僕は車のウィンドウを下げて「マコチここは侵入禁止!警察に捕まる」って叫んでしまった。40年も会っていない同級生にだ。もう少し別の場所であっていたらもっと話しができたのに、それ以来、マコチの姿は見ていないが彼は多分アーティストにはなってないと思う。
マコチに会って井上陽水の曲を弾いてもらいたいなぁ〜。
そんな気持ちでYouTubeで陽水聴いている今日此頃。
井上陽水とマコチ 平野 レオ @hiromi41
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