ファインマン-ダイアグラム

有栖

episode1.「essential elements of information 」

身体を壁に擦り付けるように歩く。

それは正面からの被弾面を減らす役割の他に、ブービートラップを避ける意味もあった。

レベルIIIのプレート入りキャリアは西洋の騎士の鎧のようには、私を護ってくれないものだ。

(レベルIIIのプレートはアサルトライフルの弾を止められる)


マンションと言うにはボロボロになったその建物に足を踏み入れるのは、気高き勇気か蛮勇か。

白痴であると言われればそれまでというものだ。


キャップを被り直し、イヤーマフに電源を入れた。

スリングをかけたM4A1カービンは私によって手を加えられているのは、誰が見ても必然だった。

改造が施されたこのカービンは、PMC(民間軍事会社)から支給されたという刻印を誇らしげに飾っている。

グリップは手に馴染むように削られ、ストックはスケルトンで軽量化を施してある。

サイトはパララックス(視差)が少ないホロサイト、BUIS(バックアップアイアンサイト、サイトが壊れた時の緊急照準器)は自分が最も見やすいのに交換した。

マグウェルグリップ(マガジンを手で覆いかぶせるように使うグリップ)にしたのは、フルオートで撃つことはないだろうと言う考えからか。


お世辞にも可愛いとは言えないが、ピンク色の迷彩テープを巻いているピカティニーレールはグリッピング能力を高め、固く手に刺さる部品を柔らかく包み込んだ。

サイレンサー、またはサプレッサーと呼ばれるマズルデバイスには、カバーをしっかりまくのがこだわりだった。


しかし狭い廊下や室内を探索するのに使う訳にも行かず、背中にまわし腰のホルスターからグロック17を引き抜いて初弾がしっかり送られてることを確認して、マンションへ足を踏み込んだ。


グロック17は表立った改造はしていないが、グリップにはピンクの迷彩テープを巻いて最低限のおめかしをさせた。本人曰く可愛いらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る