第16話 抜ケ出セナイ気持チ

 あの日から1ヶ月が立っていたが私は学校をずっと休んでいた。


行く気にもなれない。

誰とも話したくない。


そう思い、朝から夜まで一日中布団の中にくるまっていた。


たまに家にいる親も、私が学校を休んでいる事すら気にもせず、日々の生活を送っていたことなど知る由もない。


そんな中、美華からは毎日ラインが届いていた。


 「今日はこんな授業があったよー!」

かわいいスタンプがついた明るいメッセージ。


 「何かいるものがあれば買って持っていくからいつでも言ってね」

と優しいメッセージ。


 「唯愛〜!今日マジ学校疲れたぁ〜」

と甘えてくるかわいいメッセージ。


本当に美華は優しかった。

このやりとりの時は、私も学校にいる気分になり、気持ちも楽だった。

だが、それが終わるとやはりあの日の事がすぐに頭によぎる。


圭はあの人と付き合ってたんだ...。


やっぱり大人のゆみ先生が好きなんだ...。


私、本当に彼の事好きだったんだ...。


先生に会いたい...。


だけど先生には彼女がいる...。


もう何も考えたくない...。


なんの涙なのかわからなくなるぐらいに布団の中でたくさんの大粒の涙を流した。


そんなある日、授業が終わり昼休みになる頃、美華からラインがきた。


 「今日就職希望アンケート配られてさぁ。それなんだけど、本人が書かないといけないみたいなんだよね。渡しにいってもいいかな?ついでに美味しいもんも買ってきてあげるよっ!」


まだ彼女にも合わす顔がない私。

彼女が来ることに気は乗らなかったが「わかった」と返事をした。


就職希望アンケート...。


もうそんな時期になっていた。私は何も考えていなかった。

圭に夢中でただただ卒業することだけしか...。


あの動物園の時の言葉をもう一度思い出す私。


あの時は、本当に彼女がいる感じではなさそうだった。

本気の目をして、あの時私に言ってくれてたと思う。


うん...。思う...。


でも自信がない。


でも1つだけ気になることがあった。

それは図書室で彼とあの人がキスをした後。


私が意識を失いかけ倒れそうになったとき、彼は何か怒っていたように私は見えた。


「こんなとこでキスするなよ」が一番言ってそう。

この確率が99%。


あとの1%は私への希望の何か。


その可能性の低い僅かな光が、頭から離れなかったのだ。


あの時彼からキスをしたわけではない。


こう思えば思う程、彼に会いたくなる。


でも会ってまた聞くのが怖い。


私は彼とあの人がキスしてるのを見てしまったのだから。


でも会いたい。


頭の中で、希望の光に手を差し伸べるかどうかで迷っていた。


 


 ”ピーンポーン”


チャイムが鳴った。美華が来た。


気づけばもうこんな時間。

こんなことばかり考えていた私はいつもすぐに時間がたっていた。


部屋を出て階段を降り、ドアを開ける。


すると、ドアを開けた途端、彼女が私に抱きついてきた。


 美華「唯愛~!唯愛~!」

彼女は泣いていた。


相当私の事を心配してくれていたのだろう。

いつも撫でてもらっている私だが、泣いてる彼女の姿を見て、今回は私が頭を撫でる。


 美華「寂しかったよ~。唯愛がいなくて」


 唯愛「ごめんね。そう言ってくれてありがとう」

私は彼女の頭を撫で続けた。嬉しかったから。


しばらくして彼女が泣き止み、私は彼女を自分の部屋に入れた。


この後、まさか二人にあんな事が起きるとは知らずに。

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