伊良湖まなかのだいぶおかしいたび日記(Text Blog)
ワン
第1話 人生最悪な日はいつもそこに
私は人生でいろいろなことに遭遇してきた。
乗り越えようと結果そうでなかろうと、大部分はすっきりとした気持ちで最後を迎えることができた。
高校受験、スポ―ツ、習い事に人間関係。まあ受験は落ちたけれど。
もしかしたらそれは恵まれていたのかもしれない。
今の状態に比べればそんなのすべてミジンコに見える。まだスタートから平等だった。
やはりすべてが平等なんて理想論でしかないのだ...
うなだれながら11月。使わない予定であった厚手のマフラーを巻きながら、名古屋の地下を歩道橋代わりにする。
せっかくの土曜日も、まだ休日前半戦の朝8時であるのにもかかわらずあさっての学校がちらつく。
――――――私が女だったせいだ。
なんて昨日のモノローグの続きもちらつく。そんな考えもちらつく。お母さんごめん。
旅路も登山もなんであれ、基本的に大体のものは下りが長いものだと思う。しかし今日は目的地に上って行っているのにもかかわらず、足が重く10分の道のりも長い。
そう今日は全高校生、母数を絞って高校3年生にとってはもはや日常と化した模試の時間である。そして3週連続の3週目。もはや登山でいうところの縦走、旅路でいえば1泊6日の沖縄旅行。考えるもやる方もどこかがおかしい。
最悪模試単体だったらまあ許せた。最悪さぼればいいし。
でも昨日のことがあったから、今日さぼったらもう何のために存在しているかわからなくなる。
思い立ったら吉日。昨日、日々の疲れを癒すためであるにもかかわらず電車にのって名古屋の果てにある赤池までいったのに。うきうきして夜早く寝たのに。愛想笑いもうまくなってきたのに。
どうして。どうしてだろうか...
――――――訪れた名古屋1のサウナが男性専用だった...
はあ。こりゃぁフェミニストも騒ぐわ。
いままで違う世界に生きていると思っていた人でさえ思い出してしまうぐらい気が落ち込んでしまっている。もしかしたらそんな関係ないことを考えさせて本能が気をまぎわらせてくれてるのかもしれない。
人間の心には防衛機能があると受験科目の倫理でやった気がする。皮肉なことに人生で一番落ち込んでいる時(受験は?)に学問の本質である学習と実践を感じた気がする。なんか急に模試が意味ある気がしていや。
天気も嘲笑っているのか、ひゅーひゅーとつめたい風を私に運ぶ。マフラーを持ってきてよかった。お母さんありがとう。
もうすぐで目的地である塾につく。今日は学校ではなくその塾で模試をやるらしいと先生が言っていた気がする。たぶん。
私の学校は別にかしこい学校ではなく、進学する人がそんなに多いわけではない。だから友達も就職や専門学校へ行く人がおおく、模試はボッチ参戦である。ゆる模試だ。べつに友達がいないから一人なのではない。
そんなことを考えていると、急に来る腹痛のようにまた昨日の悲しさがぶり返してきた。はあ。まあいっか。
勝手に一人で考えて、悔しくなって、気がまぎれて、ちょっとどうでもよくなって。これも防衛機能。なんかマッチポンプ的である。
多少の感情爆発もおさまってきたので、次行くサウナを探しながらゆっくり歩く。サラリーマンも少ない休日の歩道なので自分のペースで歩ける。
そろそろ歩道の色が変わってきたころ、今日の受験会場のあおい塾についた...あれ?やけに金髪や赤髪やチェックTシャツが多い気がする。
何か違和感を感じながら「制服できた私ういてるなー」とか思いながら建物の中に入る。なんか正装なはずなのにコスプレしているみたいだ。
初めて入るあおい塾のエントランスは少し広めできれいで、仮に大学に全落ちして浪人することになったらここいいかもと思いながらチラチラ見ていると、明らかに警備員の方と思われる人が私に懐疑の目を向けながら話しかけてきた。
「塾生書は持っていますか?」
?
別に模試を受けに来ただけだから持っているはずはない。すこし意味が分からない。
「今日模試できたのですけど...」
今日、両親におはようと言って以来初めてしゃべるので、何かが詰まっているように小声になってしまった。
そうすると何かクイズを解いた後のわだかまりが解けたような顔をした警備員さんが一言。
「今日は塾生だけの受験日ですね。明日も一般の方は受験はできないので、もしかしたら受験日を間違えているか学校受験かもしれませんね」
「………………あっ。はい。ゎゕぃ...わかりました。ありがとうございました」
さっきより小声になってしまった。
はあ。なるほど。とりあえずわかったことが3つ。
1つ目は今日は学校が受験会場だったということ。
そして2つ目。私は最初ただJKのコスプレをしていたイタイ浪人生だと最初思われていたらしい。
はあ。はずかし。
最後に3つ目。
今日は昨日よりも人生でもっとも最悪な日かもしれない...ということ。
時計はぜんぜん進まずまだ9時と半分
今日一日は長そうだ。
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