憧憬ブルー

むこねーさん

憧憬ブルー

憧憬しょうけいブルー



「りんごさん、また萌々子ももこにフラれちゃったぁ。」


「クレープだっけ?付き合う付き合う。」


いつものようにヘアメイクのりんごさんに泣きついた。りんごさんは今では何でも相談出来る頼れるお姉さんだ。本当はたったひとりの親友で、メンバーの萌々子に相談したかった。でも萌々子はストイックで、なかなか時間が空いてない。


「萌々ちゃんももうちょっと蒼唯あおいちゃんとコミュニケーション取ってほしいんだけどね!2人でいても仕事の話しかしないじゃない?」


「仕事に真面目なところもかっこいいんだよねぇ。」


萌々子は高校に入ってすぐ意気投合した。私たちには同じ「アイドルになる」という夢があって、カラオケに行っては好きなアイドルソングを歌い、お互い家に帰ったあともおすすめのアイドルの動画を送り合ってはその真似をしていた。私はそんな萌々子にいつしか憧れるようになって、高校を卒業したら上京するという萌々子の後を追いかけるように地元を出た。いくつかのオーディションを一緒に受け、とある事務所から「2人でユニットを組んでみないか」と話を持ちかけられた。萌々子はすごく前のめりで、「私たち2人なら最強だよ、絶対!」そう言ってくれて私も勇気が出たんだ。そうして2人組アイドルユニット「トワイライトミューズ」としてデビューした私たちだったけど、ここ最近になって萌々子とあまり話すタイミングがなくなってしまった。休みの日も一緒に遊びに行くことがなくなってしまい、寂しいなと思いながらも、萌々子の邪魔もしたくなくて、もどかしい日々が続いている。


結局行きたかったカフェはりんごさんに付き合ってもらい、帰宅していつものようにライブ配信を始める。すると、初めて萌々子が「お疲れ様」とコメントをくれた。私はそれが嬉しくて、ちゃんと萌々子の目に私が映っていることが本当に嬉しくて、また前のように萌々子と話したい、その思いが強くなった。


「萌々子!昨日はありがとう!びっくりしたよ。」


「…たまたま配信やってたから。」


「あのさ、今度一緒に配信しない?きっとみんなも喜ぶよ。」


萌々子は大きな瞳で驚いたように私を私を見つめ、数秒考えてこう言った。


「やるならファンのことがっつり喜ばせてやるんだから、あんたもしっかりしてよね!」


そう笑う萌々子は私の憧れた大好きな萌々子だった。



End.

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

憧憬ブルー むこねーさん @muconee

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ