第5章198話:討伐


(でも……)


ふと、私は疑問に思う。


(私だけ、なんで異常がないんだろう?)


岩魔から放たれる精神魔法。


それはニナ、クレアさん、アリスティの3人を襲っている。


なのに私だけに何の影響もないのは、なぜだ?


……。


……あ、そっか。


(……私、無効化する石、持ってたわ)


イグーニドラシェルたちから回収できた戦利品に【精神攻撃無効の石】があった。


私はそれをアイテムバッグに入れて所持している。


だから、精神魔法を食らわないのだ。


私は言った。


「アリスティ……苦しいかもしれませんが、お願いがあります」


「な、なんでしょう?」


「この二人を、押さえていてもらえませんか?」


クレアさん、ニナ、アリスティ全員に異常が発生している今、まともに動けるのは私だけだ。


私があの岩石を倒すしかない。


そのあいだ、アリスティには、クレアさん、ニナの保護を頼みたい。


「承知、しました……!」


アリスティは、クレアさんとニナの首をつかみ、地面に押さえつけた。


私はすぐさま、アイテムバッグからアンチマテリアルライフルを取り出す。


指に【射撃補正の指輪】を装着。


「潰す」


アンチマテリアルライフルを、浮遊する岩石に向けた。


伏せずに、立ったまま撃つ立射の姿勢。


私は、岩魔に向かって発砲する。


「……!!」


ズパァンッ!!


激しい轟音が鳴り響き、アンチマテリアルライフルの弾丸が、岩魔に着弾した。


岩魔が大破する。


砕け散った岩石が、滝つぼへと落下していった。


倒した……?


「……! お嬢様!」


アリスティが背後で言ってきた。


「治りました! 精神異常が解けたようです」


「おお」


見ると、クレアさんとニナの目にも、光が戻っていた。


「あ、あれ……?」


「私、何を……?」


二人がきょろきょろと周囲を見渡し、困惑している。


クレアさんがハッと我に返ったように、聞いてきた。


「せ、精霊様は!?」


「破壊しました」


「ええ!?」


「あの岩石は、精霊ではなく、おそらく魔物です。ニナも、クレアさんも、あの精霊に精神魔法をかけられていたんですよ。二人とも、滝つぼに引きずり込まれそうになっていました」


「そ、そんな……」


クレアさんが目を見開く。


しかし心当たりがあるのか、クレアさんは両腕を抱いて、戦慄していた。


ニナが頭を下げて礼を言ってきた。


「えっと、エリーヌ様が助けてくださったんですよね。その、ありがとうございました!」


「いえ、どういたしまして」


「お嬢様……此度は、私も助けられました。不甲斐ない従者で、申し訳ありません」


「そんなことはありません。ニナとクレアさんを押さえてもらって助かりました」


私はそう応じる。


クレアさんが言ってきた。


「私のことも、助けてくれたのよね? ありがとう……あなたがいなければ、死んでいたかもしれないわ」


「いえいえ」


と、私は相槌を打った。


最後に、念のため、本当に岩魔を撃破できたのか【探知の指輪】で調べてみる。


結果。


(うん、倒せたようだね)


滝つぼから魔物の反応はナシ。


岩魔は、無事に討伐できたことが確認できた。

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