第拾肆話 魔法の前にはだいたいの事が無駄になる件

お風呂から出てリシュナちゃんとマオちゃんの髪をドライヤーを交互に当てて程よく乾かしていくと、風を受けてかリシュナちゃんもマオちゃんも気持ちよさそうで、見ているだけで微笑ましくなる。


昨夜や昼間はちゃんと乾かしてあげられなかったけど、これだけボリュームがあるとやはりドライヤーでちゃんと乾かさないと傷んじゃうわよね・・・でも、今までそんなドライヤーで乾燥なんかしていなそうなのに傷んでいる様子がないのよね?



「ねぇ、リシュナちゃん。髪の毛があまり傷んでいる感じがないけど、お手入れとかどうしていたの?」



「お手入れですか?

 何もしてないですよ?」



「ふ~ん、何でかしら?

 でも、ちゃんと綺麗だしこれからも維持できるようにお手入れをしたいわよね」



「カナデさん、ワタシの髪はどうですか?」



「マオちゃんの髪も綺麗で、健康そうよ。

 全然傷んでいる感じがしないわ」



「それは良かったです。これからも大事にします」



「そうね。せっかく綺麗なんだから大事にしたいわよね。

 マオちゃん、風は熱くない?」



「はい、熱くないです」



「じゃあ、このくらいの温度で当てるわね。

 もし熱かったらすぐに言ってね」



「はい」



「しかし、灼熱でも耐える魔王がそんなぬるい風で熱いのそうじゃないのとは奇妙な感覚です」



「魔女、カナデさんがせっかく乾かしてくれているところに水を注す様なことを言うのはやめてください」



「たしかに無粋でしたね。私も自分の魔法で乾かせるけど、奏に乾かしてもらいたくて使っていないですし」



「え?

 あたし、無駄なことやってる?」



「「そんなことないです!!」」



またも出てきた異口同音・・・このふたり、なんだかんだ言ってけっこう息が合うのよね。



「ワタシはカナデさんに乾かしてもらうと気持ちもふわふわして幸せな気持ちになります」



「たしかに。私も奏に乾かしてもらうと気持ちが良いです」



「まぁ、それなら良いけど・・・あたしもふたりの髪を乾かしながら梳くの気持ちが良いしね。

 すごく柔らかいのにツヤツヤで極上のシルクみたいでさわり心地が最高なのよね」



そう言いながらマオちゃんの髪を頬ずりした。



「ふわぁぁぁぁ。カナデさん!いけません!それ以上はワタシの精神が保ちません!」



「ごめんなさいね。でも、本当にずっと頬ずりしていたいくらい滑らかよ」



「・・・はい」



マオちゃんは恥ずかしがって、声も小さくなってしまったけど、それもまたかわいい!



「奏、そろそろ私の番では?」



「そうね。マオちゃん、ごめんなさいね。ちょっと待っててね」



「はい・・・」



まだ、声が小さいマオちゃん。



「奏!早く!」



「はいはい」



髪を梳き始めるとすぐに「私の髪も極上のシルクみたいですか?」なんて聞いてきて、ほんと可愛いし癒やされる。昨日までじゃ考えられない状況になっているなぁと思いながらドライヤーで髪を乾かし続けてた。

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