第肆話 スティックシュガー3g100本入りは特売で148円

昨夜は寝たのが遅かったけど、まだ休日にしては早い時間にリシュナちゃんが起きてきたので、あたしも起こされてしまった・・・


勇者パーティーとして常に危険な場所に居続けていたから微かな気配で目が覚めて起きてしまったのではないか?・・・なーんて思ったけど、違った。



かなで・・・トイレ行きたい・・・」



「そう言えば、昨日から一度も行っていないわね。こっちよ」



リシュナちゃんをトイレへ案内した。



「ここへ座って、そのままこの水があるところに排泄物を出しちゃって大丈夫だから。

 その後の使い方については説明書を用意するから、トイレをしながら待ってて」



ささっと取扱説明書をまとめている棚からトイレのものを取り出してトイレへ戻った。



「もうトイレ終わった?」



「うむ」



「じゃあ、説明書を渡すために少しだけドアを開けるわよ」



「うむ」



トイレのドアを説明書を通せるくらいだけ開けてその隙間から説明書を差し込んだ。



「この本みたいなのがトイレの説明書だから。

 たぶん、読めばわかると思うけど理解らなかったら聞いてちょうだい」



そうすると中から物音がしてきた。



「なんじゃ!?このお湯が出てきておしりに当たってくるのは!?」



「それはシャワートイレと言って、排泄して汚れたところをきれいにするためのお湯が出る機能が付いたトイレよ」



「こんなものがあるとはすごいのう」



「たしかにすごいと思うけど、この国だとだいたいどこのご家庭や施設にも付いている一般的なものよ」



「こんな物までどこにでもあるのか!?

 何じゃこの国は!?

 妾の世界なら魔王にも勝てそうな文明の発達具合じゃな!」



「そうかしら?

 あたしが物心着いた時には既に普及していたしピンとこないわね。

 そう言えば、言い忘れていたのだけど、座った状態から左前に丸まって束ねてある柔らかい紙があるでしょ?」



「これのことじゃな。たしかに柔らかいな」



「それを適当な長さに引き伸ばしてから手で千切って、それをお尻とか濡れたところを拭って、そのまま排泄を済ませた水のところに捨てていいから。

 リシュナちゃんはまだわからないだろうから適当にやってみて。後でちゃんとしたやり方を教えるから」



「わかったのじゃ・・・これはたしかに濡れたところを拭き取れて良いのう」



「拭き終わった?」



「拭き終わったぞ」



「そうしたら、左側から後ろの方を振り向いてみて」



「振り向いたぞ」



「背中の白い物体からちょこんと出てる銀色のレバーがあるのが見えるかな?」



「これじゃな?

 あったぞ」



「そのレバーを手前に引っ張ってみて」



そう告げてから3秒くらいしたら【ジャー】と言う水洗トイレの洗浄音が聞こえてきた。



「おおっ、今出したものや紙が水に流されていきおったぞ!」



「リシュナちゃん、服は着た?」



「ちょっと待っておれ・・・


 ・・・服を着たぞ」



「じゃあ、ドアを開けるわよ」



それからトイレットペーパーについての交換方法など今後すぐに起こると想定できることを説明して、あたしもトイレを済ませた。




~~~~~~~~~~


本音を言えば昨日遅くまで残業していたので勘弁して欲しい。


とは言え、気になることもあるし、やらないといけないこともあるから、まだ眠いけど頑張って動きますか!



「眠気覚ましにコーヒーをれようと思うのだけど、リシュナちゃんはコーヒーってわかる?」



「わからぬ。どういったものじゃ?」



「苦味が美味しいと思わせる飲み物で、眠気覚ましにもなる飲み物・・・かな?

 正直、この国でも好き嫌いが分かれているわね」



「そうか。でも、この国の人間は贅沢な者が多いということじゃし、一回飲んでみたくはある。

 妾の分も用意してもらって良いか?」



「そうね。たしかに飲んだ方が判断しやすいわよね。

 じゃあ、二人分淹れるからちょっと待っててね」



あたしはコーヒーはだいたいブラックで飲むけど、砂糖やミルクは一応あるから何とかなるわよね。


ちゃっちゃと2人分のコーヒーを淹れてカップをテーブルへ並べた。



「例によって特別に高級なものではないから、そこは理解して飲んでね」



「苦っ。なんじゃこれは?

 こんなの生まれて初めて味わった苦味じゃぞ」



「苦いか。じゃあ、この砂糖で苦味を中和してみようか」



スティック砂糖を取り出して、端を切ったところでリシュナちゃんに声を掛けられた。



「砂糖?これがか?」



「これは包み紙で、中に入っているのが砂糖よ。何か気になる?」



とりあえず、カップに入れずスプーンの上に砂糖を出してみた。



「この真っ白な粒が砂糖なのか?」



「そうよ。リシュナちゃんの世界にはなかった?」



「こんな白い砂糖はなかったぞ」



「そっか。たしかに日本でも白い砂糖が普及したのは結構だったかも。

 まぁ、普通にありふれたものだけど甘いのは間違いないから・・・って」



説明している間にリシュナちゃんが口を近付けて砂糖を出したスプーンをパクリと食べてしまった。



「なんじゃなんじゃなんじゃなんじゃ!

 こんなに甘い砂糖は初めてじゃぞ!」



「そうなのね。それも・・・」



「どうせこの国ではありふれたものなのじゃろう?」



「流石にわかってきたみたいね。その通りよ。

 ちなみに、その小さい袋1つ分だと、この都市の最低賃金で言えば5秒くらいの労働で買える計算になるかしらね?」



「秒!じゃとっ!!

 こんなに甘いものがたったの5秒働けば買えるのか!この国はっ!

 もう、妾はこの国に永住でも構わんな」

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