第6話

 その夜もふたりはホテルで愛しあった。

その時だけは左の顔の事を忘れられた。

僕と彼女は、ひとつになり快感を味わっている。

彼女は僕の左の顔に舌を這わせる、僕はゾクゾクする。

そして涙する。

美咲は「きあら泣かないで…」

僕は彼女の中に入っていく、ふたりは果てていた。


 「私はきあらが好きなの、だから結婚したいの」彼女は真剣な顔で言った。

「僕も美咲が好きだよ、でも美咲の両親が許さないだろう。顔がこんなで財力もない男を誰が認める?」

「ふたりで一緒に暮らせばいいわ、お金は大丈夫よ私はこれでもプロなんだから」

「それは駆け落ちなの?」きあらが聞いた。

「そうかもしれないわね」

「美咲どうなってもいいの?今までこの顔のお陰でロクな目に合ってない、美咲が苦労する姿なんて見たくないよ」

「きあら、あなたは美しいわ私はあなた以外の人なんて考えられないわ、だから結婚して」

こんなに嬉しい話なのに僕はためらっていた。

でも僕は「分かったよ美咲一緒になろう、結婚しよう」と言っていた。


美咲はその日のうちに荷物をまとめて家を出た。

僕も工場を辞めた。

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