第23話 御船手代官の憂鬱
嵐が明けた早朝、三方ヶ浦の代官所に、異国の船が
岩場に乗り上げて動けなくなっているとの知らせが入った。
ここは東北の小藩【宮手津藩の】海に面している人口4千人
の漁村である。東回り廻船の航路に入ってはいるが他の
港と違って特に目立った産品が無いので千石船が
入港することなど年に数度も無い。
「よりによって何でこの村の沖に異国の船が……」
代官の緒方半兵衛は嘆息した。
兼ねる【三方ヶ浦代官所】は近隣の漁村の安全と船の事故
とか、異国からの船の動向を見張る仕事を義務付けられていた。
「直ちにその船に向かう!小舟を用意せよ!漁師共に伝えよ、
遭難している者を発見したら直ちに救出せよ。
死人を見つけたら丁重に陸に運べ。船から流出したらしい
物品はひとつ残らず回収せよ。
この難破船救出劇は藩から幕府、幕府から長崎のアメリス王国の
商人へ、更に国交の無かったアメリス王国に伝えられて
アメリス王国の国王の心に深い感謝の念を刻んだ。
「もしも我が国で他国の船が難破した場合は普通に
略奪したり、乗組員を皆殺しにして船諸共略奪
していたに違いない。
緒方半兵衛と言う男、なんと人道的な侍魂を持つ
ザ、サムライと言うべき男であろうか。
日本幕府へアメリス王国から感謝状が届き、
国交樹立に至り、さらに緒方半兵衛にアメリス王国への
招待状が届いたのは事件から5年後の事だった。
そろそろ代官職を引退して息子に職を引き継ごうと思っていた
半兵衛は
「何でこの年で、言葉も碌に通じない異国へ
行かなければならんのか……」
片道2年もかかる船旅を思うと半兵衛は憂鬱だった。
「あの時は片言でも日本語が通じる彼の国の乗組員がいたから
助かったが今度は……
あっちは片言、こっちはズーズー弁、よくもまあ意思疎通が
出来たもんだ……。
思い出し笑いをする半兵衛であった。
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