第7話 マジデルカ魔法学園の奇跡

 マジデルカ王国国立魔法学園のスタジアム。

 今日は年に一度の学園祭が行われていた。学園生の学習成果を

 父母や王国の魔法団団長、国王様に披露する晴れ舞台である。

 お偉方の目に留まれば卒業後の就職、縁談に優位になる。

 世界でも1,2を争う実力校として名高いここの学園祭には

 他国からも沢山の観客が訪れていた。



 国王の左隣には御妃様ではなく髪の毛が銀色のオールバック

 仙人のような銀色の口髭と顎髭。纏うは銀色のフード付きの

 ロングローブ。背丈ほどの杖を持つ男がいた。


 名前を【ジュンキルド】という。人呼んで【銀の仙人】。

 世界一の魔法使いだ。

 年齢は本人曰く1030歳だという。

 800年前にこの国と魔王軍との戦争で魔王を倒して

 この国を救った英雄として語り継がれている英雄だ。


「ジユンキルド様如何ですかな今年の学園生は。

 気になる園生はおりますかな?」

 国王が訊く。

「まあまあ例年通りの出来と言ったところかのう」


 それを聞いて国王の右側に居た学園長のバレフはがっかりする。

 ジュンキルドに見込まれた生徒が居れば学園長のバレフの

 株も上がるのだがここ数年パッとした生徒は現れていない。


(今年もダメだったか……)



 そんな時だった。スタジアムの上空に巨大なドラゴンが

 現れた。

 グヲオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

 国王の方に向かってブレスを吐こうと口を開けて降下して

 来た。


「防御結界!囲み結界」

 ジュンキルドが立ち上がって叫ぶと、手にした杖が銀色に

 光った。

 ドラゴンが火炎ブレスを吐いた途端にブレスが跳ね返り

 ドラゴン自身が火炎を浴びた。

 ギヤアアアアアアアアアーーーーーーーーーアアアアア


 ドラゴンが上空に逃げようとしたが結界にぶつかって

 落ちてきた。

「囲み結界縮小!!」

 ドラゴンはそのまま地上に落下した。

 ズドドドドーーーーン!!!

 下にいた生徒たちは先生達の転移魔法で安全な場所に

 避難出来ていた。


 全長100メートルに達するフアイヤードラゴンだった。


 結界に囲まれて身動き出来ずにいる。


「どうかねこのドラゴンを生徒たちに討伐経験をさせては?」

「「えええ!!!」」

「大丈夫この儂がそばに付きっきりで指導するぞ」

「しかし……」

 嫌なら構わん。せっかくの実戦経験が出来るチャンスを

 みすみす棒に振るような弱虫魔法学園なら他国の観客の

 魔法学校にでも声を掛けるだけじゃ」

「うーーーーんーーーーー」


「生徒たちに希望者がいないか確かめたらどうかな」

 国王陛下の助言で意を決した学園長は諸先生に生徒の

 意志を確認させた。

 結果、少しは自信がある3年生が30人。2年生が10人

 流石に1年生は2人だけだったが計42人が参加する

 ことになった。


「ふむそれだけいれば上出来だ。20人も集まれば

 いいかと、思っておった」


 ジュンキルドは満足気にうなずいてグランドに浮遊魔法

 で降り立った。


「諸君。儂はジュンキルドという。SSSSクラスの魔法使い

 じゃ。君たちの勇気ある選択に拍手を贈ろう。この

 フアイヤードラゴンを君たち全員で倒すと一人当たり

 120000の経験値が得られる。

 一気にレベルアップ出来るはずじゃ。

 パーテイを組んでもらう。誰がとどめを刺そうとも

 経験値はパーテイ全員に平等に入るはずじゃ。

 魔力回復ポーションは儂が提供するから頑張って

 討伐を達成して欲しい」


 パーテイを組み終えてドラゴン討伐実習が始まった。

 結界の外からの攻撃は通るが、ドラゴンからの

 攻撃は通らない。

 次第にドラゴンの生気が薄れ、寄ってたかって弱い者苛めを

 しているように見えてくる。


「ようし、そこまでじゃ。とどめを刺してみたいものは

 おるかの?剣か槍を使える者がいないか?」

 名乗りを上げたのは

 3年生の槍使いの男の子と1年生の女の子の剣士だった。

 ようし、君たちにこれを授けようミスリルの槍とミスリルの

 剣じゃ」

 これでドラゴンの逆鱗げきりんを攻撃して剝がしてそこに

 刃を突き刺すが良い。さあ結界を一瞬解除するぞ。さあいけ!!」


 少年は浮遊魔法でドラゴンの逆鱗の有る高さまで上昇して

逆鱗をはがした。

 少女は結界魔法で階段状の、足場を作り逆鱗がはがされた後の肉に剣を

突き刺した。

 ギュルルルルーーーーー

 ドラゴンは絶命した。その瞬間、攻撃に参加していた

 生徒たちに力が漲った。


 後にこの出来事は【マジデルカ魔法学園の奇跡】と呼ばれ

 多くの優秀な人材を送り出した。

 参加した生徒たちの中にSSSクラスの魔法剣士になった者がいた。


 結界魔法の有用性に気付いて修練に励んだお陰だと言った。

 その女性は生涯一本のミスリル剣を愛用していたと伝えられる。

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