第31話 決闘がワンサイドゲームだった件

 教室の真ん中にやんちゃなイキリ野郎と僕が取り残され、委員長じゃなくて渚さんは腕を組み、仲本君が開始を告げるのを今か今かと待っている。


 いつの間にか30人程が集まっており、事情を知らない者は何だ?何だ?と周りの者に聞いている。


「じゃあ背中を床に付けた方が負けな。武器は使うなよ。制限は3分。ストップウォッチを用意して・・・よし!お互い見合って!それじゃあ始め!」


 僕はあまりの展開に固まっていて動けなかった。


 ドカッ!バキッ!ドゴッ!


 相手が殴ってきたけど、なんか遅い。

 しかし、動けなくて顔へパンチがまともに入る。


 しかし・・・痛みが少ない。


 あれ?そうか彼は拳を痛めていて、無理にその拳を僕に当てたから痛くないのか。


 でも拳がかなり痛いのか擦っているな。

 フェイントのつもりが当たってしまったんだな。

 避けなくてゴメン・・・


「ゴムみてぇに硬ぇな!くそっ!これでも喰らえ!」


 うわっ!回し蹴りだ!流石に痛いだろうな・・・

 恐怖から全く動けなかった。

 しかし、やはり痛くないからきっと脚を痛めているのだろう。

 弁慶の泣き所を必死に押さえながら頭突きをして来たけど、これも痛くないな。


 頭を押さえて唸っているから助け起こそうと近付いたけど、急に立ち上がったので僕の体にもろ当たったんだ。


 すると彼は吹き飛ぶと床を転がり、後ろにあるロッカーに当たり止まったが、背中を床に付ける形で倒れており、呆然となりながら天井を見上げていた。


「これまで!勝者トーマス!」


 皆唖然としていた。


「貴方やっぱり強いのね。仕方がないから貴方とパーティーを組んであげるわ。宜しくね」


 僕はつい差し出された手を握ってしまった。


「あら?断ってくるかと思ったら組んでくれるのね。斗升君、改めて宜しくね。私の事はユリアって呼びなさい!」


「ちょっと待ってください」


 僕は倒れている人がいたので助け起こそうとしたら、急に起きて化け物!とか言いながら教室の外へ慌てて出ていった。


「間に合えば良いね」


「何に?」


「おしっこしに行ったんでしょ?慌てていたから切羽詰まっているんだなあって。ってユリアさん、なんだっけ?」


「さん付けかぁ。まあ今は良いわ。入学式の後って時間有るかしら?」


 周りの者は面白い物を見られた事に興奮しつつ、机を戻している。


「今日は特に予定は無いかな。強いて言えばカーヴァントの装備品を買おうと思ったけど、別に今日じゃなくても良いや」


「じゃあ私と一緒にギルドに行くわよ」


「良いけど何しに?」


「貴方ねぇ。パーティー登録をする為に決まっているでしょ!」


「パーティー登録?」


「嘘でしょ!?何でそんな事も知らないのよぉ!」


 僕は何故か怒られたのと、ユリアさんとパーティーを組む事になったらしい。

 この前逃げろと警告されたのに無視したから僕が死んだと思っており、死の責任が自分達にあると責めてしまい、それについて怒っているんだ!


 これはまずい。

 この人有力者だ!

 クラスのトップを張れる人を怒らしてはいけない。

 面倒見の良い人で、きっと僕がこの先無謀な事をしないように手綱を握り、クラスから死者を出さないようにしようとしてくれているんだ。

 だから大人しく彼女のパーティーに入り、指示を仰ごう!

 それが良い!


 モブらしく大人しくクラス上位の取り巻きになるのが吉だ!

 うん、きっとそうだ!

 取り敢えず何か話さないとまずいな・・・


「あっ!そう言えばこの前ってユリアさんはパーティーを組んでいなかった?」


「君も組んでいるわよね?あの女の人は?」


 質問を質問で返されてしまった。


「愛姉の事かな?1度だけだと思うけど、引退したのに付き添ってくれたんだ。ギルド職員なんだよ」


「お姉さんなんだ。私と同じね。最初というのも有り、3年生の姉のパーティーに連れて行って貰ったのよ」


「よく分からないけど、僕とパーティーを何で組もうとするの?ユリアさんだったらもっと強い人と組めるよね?」


 彼女ははぁとため息を付いた。


「何よ!私なんかとパーティーを組むのが嫌なの?私は同級生でパーティーを組みたいのよ!」


 やっぱりそうだ。

 クラスを手中にいれるべく派閥の構築に動き始めたんだ。


 まだ試験をクリアした人が少ないから僕のようなモブでも取り込みたいんだな。

 いかん!青筋が・・・

 綺麗な人の青筋はちょっとそそるけど、そんな場合ではない。


「わ、分かりました。ただ、ギルドにて僕の担当者の愛姉の許可が必要なので、説得に協力して貰っても良い?」


「貴方、担当者ってまさか専任?」


「そう言っていた気がする」


「嘘でしょ!?って貴方の場合あり得るわね!分かったわ。その人を紹介しなさいよ!」


 そんな時にまたもや戸が開き、どう見ても教師の1人が入ってきたのだった。

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