第18話 ゼッチィーニは混乱していた

 僕がラビリンスの中に入る時の姿は、バトルスーツにコンバットナイフを身に付ける形だ。

 愛姉はカーヴァントであるビキニアーマーの上下を装着し、その上にズボンとシャツ、厚手の皮服を着ている。


 愛姉の格好は流石にビキニアーマーのみではなく、中々格好良い。

 男前だ!

 美人の戦闘服は中々良いです。


 僕の服は車の中に置いてきているんだ。

 愛姉はラビリンスに入る姿で運転していた。


 そしてラビリンスに入ると警戒しつつ、カードを1枚取り出す。


「レイラ来い!」


 すると別れた時の姿をしたレイラが目の前に現れた。

 愛姉の前でカッコつけたくてつい来いなんて言っちゃった。

 僕の心の中にも中学2年生が住まっているようだ・・・


「ツイーナ出て来なさい!」


 愛姉はゴブリンナイトを顕現させた。

 装備は小型の盾にショートソード、革鎧を着ている。


 このラビリンスは探索者1人のカーヴァントのコスト制限は14だ。


「私を守りなさい!」


 ツイーナはゴブゴブと返事をし、愛姉の横に立つ。


「レイラ、昨日ぶり。これから他のカーヴァントも出すから警戒を宜しく。それとここには他の人間もいるから、襲われない限り手を出さないように。大事な事だから2度言うけど、くれぐれも他の人間やそのカーヴァントに対し、こちらから先に攻撃や挑発をしない。攻撃されたら反撃を許す旨をこれから召喚するカーヴァントにはレイラから話して欲しいな」


「かしこまりました」


 さて、ゼッチィーニがプルルンさんになったのを見たいけど、愛姉に嫌われるから我慢だ。


「レイラ、これからゼッチィーニを出す。でも君のように人間に近くなり、背丈も大きくなったはずなんだ。で、革鎧がはち切れんばかりだから召喚したら胸を隠し、これを着させてあげて」


 トレーナーと短パンを出すとレイラに渡す。

 まあ、紐で縛るタイプだから大丈夫だろう。


「かしこまりました」


「出でよゼッチィーニ!」


 更に患っているように唱えてゼッチィーニを召喚した。


 一応直ぐに背中を向けたけど、バチン!と何かが壊れる音がした。

 まあ間違いなく革鎧が小さ過ぎて壊れたんだろうけど・・・


「なんじゃこりゃあぁ!」


 ちょっとだみ声の入った女の声がした。


「御主人様の服です。こうなる事を予測されており、着るようにとの事ですが1人で着られますか?」


「バカにすんな!服位・・・あれ?体が大きいぞ!何で?」


 レイラは唖然としているゼッチィーニを万歳させ、服を着させたり先の注意点を話してくれた。


「御主人様。ゼッチィーニが服を着ました」


「ありがとう。レイラ、ゼッチィーニ、説明は後にするからレイラはまずこれを身に着けて。ゼッチィーニは周りを警戒してね。それと愛姉、悪いけどレイラがビキニアーマーを装着するのを手伝って貰えない?」


「分かったわ。やはり斗升君は紳士ね」


 愛姉がレイラに装備をしている間僕はゼッチィーニをまじまじと見ていた。

 やはりたわわな2つの果実の自己主張が激しい。


「何だ御主人様はおっぱいが見たいのか?」


 プルルン!


 ゼッチィーニが服を捲くり、暴力的な果実を見せてきた。

 人のそれと変わらないな。


 僕は慌てて服を戻した。


「ゼッチィーニ、人前で胸や裸を晒したら駄目だよ」


「見たかったんじゃないのか?そのまま子作りしても良いんだぜ!その為のおっぱいだろ?」


 頭が痛い。


「そういう事は好きな人同士でやるもんだよ」


「何言ってんだい?男は人間の女を見ると犯し孕ませ、ゴブリンの女は大人になったら直ぐに孕まされるんだぜ!アタイももうすぐ大人だったはずなんだけど、何で人に近くなり、大人の姿になってんだ?それに御主人様の事は好きだぜ!あの頭を撫で撫でするのは気持ち良いんだぜ!!」


 ゼッチィーニは心と体のバランスが取れておらず、女の子が大人の体になった感じだ。


「わー!レイラちゃんの胸って綺麗ね!羨ましいわ!ほら、装備できたわ!斗升君からのプレゼントよ。大事にされているわね!」


「ありがとうございます。お姉様?で良かったのでしょうか?」


「私の事は愛莉って呼んで!斗升君のアドバイザーよ」


「畏まりました。では愛莉様と呼ばせて頂きます」


「ちょっと斗升君、レイラちゃんもそうだけど、何で人にそっくりなゴブリンのカーヴァントを持っているのよ?聞いた事ないわよ。それにゼッチィーニって言った?その子スタートキットにあったウォーリアーと同じ名前よね?」


 そんなふうに詰められていると他の人も入ってきた。


「愛姉、ここは人目があるから、誰も来ないような所で話したいんだ」


「そうね。人に聞かれない方が良さそうね。こっちに行くわよ」


「ちょっと待ってください。ナイトも出しますから。それとレイラとゼッチィーニ、今は他の人の前で自分達がゴブリンだとか口にしないでね」


 僕が深刻そうに話すと2人?2匹?は頷く。


「出でよモーモン」


 すると愛姉が出したのと似ているが別個体のゴブリンナイトが出てきた。


 例えばこのナイトだと種族がゴブリンで、ジョブがナイト。

 通常種族名ジョブ名を合わせて呼ぶからゴブリンナイトと呼ばれるんだ。

 レイラだとゴブリンクイーン。

 調べたけどクイーンは出てこなかった。

 ゼッチィーニのタンクもそうなんだ。 

 ついでにヒーラーも・・・不思議だな。

  

「モーモンは僕の護衛を頼むよ。レイラはゼッチィーニを助けてあげて。ゼッチィーニは剣とこの盾を使って今の体に慣れるのを優先して露払いを頼むよ」


「取り敢えず分かったよ。レイラ様はアタイのサポートを頼むよ!。慣れるのに少し時間が欲しいもんさ」


 ゼッチィーニは口調は乱暴だけど、上下関係はしっかりしているのかな?

 服がムチムチでボディーラインがかなり出ていて、男物の服を着ているのは卑猥な気さえする。

 カバンにある他の服も似たようなものかな。


 帰りに愛姉にゼッチィーニの装備品も見繕って貰わないと。

 取り敢えず愛姉の指示される方に進んでいたが、先頭を歩くレイラが手を挙げて歩みを止め、警告を発した。


「右斜め前方から2体来ます」


 僕にとっての風曲の森ラビリンス初戦闘が今始まらんとしていた。

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