第2話 カードの事

 中学時代は当たり障りのない平々凡々とした日々を過ごし、その他の十把一絡げと括られるような目立たない存在、それが僕だ。

 友達もそれなりにいるけど、同じようにパッとしない同類だ。

 自分を変えなきゃ!

 出来ればモテなくとも彼女を作りたいな!

 そんな事を思うモブポジションのどこにでもいそうな高校生がいた。


 僕の名は淺沼 斗升(あさぬま とます)

 身長165cmともう少し大きくなりたいが、平均的かな。


 あだ名はトーマス。

 機関車トーマスからトーマスと呼ばれているんだ。

 地元の高校に通う高校1年生だ。


 父はいない。

 2歳下の妹が母のお腹にいる時に、かの有名な通称0号と共にラビリンスに入り、0号を含め帰ってこなかった。

 ラビリンスに起こった異変への対処の為に入り異変を止めたものの、全員行方不明となった。

 その後救助隊が送られるも遺品すら落ちておらず、道中捨てた回復薬の容器が落ちていたり、拾いきれなかった魔石がその戦闘を物語っていたようだ。


 僕の父は0号の上官で当時陸曹長、0号は1等陸士で父が小隊を率いていたそうだ。

 小隊は当時の最強ではなかったが、トップ10に入り強者とされた。


 しかし、僕には秘密がある。

 父は死んだとされていて葬儀もされたそうだ。

 しかし父が死んではいないと言う事だ。

 高校に入学するにあたり中学を卒業した時に父の部屋を片付けたのだが、そこからカードが出てきたのだ。


 未使用のカードが中心だったが父が登録しているカードも出て来た。

 それは傷を負った為にカードに戻している分だった。


 行方不明になる前のラビリンスでの戦利品等を押入れにまとめて押し込んでいた。

 行方不明になったそのラビリンスへ急ぎ向かう事になり、帰宅後に整理するつもりだったようだ。


 それとは別に溢れてきた低ランクのカードが何枚かあった。

 また、剣や胸当て等の装備品もガレージから出て来た。


 カーヴァントは傷を負ってもカードに戻れば時間と共に回復する。

 そして使役された事のあるカードは主が死ぬと写真がモノクロになる。


 しかし、このカードはカラーだった。

 メモもあり、このカードの魔物、つまりカーヴァントがどのような傷をいつ負ったか書かれており、次の遠征には置いておかないとと有った。

 カードとラビリンスには格(ランク)があり、1から10まである。


 ラビリンスには冒険者と言うか、探索者が挑むのだが、自力で確保したカードを伴い入るのが一般的だ。

 但し、探索者に登録する時にスタートセットを渡される。

 同種のランク1のカードが10枚とランダムでランク2のカードが1枚と、簡単なカードホルダーだ。


 最低でもランク2のカードを持っていないと話にならない。


 各ラビリンスにはコスト制限がある。

 各ランクのカード1枚あたりのコスト(CC)とラビリンスのコスト制限(LC)はこうだ。



ランク CD LC  カード価値

1   1  10    1万円 

2   2  14    2万円

3   4  20    4万円

4   6  28   10万円

5   8  38   30万円 

6  12  56  100万円

7  16  86  500万円 

8  20 120 2000万円

9  24 158 5000万円

10 28 200   算定不可


 コストの理屈は分からないが調べた結果で、価格は探索者ギルドでの一般的な買い取り価格の倍が販売価格だ。

 勿論種類により変わるが、高ランクカードは1番査定の低いカードでの参考額だ。


 カードの枚数制限はないが、コスト制限に気を付けねばならない。

 1番低いランクのランク1のラビリンスに持っていけるのはランク5のカードが最大だ。

 それはランク6のカードのコストが12だからだ。


 金に物を言わせてもランクの高いカードは使えない。


 探索者になっても入場制限があり、そのランク以上のカードを持っている事と、入るラビリンスの制限を1つ撤廃するのには元のランクの踏破か2階層へ進出している必要がある。


 ラビリンスは命の危険があるが、稼ぎが良い。


 僕の母はパートに出ていて、何とかそれで高校に行けそうだ。

 父の年金があるが、かなり切り詰めた生活が必要だ。


 お金は何とかなるが、僕は父が生きていると分かるとビデオや写真でしか知らないが、父を探して会ってみたかった。

 ビデオに映る父は僕を溺愛していたのだと分かった。


 ただ、行方不明になる前の分のカードは今の僕には使えない。

 ランク7や8のカードだったからだ。


 ラビリンス関連の物は自由にしても良いと母からは言われている。

 僕は多分高校で適性検査からラビリンスに入る義務を負うから今の段階で探索者となる選択をした。


 だが、父が自衛隊の任務中に得たカードを売るのは今のままだと出来ない。

 返還要求が来るかもだからだ。

 僕が稼いだようにする必要があるから、売れないとなった。

 ラビリンスによる災害が発生するとコスト制限が無くなるので、妹と母も1枚は父の残した高ランクカードを持つ事にした。

 勿論内緒でだ。


 今は春休み。

 僕は低ランクのカードを集めて、血を垂らそうとしていた。

 春休みに家の中を探していたというか、父の荷物を整理していた所、新たにカードが何枚か出てきたのだ。

 出てきたカードはランク2が1枚と、ランク1が10枚だった。


 奇しくもラビリンスに最初に入る者が買うと言うか、登録時に渡されるスタートセットの構成分と同じだ。


 ランク1であるゴブリン10枚とおまけ?のランク2だ。

 ランク2はランダムでパックされており、開けるまで分からない。


 最初に入るのはランク1のラビリンスなので、コスト制限以上のカードを渡される事になる。


 探索者には高校生以上がなれる。

 そこで4月の2日に探索者ギルドに行った。


 ギルドの窓口は基本的に市役所等の建物にあり、異世界ファンタジー物の居酒屋併設で、更に世紀末風のモヒカンの奴らが出入りしているのとは違う。


 まるで銀行のカウンターや、古本屋やリサイクルショップの買い取りカウンター的な感じで、新規登録時はローカウンターでの対応だ。


 理屈はよく分からないけれども、ラビリンスに入った者の子、通称二世はカードとのシンクロ率が高いとかで、基本的に高校〜大学をストレートで卒業する歳までの間は探索者になる事が義務付けられる。

 同じ種類のカードの場合、シンクロ率が高い程強いとされている。


 また、高校にて全員検査される。

 数字が高いから義務を負わされるといった事は無いのだが、探索者となる事を推奨されている。


 国としても己を知って貰い、ラビリンスに入って魔物を駆除する者の数を増やしたいのだ。


 そんな中僕は自ら探索者へ登録する事になった。




後書き失礼します。

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