Vちゃんねる!~ヴァンパイア系動画投稿者、爆誕!~

工藤 流優空

吸血鬼なんて、聞いてません。

「お母さん助けてえええぇぇぇっ!!!!」

 佐伯千鶴、今日で人生十三年目に突入したところです。

 そんな人生十三年目初日にして、恐ろしいことが起きました。

「私! 男! 男になってる!!!」

 リビングに駆け込むと、お母さんはのんきに鼻歌を歌いながら、夜ご飯の準備中。

 顔を上げて私を見たお母さんは、すぐに視線を外して言いました。

「千鶴ちゃんは、男になる能力ってことねぇ」

「どうしたらいいの!? 明日から学校始まるのに!!!」

 私の言葉に、お母さんは首をかしげます。

「よかったじゃない。これから美男美女盛りだくさんの学校に入学するわけだし」

 その言葉に、今度は私が首をひねる番でした。

 私が進学する地元の市立の中学校は、とくにそういった印象はないので。

「あの学校って、イケメン、多いんだっけ……?」

 そう呟くと、お母さんがうっとりした表情で言います。

「あったり前でしょ。吸血鬼は、美男美女が多いのよ」

 キュウケツキ。きゅうけつき。……ん?

 お母さん、今、なんて言いましたかね……?

「お母さん、今、なんて言った……?」

 私の言葉をかき消すように、大きな声が響きました。

「お誕生日おめでとう、千鶴。今日からお前も吸血鬼だな!」

 扉を壊さんばかりの勢いで開けて入ってきたお父さんの言葉。

 それは、お母さんの言った言葉が聞き間違いではなかったことを示していました。

「私が、吸血鬼……」

「そう、お前は由緒ある佐伯家の吸血鬼だ」

「そうよ。あなたは吸血鬼で、素敵なイケメン吸血鬼と恋をするの」

 きょとんとした顔をした二人を見て、ああ夢ならいいのに、と思いました。

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