ハルちゃんの帰省、到着

 ハルちゃんの帰省兼小旅行当日になった。何度も何度も電車を乗り換え、最後には小さなバスに乗って――


「とうちゃーく! おばーちゃーん、来たよー!!」


「ハルちゃんは元気だねー」

「私、もうヘトヘトなのに」

「うぅぅ、おしりが痛いよぅ~」


 合計10時間ほどかけて目的地に到着した。

 ほとんど座っていられたとはいえ、もうおしりが痛くて痛くて……。けれどハルちゃんはまだまだ元気いっぱいのようで、おばあちゃんの下へと駆けて行った。その元気をちょっと分けて欲しい。


「ま、待ってぇ……」


 なお、一番辛そうにしているのはハルちゃんのお母さん。道中も「この年になると、体力が……」って嘆いてたわね。元気出るかなーって思ってポーションを渡してみたけど、気休め程度にしかならなかったわ。


「春陽~。会いたかったわ~」


「ハルもおばあちゃんに会いたかったよ!」


「そう言ってくれて、おばあちゃん感激よ~。あ、そちらが春陽のお友達ね。いつも春陽がお世話になってます」


「初めまして、姫香と申します。こちらこそ、ハルちゃんにはいつも助けられていて」「初めまして、凛華と申します」「初めまして、結月です」


 ハルちゃんのおばあちゃんはとっても健康そうな方ね。ハルちゃんの元気さはおばあちゃんから隔世遺伝したのかなあ、なんて思った。


 ……それにしても、なんだかずいぶんと久しぶりにみんなの本名を聞いた気がするわね。念のために言っておくとヒメが姫香、ハルちゃんが春陽、リンちゃんが凛華、ユズちゃんが結月ね。


「長旅でヘトヘトでしょう~。自分の家だと思ってゆっくり寛いでね」


「「「ありがとうございます、お邪魔します」」」


 おばあちゃんの家はとっても広い古民家だった。庭も含めたら300坪くらいあるのかな?


「すっごく広いですね」

「すご、庭にせせらぎが流れてる」

「あ、池にコイが泳いでるよ~」


「でしょー? 寝殿造りみたいだよね!」


「寝殿造りって……。ウチはそんなに広くないよ。向こうの建物は納屋だし、住めるスペースに限ったらそんなに広くはないよ」


 ハルちゃんが言ったように、寝殿造りを彷彿とさせるおもむきがあるわね。ところで本家の寝殿造りってどれくらいの大きさなのかしら? えっ2000坪もあるの?! これはちょっと勝てないわね。

「マイホーム」になら作れるかもしれないけど。いつか作って貴族ごっことかしたら面白いかも。


 なんて考えていると、おばあちゃんが「ああ、そうだった」と私たちを引き留めた。


「ちょうどおやつの時間でしょ? 今朝丁度アマウリが取れたのよ~。みんな食べる?」


「うん、食べたい!」


「じゃあ、切ってくるわね~」


 おばあちゃんは去って行った。……アマウリ?


「ごめん、ハルちゃん。アマウリってなあに?」

「名前から察するに甘い瓜? スイカみたいなものかな?」

「もしかしてメロン?」


「あーそうだよね。東京じゃあみないもんね! えーっと、えーっと。甘さ控えめなメロンだよ!」

「マクワウリとかマッカとかって呼ぶ地域もあるわね。知らない?」


 ハルちゃんのお母さんが補足説明してくれたけど……やっぱり分からないわね。


「「「???」」」


「あはは、食べたらわかるよ! とっても美味しいんだ、ハルの大好物!」



 程なくしておばあちゃんがアマウリを持ってきてくれた。

 へえ、これが……。メロンと違って皮は黄色くてスベスベ、中身は真っ白なのね。気になるお味は……。パクリ。


「どう、美味しい?」


「おお、ほんとに『甘さ控えめなメロン』だね。美味しいよ」

「へえ、こんなフルーツがあるんだ。いや、野菜?」

「美味しいね~!」


 食べてみて分かった。これは確かに『甘さ控えめなメロン』としか形容できないわね。

 面白い体験が出来たらいいな~って思ってきたけど、まさかこんなにも早く知らない物に出会えるなんて。幸先が良いわね!





 その後はおばあちゃんとお話しタイム。学校でのハルちゃんについて、ダンジョンでのハルちゃんについてお話しした。


「春陽が楽しそうで良かったよ~。そうかい、ハルはアイドルとしてみんなを元気づけてるんだね」


「うん! ハルの元気をみんなにおすそ分けって感じ!」

「そうだ、おばあちゃんにも見て貰おうよ。ハルちゃんの活躍を!」


「見せてくれるのかい? 是非見たいわ~」


「ヒメちゃんナイスアイデア! おばあちゃん見ててね! それじゃあへーんしん!」

「それじゃあ私も……っと!」「変身!」「そーれ♪」


「おお~。みんな可愛いねえ~」


 手をパチパチと叩くおばあちゃん。あはは、まだまだここからだよー!!


「選曲はハルちゃんにお任せするね」

「ありがと、それじゃあやっぱり『それは笑顔のまつり囃子ばやし』で! えーっとそれじゃあ、〈ロボマネージャー召喚〉〈マイク〉〈励ましのレイズ歌声ソング〉」


 ハルちゃんの準備が整うのを待って……せーのっ!


「「「「〈私の歌を聴いて!〉」」」」






◆ あとがき ◆


 いつも本作を読んでいただき、本当にありがとうございます。作者の青羽です。


 ここ最近、更新頻度が下がってしまい誠に申し訳ございません。実は最近「もっと百合についての理解を深めたい」という思いに駆られていまして、色々と勉強している次第でございます。

 その一環として『ダンジョンアイドル』とは少し違った形の百合を書いてみようと思い、新作を書いてみました。一言で言うと、ハイスペック主人公が周りの子を落としていくストーリーです。


 20話程で完結予定の短い作品ですので、もしよかったら目を通して頂けましたら幸いです。


『メカ系魔法少女の百合を堪能する為に私は整備士になりました!』

URL: https://kakuyomu.jp/works/16818093076063074421


 宣伝失礼しました。今後も本作をどうぞよろしくお願いいたします。

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