Mission104
ソルティエ公国の公子ポルト、公女マリンとファルーダン王家との間の顔合わせが終わる。一度部屋に案内して落ち着いた後、歓迎の晩餐会を行う事になっている。
公子公女の相手は、ギルソンとアリスが務める事になっている。
「では、お二人を部屋まで案内致します。ついてきて下さいませ」
ギルソンは執事風の挨拶をして、ポルトとマリンの二人の案内を始める。二人揃って警戒心を露わにしているものの、おとなしくギルソンたちの後ろについて来ている。
「さあ、こちらがお二人に用意した部屋です。もちろん、ポルト公子殿下とマリン公女殿下とで部屋は別々に分けてありますので、ご安心下さい」
二人に向けて、にこりと微笑むギルソン。ポルトは警戒し続けているものの、マリンの方は少し警戒を解いたようだった。やはりイケメンの微笑みに対して女性は弱いようである。
ポルトはギルソン、マリンはアリスが対応して部屋の中へと案内する。
扉の中は余っている客室を改装したものではあるものの、ファルーダンでいうところの王族を迎えるとあって、それなりの格式を持った部屋へと飾り立ててある。失礼があってはいけないからだ。
部屋の中に入ったポルトとマリンは、それは大きな口を開けて驚いていた。
「ポルト公子殿下とマリン公女殿下の使用人たちですが、隣の部屋に詰めてもらうようにしてあります。それと、最初のうちは不安でしょうから、遠慮なくボクやアリスに相談下さい。しっかりと対応させて頂きます」
ギルソンはポルトに伝えると、笑顔でにっこりとしていた。
ポルトからすればうさん臭い笑顔なのかも知れないが、どういうわけか安心させられてしまうのだった。どうも納得のいかないポルトである。
一方の隣の部屋のマリンの方もアリスから同じ説明を受けていた。
アリスからの説明が終わると、マリンはアリスに質問をしていた。
「あの……」
「はい、何でしょうか?」
マリンの声に反応するアリス。
「あなたは人形なのですよね?」
マリンの質問に首を傾げてしまうアリス。どうしてそれを確認してくるのだろうかと、この時のアリスは理解できなかった。
「ええ、私はオートマタ。魔法石の力で動く自律人形です」
「魔法石……。このファルーダン王国だけで産出されるという魔法と呼ばれる力を秘めた石の事ですね」
「はい、左様でございます」
確認するように質問を投げかけていくマリン。アリスはそれに淡々と答えていた。
アリスの中身は大往生したおばあちゃんなのではあるが、オートマタを演じているうちにすっかりと淡々とした喋り方が馴染んでしまったようである。さすがに7年という月日は長いのである。
「……ほかに質問はございませんか?」
アリスは淡々とマリンに問い掛ける。
「あ、いえ……、そうだ」
「はい、何でしょうか」
締めようかとしたマリンだったが、もう一つ尋ねてみる事にする。
「学園とはどのような場所なのでしょうか」
思い出したかのようにマリンから飛んできた質問は、学園についてだった。
一応ポルトとマリンは揃って来年から学園に通う事になっている。つまり、ギルソンとは同級生になるというわけだ。
少なくともマリンの方は学園に対して興味を持っているようだ。
「そうですね。それに関しては現役で通っていらっしゃる方々にお聞きするのが一番かと存じます。この後の晩餐会でご紹介致しますので、回答はその時にさせて頂きたく存じます」
「分かりました」
アリスの答えに、マリンは一応納得したようだった。
そして、夜を迎えて行われ晩餐会では、二人とも出された料理にとても驚いていた、
今回の晩餐会に出された料理は、アリスが前世で見たり聞いたり作ったりした料理をベースにして再現してある。さすがに同じものが用意できなかったものがあるので、完全再現とはいかなかったものの、その再現度はかなり高かった。そのおかげか結構会話が弾んだものである。
現在学園に通っているのは、四男アワードとマスカード帝国のイスヴァンの二人だ。
マリンからの質問があったので、それに加えて次女のリリアンも近くに配置する事になったのだった。これなら思う存分学園について話を聞く事ができるだろう。年も近いからなおさらと思われる。
「ボクも来年から学園に通う事になりますのでね、先輩方からいろいろお聞き致しましょうか」
笑顔で仕切るギルソンである。
そんなこんなで、イスヴァンやリリアンから学園についての話をいろいろと聞かされる事となったポルトとマリンであった。ポルトはあまり興味がなさそうだったが、マリンはアリスに対して質問をしていたとあってか、実に対照的に真剣に二人の話に聞き入っていたようだった
。
ちなみにアワードは二人の勢いのせいで発言する事ができなかった模様。ここでも引っ込み思案なところが出てしまったようだった。
こうして、ソルティエ公国から公子公女を迎えた初日は、これといった問題も起きる事なく、無事に終了させる事が出来たのだった。
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