俺は吸血鬼、うどんが美味い

あたしは厨房で仕込みをしている。

今日は何だかうどんの気分なので、お店のメニューはうどんにする事にした。


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大鍋に水を入れ、乾燥した昆布と煮干しを適量入れておく。

およそ30分ほど水に浸しておき、十分昆布がふやけたら、弱火で火をつけ鍋を温める。

味見をしながら、出汁の濃さを調整していく。

今回は雑味の入った出汁をとるので、クツクツと煮込みながら、味見をしつつ、濃さを調整していく。

昆布と煮干しを取り出し、椎茸の出汁を加え一度ボコボコと沸騰させる。

白ネギを少々加え、シンプルに薄口醤油・塩で味を整えていく。

次にうどんに乗せるトッピングを用意する。

かまぼこ・きざみ海苔・青ネギ・ワカメ、それぞれ準備しておく。

麺は、手打ちの讃岐うどんときしめんの二種類用意しておく。

これで下準備は完了である。


ーーーーー


俺はヴァンパイア、今日はご飯が美味いと評判のお店に向かっている。

ヴァンパイアは光に弱いと言われているが、俺は日焼け止めをたっぷり塗っているから、何も問題ない。


「クックック、やっと着いたぜ。ここが噂の店か。なんだかいい匂いがしているぜ」


俺はお店の扉を開け、中へと入る。


「いらっしゃいませ〜お一人様ですか?」

「俺はヴァンパイア、俺は孤独な存在だ!」

「かしこまりました、こちらへどうぞ。マスタ〜吸血鬼1名様で〜す」

「いらっしゃいませ~」


俺は人間のウエイトレスに案内されると、席へと座る。

俺は意味もなくクルッと椅子を一回転させると、メニューを手にとった。

そしてメニューにはこう書かれていた。

[讃岐うどんか、きしめんのどっちか]


「クックック、俺はヴァンパイア。二頭追う者二頭とも得る!」

「ご注意はお決まりでしょうか〜?」


人間のウエイトレスは、水を持ってきてくれたあと、メニューを聞いてくれる。


「讃岐うどんときしめんのハーフ&ハーフで」

「ハーフ&ハーフですね、トッピングはいかがなさいますか?」

「俺は……全てを手に入れてみせる!!」

「かしこまりました、マスタ〜讃岐うどんときしめんのハーフ&ハーフ、トッピング全乗せで〜す」

「あいよ〜」


俺はここから厨房が見えるので、作るところを見ることにした。


ーーーーー


あたしは沸騰している大きな鍋に、讃岐うどんときしめんをそれぞれ入れる。

多少硬めにした状態で、鍋からうどんを取り出す。

しっかりと湯切りし、二種類の麺を、2つの器にそれぞれ盛る。

きざみ海苔以外のトッピングを、バランス良く盛り付け、熱々のスープを入れる。最後に刻みのりをまぶすと、完成である。


ーーーーー


「ミーリン、出来たから持っていって〜」

「は〜い、わかりました〜」


俺は待っていた、こっちに料理を運んで来てくれるのをな!


「お待たせしました〜、お熱いのでお気をつけくださ〜い」


目の前に置かれた料理から、食欲をそそる匂いがただよっている。

俺は箸を手にとると、まずは讃岐うどんから頂く。


「ば…バカな!?なんだこのシンフォニーは!??」


うどんをすすった瞬間、出汁が絡んでくる。スープは綺麗な琥珀こはく色をしているのに、しっかりとダシの味がしやがる。具とスープの調和も半端じゃなねえぞ!

次に俺はきしめんを頂く。くぅう、なんてツルっとしてやがるんだ。口に入れた途端、これじゃあまるで、ニンニクを克服した気持ちじゃねえか……


「なんて美味いんだ……これが……料理…」


俺は感動したあまり、全部食べたあと思わずコウモリとなってしまった。店を出ると日焼け止めの効果がなくならないうちに、家に帰る。


「俺の気持ち……伝わったかな…」


ーーーーー


「マスタ〜さっきのお客さん、真っ赤なトマトを置いて行きましたよ〜」

「ああ〜、ジュースにでもしようかな」


今日もまた1人、笑顔で帰って行った。

それにしても、最近の日焼け止めって、すごいのね〜。



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