(二)-3
しかし、一人はいた。真っ赤に染まった湯船の中で逆さまになり、クワガタの二本の角のように湯船から足が二本出していた。それが日向なのか咲来なのかはすぐにはわからなかったが、脚のすね毛から、その持ち主は日向であると思われた。
「犬神家の一族かよ……」
信雄はそう呟かずにはいられなかった。
しかし信雄の後ろの二人はその光景を見て、赤く染まった湯船とその中で動かなくなっている人間と思しき物体を、それが誰かはともかく、事切れた人間であると認識したらしく、すぐに悲鳴が二つ上がった。
そして蘭子は悲鳴を上げた直後、信雄の腕から自らの腕をほどくとペンションの方へ走っていってしまった。
信雄は左右を見回した。近くには誰もいなかった。この声の主が日向なら、咲来がどこかにいるはずだった。
(続く)
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