毒親転生~後にラスボスになる運命の娘を溺愛したら異常すぎるほど好かれてしまった~

下垣

第0話 正史

 魔女イーリス。この世界に突如現れた悪しき存在。ある王国を滅ぼし、そこの女王となり替わり周辺の国を次々と侵略していく。このままでは世界が彼女の手に堕ちてしまう。それをさせまいと勇者たちが立ち上がった。


 勇者たちは冒険の末に、ついに魔女イーリスの居城に辿り着くことができた。その居城に入る勇者たち。彼らが目にしたものは……魔女イーリスの記憶だった。


 居城を進むごとに魔女イーリスの記憶の映像が再現されていく。優しい父親と母親に囲まれて幸せそうに暮らす幼少期のイーリス。しかし、ある日を境に、母親が出ていき、父親がイーリスに暴力を振るうようになった。


 最初の内は傷に残らない程度の暴力に済まされていたが、イーリスが成長すると共に段々と暴力は過激なものになっていく。


 そして、最終的には父親はイーリスを奴隷商へと売り飛ばした。そこからの記憶は悲惨以外のなにものでもない。父親によって傷だらけにされたイーリスの商品価値はほとんどなかった。だからこそ、タチの悪い買い手に捕まり……


 そこでイーリスは憎しみのを力に変えて魔女として覚醒した。


 魔女イーリスが目覚めたのは彼女の家庭環境のせいだった。しかし、それでも勇者は魔女イーリスに同情せずに彼女に剣を向けた。


 「お前がしていることは、お前が受けたこと以上に酷いことなんだ」とイーリスを斬りつけた。


 「恵まれた境遇のお前に何が分かる!」とイーリスは抵抗するも、勇者の力には敵わずに巨悪である魔女イーリスは打ち滅ぼされた。


 こうして、世界に平和は戻った。勇者たちは祀り上げられて後世の歴史まで伝わる英雄となった。しかし、イーリスは……絶対的な巨悪として歴史書に描かれた。彼女の幼少期に受けた虐待の数々の実態は闇へと葬られた。


 果たして、悪いのはイーリスだけだったのか……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る