第2話 魔法を使ってみる

 今日から魔法の訓練をする。


「よーっし! 魔力器官を起こすぞ」


「起こす?」


「そうだ。まだクーヤからは魔力を感じない。ってことは、魔力器官が寝ているんだ。ちょっと刺激するから、起きたら魔力が溢れ出す。そしたら体内を巡らせるんだ。いいな?」


「んー。はい! やってみます!」


「よしっ!」


 ダンテさんはそう言うと俺の後ろに回り腰の辺りに手を当てる。


「行くぞぉー」


「はい!」


 ドンッとへその下あたりに衝撃が来る。

 丹田だっけ?

 なんか体の中が震えてる気がするなぁ。


ドクンッ!


 身体が脈動した。


ブワァァァァァァ


 魔力が溢れ出した。


 うっわ!

 これキツイ!

 っていうか、魔力なんてあったのかよ!?

 身体が言うこと聞かない!


「うわっ! こりゃ予想外だ! おい! 身体の中を巡るようにイメージしろ!」


 身体の中?

 血管ってことか?

 魔力の心臓が丹田にあってそこから全身に巡って戻ってくる。

 脳で明確に血管をイメージした。

 すると、スッと魔力が収まった。


「おぉー。上手いじゃねぇか。しかも魔力が半端ねぇな! こりゃ魔法の教えがいがあるぞ!?」


「そうなんですか? ちょっと実感がわかなくて……」


「身体強化やってみるか? っていうか身体にめぐらせてるから出来てるわ。あそこの岩殴ってみ?」


「これですか?」


 コンッと叩くと。


バガァァァァァンンッッッ


 木っ端微塵になった。


「……お前、魔力すげぇから身体強化するとそうなるんだな。こっち来んなよ? 怖ぇから」


 いやいや、引かないでくださいよ。

 そりゃ、俺だってビビってるんすから。

 こんなに力出るなんて思ってないですもん。


「クーヤ、丹田に魔力しまえ。怖くて近づけねぇ」


「えぇと……」


 魔力がそのまま、丹田に溜まって留まるように。イメージイメージ。


 スッと魔力が小さくなった。


「よし。いいな。魔法を使う時は少しだけ出すんだぞ?」


「わかりました」


「じゃあ、次は魔法を使うが、詠唱は分かるか?」


「わかりません」


「なら、丁度いい。詠唱なんぞいらん。イメージしろ。身体強化はさっきやったから、回復魔法だな」


 そう言うと腕を切りつけてきた。


「いてっ!」


「その傷を回復させてみろイメージだ。治るイメージをしろ」


 元に戻れぇぇ。

 くっつけぇぇ。


「ぐぬぬぬ」


「ハッハッハッ! お前、回復魔法壊滅的だわ」


 えぇ?

 回復できないの?


「ほら」


 手から光が出てきて傷を治す。


「あっ。治った」


「うーむ。クーヤ、自分の属性、知ってるか?」


「いえ。知りません」


 すると、ダンテさんが家の中から水晶を持ってきた。これで、属性が分かるらしい。


「これ、もってみ?」


「はい」


 水晶を持つと中で反応があった。緑のモヤモヤが水晶全体に広がる。


「ハッハッハッ! クーヤ、残念だったな。その反応は空気属性だ。風属性の派生系でハズレと言われている。身体鍛えるしかねぇか?」

 

「あの……実は……空気で出来ることって沢山あって……そういう資料を読み漁った事があるんです」


「なるほど、イメージしてみろ。なんか出来るか?」


 イメージ。

 空気を固める。

 そして、その後ろには空気を圧縮させ続けて……爆発させる。


 パァンッ


 狙った岩には小さな穴が貫通していた。


「お、おい……今何した?」


「固めた空気を飛ばしただけですけど?」


「ハッハッハッ! クーヤ! お前すげぇわ。こりゃ上にいけるわ! ハッハッハッ!」


「えっ? 状況を理解してないんですが……」


「これ、魔物や人にうったらどうなると思う?」


「えっと……」


「死ぬぞ」


「えっ?」


「これは、殺傷能力が高い。すげぇ強ぇ」


 バシバシッと肩を叩いてくる。


「俺が鍛えれば、クーヤは世界で一番強くなれる。いいか? 俺についてこいよ?」


「はい! そのつもりです!」


「ならいい。おれは魔法に関してはあまり分からねぇ。自分で出来るか?」


「はい! やってみます!」


 ダンテさんは家の中に入っていった。

 また酒を飲んだくれるんだろう。


 魔法って楽しいな。

 イメージで何でもできる。


 空気を固められたということは。

 目の前に四角い空気の塊をイメージし、階段にしてみる。


 自分にだけだろうか?

 空気がどういう流れで流れているか分かる。

 だから、階段が出来ていることを確信した。


 登ってみると、雲に近い所まで行けた。

 そこは酸素が薄いから酸素が来るように口に酸素のマスクを作った。


 最早、なんでもありであった。

 思い描いたことができる。

 しかも、空気の属性。

 最高だった。

 空気の知識を最大限発揮出来るわけだから。


 パッと空気を解放する。

 浮遊感があり、重力に引かれるまま落ちていく。


 あぁぁぁ!

 めっちゃ気持ちぃぃぃぃ!


「エアクッション」


 空気を固めて柔らかい空気にする。


フヨーーン


 地面に着地する。


 うん。

 いい感じだ。


 試行錯誤するの楽しいな。

 空気を圧縮して解放したら。


「ショックウェーブ」


ブゥゥゥゥゥゥンバカァァァン


 衝撃波が放たれて岩を破壊する。

 

 うん。

 俺の知識は使える。

 これは、イメージでなんでも出来るぞ。


 指定の場所の空気を圧縮するようにイメージして、限界以上に圧縮すると。


ドカァァァァンッッ


 爆発が起きた。

 うん。

 思った通りだ。


「おいおい! さっきからデカい音させて何やってんだ!?」


「あっ。はい。空気を圧縮させて爆発させたり、圧縮してから解放して衝撃波を発生させたりしてました」


「はぁぁぁ。クーヤ、すげぇな。なんでそれでハズレの属性なんて言われてんだろうな? たしか……空気のように周りから感じにくくする位のことしか出来ない属性って言われてるんだぜ?」


「それは……空気に関する知識がないからでしょう。俺が思うに、風属性の最上位の属性だと思います。なぜなら……」


 空気を固定し、右から左に高速で動かすと。


ブゥゥゥン


 風が起きる。


「風の原理というのは、空気を動かすことで起こるんですよ。ということは、空気は風の原初であると言うことなんです」


「なんだかよくわかんねぇけどよぉ。クーヤが凄いだけなんじゃねぇのか? 他のやつは空気のようになることしか出来なかったらしいぞ?」


「それは……確かに知識がなかったらそうかもしれません」


「だな。まぁ、クーヤがすげぇ事はわかった。だったら、ハズレ属性なんて関係ねぇ。強くなれよ」


「はい! まだまだこの属性を研究します!」


「その他に出来そうなこととかあるのか?」


「思いつくのは、空気を震わせて周りに放つ。そして、跳ね返ってくる振動で物の配置が分かるとか……」


「おぉ。夜の仕事の時にはいいな。それ。お前索敵もできるってことか。使えるな」


「あとは……かなり粘り強くて固い剣が必要ですけど剣の周りの空気を振動させて剣を振動させるんです。そうすると力を入れなくても大体の物が切れます」


「おい。マジか?」


「はい。多分肉とかは力を入れずにスパッと行くと思います」


「はあぁぁ。試してみてぇな」


「手頃な剣、ありますか?」


「あぁ」


 ダンテさんはおもむろに立ち上がり家から何の変哲もない剣を持ってくる。


 剣を持ち、近くにあった岩を……岩何個あんの?

 岩の上に剣を構える。


「バイブレーション」


 すると、ブゥゥゥンと剣が振動しだした。

 下に下ろす。


ズバァッ


 岩が真っ二つになる。


「マジかよぉぉぉ!」


 ダンテさんが驚いたあたりで。


バリィィィンッ


 剣が粉々になる。


「すみません。やっぱりもちませんでしたね」


「クーヤ、凄まじいな。後は、体術と剣術……早くやりたくなるな。楽しみだ」


 魔法を使えるなんて楽しいなぁ。

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