転移したらハズレ属性で無双する

ゆる弥

第1話 どこだ?

「あぁー。このフォルム、揚力の働きが良いんだよなぁ」


 この男は飛行機が好きすぎてなぜ飛行機は飛ぶのか。論文を色々と読み漁り、空気力学を趣味で勉強していた。

 よわいなんと十三歳。


 あおい 空也くうやはこの日、祖父の家に遊びに行く為に飛行機で北海道へ旅立つのだ。


 ルンルンで荷物を抱えて飛行機に乗りこむ。

 いざ、離陸。

 初めての浮遊感に身体が変かんじがする。


 少したった頃だろうか、積乱雲に囲まれたのだった。

 逃げ道がなく突入するしか無かった飛行機は大きく揺れ、雷に撃たれてジェットエンジンに直撃し、煙をあげる。


 機内は騒がしくなり上からボンッと酸素マスクがとび出てきた。


 大きな轟音がなったかと思ったら空に投げ出されていた。地面が迫る中。最後に飛行機に乗れて良かったとそう思っていた。


 いつまで待っても衝撃は来ない。

 ん?

 俺は死んだんじゃないのか?


 目を開けると、知らない森であった。


 森をウロウロしていると、木の実を見つけた。


「これ食べれんのかなぁ」


 パクッと食べてみる。


「んー! これは美味しいわ」


 しかし、それでお腹が満たされる訳はなく。


「あー。お腹すいたなぁ。暗くなってきたし寝床を探すかな」


 少し歩き回るとポッカリと穴の空いた洞窟を見つけた。

 その穴に入り丸まって寝る。


 次の日は雨が降っていた。

 その日は動かないことにしたのだが、まる二日まともに食べていない。


 だんだん意識が薄れてきて、目の前が真っ暗になった。


◇◆◇


 あぁ。

 温かいなぁ。


 パチッと目を開く。

 また知らない天井だ。

 えっ? どこ?


「おっ! 目ェ覚めたかぁ?」


「あっ。ここは……?」


「あぁ。雨やどりしに洞窟に入ったら倒れてたからよぉ。家に連れてきたってわけよぉ」


「すみません。ありがとうございます」


「子供が気にすんな。なんであそこに一人でいた?」


「実は……迷いまして……」


「訳ありか……」


 その人は少し考えるように俯いた。

 バッと顔を上げると。


「俺の弟子になるか?」


「弟子……ですか?」


「あぁ。こう見えてプラチナ級冒険者なんだ。名はダンテ。昔はパーティー組んでたが、今は一人だ。金はあるから気にすんな」


 その申し出を受け、少し考える。


 俺は何にもできないし、助けて貰えるなら願ってもない事だ。


「……お願いします! 出来ることは何でもします!」


「おーし! 俺はちっと厳しいが逃げんなよ?」


「はい!」


「じゃあ、まずは、これ食え」


 出されたのはスープとパンであった。


 一口スープを飲むと優しい味で温かい。

 パンを一口食べるとパターの香りが鼻から抜ける。


「美味しい」


「そうか? よかった。おかわりもあるからな」


「はい!」


 ガツガツと食べてしまい二回おかわりしたのであった。


 お腹いっぱいになったらまた眠気が襲ってきた。

 瞼が重い。


「今日は寝ろ。また明日話そう」


「はぃ……」


 その日は泥のように眠った。


◇◆◇


 目を覚まし、ベッドから下りると部屋の全容が把握できた。

 物が散乱している。


 うん。汚いね。

 この部屋を綺麗にしよう。


 床のものを拾い整理し始める。

 捨てるものと使いそうなものに分ける。


 一時間かかっただろうか。

 スッキリした。


 部屋を出ると、リビングであったが……。


「ここも汚いんだ……」


 ソファーにダンテさんが寝ている。


「ダンテさーん? 部屋片付けますよぉ?」


「……んー? んー」


 起きる気配はない。


 ゴミと酒瓶がチラホラ。

 捨てよう。


 せっせと片付けることにしたのであった。

 拾ってもらった恩がある。

 少しでも返していかないと。


 ある程度片付けが終わると、朝食を適当に作り始めた。

 キッチンの使い方はよく分かんないけど、つまみをひねるんだろ?


 実は大気中の魔素を変換して火をつける装置なったのだが、それを知る由もなく。使い方は同じなので使えたのであった。


 ボウッと火をつけると卵と干し肉を焼いてベーコンエッグのようなものを作る。


 家では自分でも料理をしてご飯を作っていたことがある。


 後ろで何かが動く音がする。


「おぉ? 飯作ってんのか? すまねーな」


「食べられますか?」


「おぉ。貰うぜ」


 テーブルにパンとベーコンエッグをのせる。

 この世界の主食はパンだ。


「美味そうじゃねぇか」


「いただきます」


 手を合わせて習慣になった言葉を発する。


「なんだ? そりゃ?」


「えぇと、私達の国ではご飯を食べる時は食材と作ってくれた人にいただきますと祈るんです」


「ほぉ。初めて聞いたぜ。まぁ、いい事だな! いただくぜ!」


 パクッと食べて頷いた。


「うん。うめぇ。お前これから家事担当な。俺はなぁ片付けるっつうのも出来ねぇし、スープしか基本作れねぇんだ」


「いいですよ。それも弟子の務めでしょうし」


「はっ! ガキが言うじゃねぇか。っつうかお前、ホントにガキか?」


「はい。けど、親が厳しかったのでこうなったんでしょう」


「お前そういやぁ名前は?」


「葵 空也……クーヤです」


「そうか。まぁ、追求はしねぇ。んー。今日からは……魔力の使い方を教える。分かんねぇんだろ?」


「魔法ですか!?」


「あぁ。なんだ? そんな驚くことか?」


「えっ!? はい。魔法使ったことないんで」


「そうか。明日から教えてやる。そうだ、まずは身体を作るのに一年かける。食事はタンパク質中心だ。成長することに重点をおけ。基礎体力を付けるのは来年からにするぞ」


「わかりました。魔法が使えるんですね!」


「あぁ。だれにでもこの世界の人間には魔力器官がある。そこを使えるようにする」


 それって、俺にもあるのかな?

 

「はい! 頑張ります!」


 これからがクーヤの成長の軌跡となる。

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