6:変身
センベンテルン軍・ミッドスケア詰所外、訓練用広場。
少し開けたその場所にミスティは居た。
「っすね。」
「まぁ、何も聞かずにつれてきた訳だし、そういう事もあんだろ。」
そのミスティを見つめるセクター隊長とトリー戦闘員。
「「まさかメダリオンの使い方すら知らないとは……。」」
「えへ?」
笑って銀のメダリオンを見せるミスティに二人は説明していく。
「そもそもメダリオンは『魔法の道具化』を目標に作られたものっす。先天魔法は個人の資質に左右される以上、それを主軸に置いた組織での運用なんてできないものっすから魔法の才能を持っている人間全員が同じ魔法を使えるようにってコンセプトで生まれた技術っす。」
「ま、ようは魔法って力を便利に使おうぜ?って話だな。そうして生まれたのが『開発魔法』。メダリオン持ちはみんな使える便利な魔法ってわけだ。」
「選任騎士のは銀ですけど何か違いはあるんですか?」
「ある。軍人に支給されるこの鉄のメダリオンは全部同じ性能になってるが、選任騎士と12貴席が持ってる銀や金のメダリオンは魔法の元になる“魔力”を貯蓄する機能とそれを利用する特別な魔法、さらには魔法そのものの出力を強化する機能が付いている。」
「普段からメダリオンに魔力が貯蓄されていて、その分大量の魔力を扱えるから魔法の出力が高くて、さらに統一規格の鉄とちがって貴席のオーダーメイドっすから特殊な開発魔法も使えるようになっているっす。」
銀のメダリオン。
選任騎士に与えられるこれが、どこの誰から渡されたのかミスティは知らない。
12貴席に知り合いなんていないし、いつの間にか首に掛けられていたこれは道具としてしか見れない。
「っつーわけで使ってみろ。基本起動手順なら、先天魔法をメダリオン握りながら使う感覚だ。」
ミスティはメダリオンを握り、先天魔法を使用する感覚になる。
――キィィィィィィンン!
「漏れてるぞー。」
「こうしてみると可愛いっすねぇ。ウサギの紋章も、ミスティさんも。」
「……いける。」
メダリオンが輝きだし、ミスティの体が光に包まれる。
最後に光を切り裂くように手を振ると、光は治まりミスティの姿が現れる。
「ほぉ。」
「わーお。なかなかにすごいっすね。」
純白の衣装。
フリルだけで作られたかのようなふわふわの衣装。
膝丈のスカートに肩を大きく出したデザインが少し背伸びしたい年頃の子供に人気が出そうなドレス。
白いタイツによって強調される足のライン。
綺麗に編み込まれた髪と白いリボン。
「……魔法少女か?って感じ。でもまぁ……可愛い。」
ミスティは自分の衣装を見て可愛いと判断した。
「うわぁ……選任騎士のあれってこんなに可愛い感じにできるんっすね。」
「俺達は黒いだけの軍服だからな。まぁ、選任騎士はすげえってわけだな。」
「見て。可愛くない?」
――キィィィィィィンン!
「うっ!?今はやめろ、結構クルものがある……!」
「滅茶苦茶可愛いっす!抱きしめてみてもいいっすか!?」
「アッハ!いいじゃんいいじゃん、隊長にも効くってことはちゃんと可愛いってことじゃん?」
「……さっさと開発魔法を使ってみろ!」
言われたミスティはなんとなく、自分の使える開発魔法がわかっていた。
だから、ごく自然の当たり前の事のように使って見せたのだった。
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