とある友人の話

@namls

part.1 不正したやつ

あいつは巫山戯たやつだ。


初めて見た時は真面目なやつだと思っていた。自分の周りでは数少ない課題をしっかりとこなすタイプで、実際、そこに関してはあいつは優秀なのは間違いない。勉強ができて、先生にも気に入られて、頼れる奴だとは思う。

なんだかんだ付き合ってくれるし、何となく寄り添って欲しい時にそばに居てくれたり、くだらないことに付き合ってくれたり、友人として本当に良い奴だと思っている。

こうやって実際に羅列してみてもあいつは良い奴であることは明らかだ。


だけど蓋を開けてみればどうだ?

あいつの原動力は全て「面白そうだから」で動いている。そうやって俺を助けてくれるのも、支えてくれるのも、付き合ってくれるのも、全部それはあいつが楽しいからだ。

あいつが興味無いことに関してあいつは本当に無頓着で、いつもは大したやつなのに興味を失った途端倫理観の欠けらも無い塵芥に成り下がる。人の悩みも不幸も苦しみも、あいつにとっては日常のスパイスでしかなく、あいつを楽しませる要因に過ぎないのだ。


本当に、巫山戯ている。


だが、有難いと。そう思っている。


よく良く考えれば自分の利益もないくせにやたら無闇に人に優しくするやつほど気持ち悪いものは無い。人の心の影には何かしらの意図が隠れているのなんて極めて自然な事だ。

寧ろそれが明らかなあいつは馬鹿で単純で扱いやすい。あいつが興味を引くような話題を提示すれば簡単に乗ってくれるのだがら、さしずめあいつは餌に群がる魚だろう。


さすがに言い過ぎただろうか?これをアイツが読んだら怒るだろうか?傷付くだろうか?

俺も人である以上思いやりの心は持っているため、ここまで言いたい放題でいると少し罪悪感というものが募ってくる。

ただ、あいつは人の心がないし、どんなに辛いことがあっても飯を食って寝れば治る単細胞だからこんなことを言っていても「馬鹿にしやがって。」と笑って許してくれると信じている。エッセイなんてものは誇張してなんぼだろう?


ここまで書いていれば俺の友人は大体誰の話をしているのか想像が着くだろう。なんなら冒頭の2、3文だけで察しが着く奴だって少なくないと思う。あいつは、そんなやつだ。

これだけ言っておいてなんだが、俺はあいつがかなり好きだ。俺に限った話ではなく、俺の周りのやつはだいたいあいつがかなり好きだと思う。ふざけたやつだ。あいつは、本当は心の中では俺たちなんてただの舞台装置だなんて思っていてもおかしくない。

だけど、その心の内は知らなくともあいつが俺達のことを大切にしてくれているのは本当だ。大切にしようと思っていなくとも、現に大切にされているという事実は存在しているのだから。


時々不安になる。俺はこいつを傷付けていないか?本当は迷惑なんじゃないか?不快な気分にさせていないか?

俺のいい所でもあり悪い所でもあるこの臆病さは、誰に対してもある程度発症するものではあるものの、あいつに対してはよりいっそう顕著に出ていた。

こうやって文字にすると恥ずかしいが、俺は大分あいつに助けられている。あいつの一見突き放したような身勝手な距離感は、俺にとっては心地の良い距離感だった。もしかしたらあれはあいつなりの他者への尊重なのかもしれない。

あいつが思っているより、あいつが俺に与えてくれたものは大きいのだ。恐らくあいつはそれに気付いていない。そんなつもりはなかったのだから当たり前と言ってしまえばそれまでだが。

まぁそんなこんなで俺はあいつに割と大きな恩義がある訳で。

あいつにそんなことを考える心があるかは知らないが、もしあいつが大学やほかの日常生活で窮屈さや苦痛、疲労を感じていた時、俺たちのいる場所が少しでもあいつを癒してやれたら良いなと、そう思っているのだ。


実際、あいつの腹の中は知らない。本当に、読めないやつなのだ。

ダルいつまらないだの言っている大学さえもあいつは最高に楽しんでしまっていて、本当の本当にメンブレや鬱なんて言葉とは天と地ほどかけはなれた場所にいるのかもしれない。

俺達の苦痛や苦悩も本当にただのエンタメとして消費してる腐れ外道なのかもしれない。逆に、もしかしたら心の内に大きな闇を抱えている可能性だってある。あんなことを言っておきながら実はだいぶ苦労していて、辛い思いをしているのに完全に俺たちに隠して気丈に振舞っているだけかもしれない。

俺達がさりげなくあいつに放っているだいぶ鋭めの口撃が、実はあいつを滅多刺しにして傷つけている可能性だって、無くはないのだから。


俺はお前が分からない。お前を知っていくほど、お前が分からないことが増えていく。俺が予測できるお前は、お前がみせているお前だけで、お前の本質は何も知らない。


言いたいことや伝えたいことがある訳でもない、眠れないまま朝になってしまって、どうしようもなく暇だから書いたくだらない文章だ。

明日になったら「クソデカポエム書いてるんだけどwww」とバカにされているかもしれないと思うと軽率に死にたくなってくる。


まぁ何が言いたいかと言うと、何が言いたい訳でもないのだ。書きたくなったから書いた、それだけだ。

突拍子もなく思い立って書いた文章だったけれど、思ったよりそれっぽくなっていて個人的には満足だ。ものを書く欲求を満たしたいがためのもので、結局俺もお前を俺のエゴのために使っているのだと考えると笑えてくる。


さて、いい感じに量も稼げたところでそろそろ〆たいのに、いい〆が思いつかず困っているのだが。


まぁ、その、なんだ。強いて言うことがあるとするのならば。


本当に何か頭を抱えるような時があったら、俺は真面目にお前の力になりたいと思っているよ、なんてことだったり。


まぁ、また飯でも行こうぜ、なんてことだったり。


今度俺の家来いよ、なんてことだったり。


ま、そんなところだ。

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