第11話初めての男友達 〜若干不安要素あり〜
「イク男すまなかった……俺はお前の事をひどく誤解していたらしい」
一部例外もあったが、恐ろしいVR天国(言っちゃった)から俺を救い出してくれたイク男に対して何を伝えていいか言葉に詰まってしまう。
「正彦くん。 今はまずもう一人の幼馴染を救いだすんだろ? それに、 別に俺は謝罪なんかききたいわけじゃないぜ。 友達だろ?」
そんな俺に対してイク男はとことん優しかった。
「イク男……ありがとう!」
握り交わされる右手での握手。(なんで最初左手だったんだろう?)
「イク男……もう一人の幼馴染ってのはどういう事だ? 学校でのみんなはリンカの事を忘れちまってるみたいだったがお前は思い出せたのか?」
「いや? 俺はリンカちゃんなんて子に心当たりなんかまるでないよ。 硝子ちゃんとイバラちゃんさ」
「硝子……イバラ……来ているのか?」
「二人とも正彦くんの事、すごく怒ってて簡単に寝取れそうな感じだったぜ? とにかくこの部屋を出れば状況が少しわかると思うよ」
「……わかった」
学校全体がリンカの事を忘れ、俺はリンカどころか二人の事すら忘れていたのに二人はリンカの事を忘れていないということか。
硝子もイバラも俺に怒っていた理由がなんとなくだがつかめてきた。
……二人は呼び方に怒っていたわけじゃないみたいだな。
幼馴染達への想いを逡巡してしまうが、イク男になんかとんでもない事を言われた気もする。
怖いので一旦スルーして促されるままに個室ビ◯オ室の外に出る。
「こ、これは!?」
ドラ◯エのダンジョンの様な光景だった。
見覚えのある校舎内だが、壁には、何本もの触手がうごめいているし、床面には黒い液体がたまり、床を這うように動く触手があちこちから現れては消えていく。
きしょい。
「ああ。 外から見ると普通なんだけど、内部に入ったらこんな感じさ。 俺たちも協力者がいなかったら入れなかったと思うぜ」
「協力者?」
「ふんっ。 自分を取り戻す事には成功したようだな」
「お、 お前は……ホンロン!」
状況を説明してくれてるイク男に呼応するかの様に現れた長身執事服のイケメン。
「貴様! まだ俺にVRを見せようってのか!?(どきどき)」
「正彦くん。 期待してるとこ悪いけど、 ホンロンさんが俺やイバラちゃん、硝子ちゃん達をここに連れてきてくれたんだ」
「……どういう事だ? なぜそんな事をする? それに硝子たちはこんな場所にいて大丈夫なのか?」
「ふんっ。 おばば様にもバレていないオレのセーフスペースにいるので問題ない。 それより
イク男の言う通り、期待していた俺をよそにホンロンが自らの背景を語り始める。
「孤児だったオレはおばば様に育てられた。 その事については感謝の念どころか劣情を催している程だ。 だが……」
相変わらず自らの性癖を話す事にまったく恥じらいのない男だった。
普通にドン引いている俺をよそにホンロンは続ける。
「
「劣情……メスガキ妖狐?(なんだそのパワーワードは?)」
ホンロンは語る。
このまま満月を迎えるとリンカの下腹部に埋め込まれた淫紋(見たい)が開放されると俺や幼馴染の事を忘れて劣情に生きる妖狐となり果てると。
そしてその妖狐リンカの劣情、つまり処◯を求めて今宵は一族の多くの妖怪が集まっていると。
妖怪が跋扈しているために校舎内は妖気に満たされておぞましい触手広がる光景になっていると。
「急いだ方がいい。 もう間も無く満月が完全に昇る。 そうなればリンカ様は一族の三下共の手籠めにされるだろう」
「話があべこべだ! リンカの婿になるのは俺じゃないのか!?(なる気はないが)」
「セ◯レは多い方が劣情メスガキ妖狐にとっては法力が溜まるのだろう。 しかも強者が三下に籠絡されて「くっ……こんな奴らにこのアタシが……」という
こいつは性的な話をする時まったく恥じらいはないのか?
伝統芸だが、正直俺もそのシチュは好きだ。
仏頂面でオープンに下ネタを話してくるホンロンに思わず親近感を覚えてしまう。(正彦は下ネタが好き)
「ホンロン。 俺はお前を100%信じたわけじゃないが、(割とひどい目にあったし) リンカを助けたい。 その一点についてはお前と同じだと思いたい」
「ふんっ。 長話はここまでだ。 手は貸してやる。 ついてこい」
そう言って歩き出すホンロンを本当に信用していいか決めあぐねていたが「これでおはば様に足蹴にされる罰、いやご褒美をもらえる」という呟きが聞こえたので100%信頼してイク男とついていくことに決めた。
ーー触手うごめく校舎内、歩きながらーー
「ホンロン。 リンカはどこにいるんだ?」
「十中八九おばば様と一緒だ。 そして最も月の影響が当たる場所……つまり屋上だ」
「なるほど。 すぐにリンカを救いに行こう」
「ふんっ。 元よりそのつもりだと言っただろう。 だがーー」
廊下を歩く俺たちに立ちふさがる集団にホンロンがアゴをしゃくってみせる。
「さすがおばば様だ。 貴様が己を取り戻す確信は得ていなかっただろうが用心深く校内に刺客を放っていたようだ」
恍惚とロリッ娘への敬意を表す様にドン引きだが、事態を誰よりも理解してそうなのでその事については触れないでおいた。
俺たちの前に現れた集団。
それは俺が一度はその劣情に敗北を喫した副会長が擁するチアガール軍団だった。
「角田くんだぁ。 すごいねぇ理事長の責め苦に屈さないどころか、 立ち向かっていこうとするなんてぇ」」
「……副会長。 俺はリンカを救いに行かなきゃならない。 そこをどいてくれませんか?」
「うーん。 私は楽しければ正直どっちでもいいんだけどねぇ。 ただこの子達は単位がかかってるらしいし角田くんは……いじめた方が楽しそう」
「……話にならないな。 アンタがどうしようと勝手だが、俺は幼馴染を必ず助ける!」
チアガール姿で挑発的な笑みを浮かべる副会長。(ちなみに正彦は記憶が戻ると同時に
しかし、俺は身体能力もそこまで高くない上に女性に手を上げるのは憚られる。
どう潜り抜けたもんかと逡巡していると。
「それじゃあ……生徒会副会長並びにチアガール部部長
口上を述べて一気に俺へ駆け寄ってきたかと思うと、チアガールのスカート姿なのに俺の顔面にハイキックをかましてくる。
女性側からの暴力は画面的にもセーフの部類だろう。
ましてや俺は劣情は催さないが一瞬見えてしまった純白に目を奪われている。
バキッ!
大きな衝撃音がなったが、ハイキックは俺の顔面に当たらなかった事を遅れて理解する。
イク男がそのぶっとい腕でハイキックを止めてくれたからだ。
その間もチアガール達はポンポンを振りながら副会長を応援し始めている。
「ここは俺に任せて先に行きな。 幼馴染の女の子以外には余裕でラリアットからのストンピング決めそうな正彦くんとチアちゃん達は時代的に相性が悪い」
イク男には俺が結構やばい奴にみえてるらしい。(正彦はできるかぎり非暴力主義)
そもそも女の子をラリアットしてよかった前時代なんてねぇよ。
「しかしそれならお前はどうやって……いや! すまん! ホンロン行くぞ!」
俺には理解の範疇を超えた絵面を想像して、その確信を得るのも嫌なので俺とホンロンは駆け出してチアガール達の間を潜り抜ける。
背後から聞こえる副会長とイク男両方に応援エールを送っているチアガール達。
「頑張れ頑張れちえちゃん! フレフレ!イク男! わー!」
だからその後のイク男と副会長の会話なんざ聞こえなかった
「へぇ。 じゃあ君が私を楽しませてくれるってわけぇ? 大丈夫ボーヤぁ? ちゃんとできるぅ?」
「けっ。 タイプじゃねぇが正彦くんのためだ。 どこまでその余裕が持つか楽しみだぜ」
……聞こえなかった。(イバラと本当に何もないんだよな?)
ーーいっぽう、その頃屋上でのリンカーー
「ふむ。
ババアが何か言ってるけど、アタシはもうその言葉を聞き取れないほど身体が発情しきっている。
今のアタシは股の間からは尻尾が、頭の上のキツネの耳が隠せない。
「はぁ……はぁ……ぅ……」
クレーン車のアームの様な触手から吊るされて身体を固定されて身動きは相変わらず取れない。
劣情を解放する術を持たずに、何時間も放置されてアタシの精神も限界を迎えようとしている。
「うぉーー! リンカ様ーーー!リンカ様ーーー!」(エコー)
屋上にひしめき合う三下の異形達。(小鬼とかゴブリンとか)
満月が昇り切ってアタシが完全に妖狐として覚醒するのを今かと待ち構えている。
「ぅ……ぁ……はあ……」
「間もなく淫紋は完成する。 だが燐火よ。 どうやら正彦はわっちの術式に抗い、
「!……ぅ……ぅぁ……マサ……」
「くふふ。 想像以上に事はドラマティックに運んでおるようじゃ。 ならばもっと趣向は凝らさねばなるまい!」
ババアが言った内容全ては聞き取れない。
それでもマサが私を助けに来てくれると喜んだのも束の間だった。
アタシを拘束するだけだった触手がうごめき始めてアタシの全身を刺激し始める。
全身が発情し切っているアタシにはその押し寄せる快感に身をよじって抵抗してみるけど。
「ぅああ?!」
いとも
「さて、淫紋の完成が先か、それとも……次回へ続くというやつじゃの」
落語好きなババアの適当な後引き口上。
(マサ……アタシ……もぅ……)
果たして正彦は間に合うのか!(後引き口上)
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