追憶の中の君と僕

蒼(あおい)

第1話

精一杯背伸びをした。



君に追いつきたくて、


君に振り向いて欲しくて、


僕の気持ちに、気づいて欲しくて…。





身長は、いつしか僕が君を見下ろすようになっていて、


僕を見上げる君が、不服そうに頬を膨らませる姿は、


今でも可愛いなと思っている。





でも…身体は大きくなったけど、


僕自身は、あの頃と何ひとつ変わらない…。





『心』が…小さいままなんだ…。





時間が過ぎれば過ぎる程、その溝がどんどん深まっていく…。


伝えたい言葉さえ、飲み込んでしまうようになってしまった。


君と一緒に居れば居るほど、僕は臆病になっていく…。





いったい、僕は何処で、何を忘れて来たのだろう…。





いったい、何を落として来てしまったのだろう…。





気がつくと、僕は涙で顔を濡らしていた。





あんなに背伸びをして頑張ったのに…。


僕の手は、もう、君には届かない…。


君の幸せを見ているだけの存在になってしまった。





結局、追いつけなかった。





今は君の中に、「僕」という存在が思い出として残ってくれているのなら…



もう、それでいいや…。



やり直せるなら、やり直したい。


けど、きっと…同じ結末になってしまうだろう。





何度も辛い思いをするくらいなら…


僕は、この気持ちに『鍵』をかける。





誰かが君を笑顔にしてくれるのなら、


それでいいんだ…。





僕も、君の前で笑えるように、頑張るから…。





あの頃の君に、「好き」って言えればよかったけど…


もう、戻れない。





『時間』は、止まってくれない…。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

追憶の中の君と僕 蒼(あおい) @aoi_voice

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ