臆病者の距離感
蒼(あおい)
第1話
甘えられない
甘え方が分からない…と言った方が正しいのかもしれない。
何をする事が、甘えになるのか…
なんて言えば、甘えている事になるのか…
そんな事すら分からない僕に、誰かに甘える事なんて、出来るのだろうか…
甘えられない僕からすれば、
『迷惑にならないか?』
『甘えを通り越して、依存になってしまわないだろうか?』
という、マイナスな事ばかり考えてしまっている。
考えすぎだと言われてしまえば、それまでなんだけど…
それが、僕なんだよ。分かってるだろう?
君からすれば、
『頼っていいんだよ』
『甘えていいよ』
『ワガママ言っていいんだよ』
って、僕にはもったいないくらいの優しい言葉を届けてくれる。
そう言ってくれるのは嬉しいし、僕は本当に恵まれているなぁと感じている。
それだけは、分かって欲しいし
気付いてくれたらいいな…
なんて、恥ずかしがり屋だからそんな事を思ってしまう。
『言葉で言わないと分からないよ』
って言われちゃうと…ゴメンってなっちゃうんだけどさ。
こういう性格なんだから。…僕がこういう奴だって、君は知っているだろう?
でもさ…
優しい言葉が入った箱を開けるのが怖い…とまで感じてしまっている僕もいるんだ。
臆病だからさ。優しさしかないのは、分かってはいるんだけど…
それでも……
怖いんだ。
その優しさに触れる事が。
箱を抱えたまま、どうにも出来ない僕自身がもどかしくて
気付いたら泣いていた……なんて事も、何度もあった。
ずっと開けられないまま、ただただ、外枠を眺めているだけ。
僕に向けられている優しさに、素直になれなくて
上手い返し方が分からなくて
いつかに脱ぎ捨てたはずの自分の殻を、被ろうとする……
相当、不器用で、面倒くさい奴なんだ…僕は……
溜め込んで、溜め込んで…
吐き出す場所さえも、自分から塞いで、溢れさせている…
良くない事だって、分かってはいるけど
深い所まで沁みついてしまった癖は、なかなか洗い流せない。
それでも……
こんな、どうしようもない僕でも
君に、背中を預けられるまで、待っていてくれる?
これが、今言える精一杯の僕のワガママなんだ。
向かい合って、僕が君の温もりを感じる事ができたら
それが、ちょっとだけ成長した、僕なりの甘え方なんだ。
いつかの箱を開けられるまで…
気長に、僕と、これからも付き合ってくれたら…嬉しいな。
今、僕と、君との距離は……
何センチだろうね…?
臆病者の距離感 蒼(あおい) @aoi_voice
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